790GX-G65には、小型サイズのヒートシンクが取り付けられており、チップセットの冷却はファンレスで行われる。電源回路部に取り付けられたヒートシンクには「140W CPU READY」と記載されている。TDP 145ワットというと、AM2版のPhenom X4 9950があるが、AM3のPhenom IIで145ワットのモデルはいまのところない。将来、Phenom X4 9950クラスのCPUがPhenom IIで登場しても対応できるモデルであるということをアピールしていると考えればいいだろう。
電源回路といえば、790GX-G65にはMSIが力を入れている「DrMOS」は搭載されていない。高効率の電源回路を実現して発熱を抑えるDrMOSであるが、790GX-G65はDrMOSがなくても発熱は抑えられている。動画エンコードなど、重い負荷をかけた状態で数時間運用しても、電源回路のヒートシンクはほんのり暖かい程度で、ノースブリッジも手で触れる程度の熱さにしかならない。全体的に発熱がとても少ないマザーボードという印象を受けた。
登場した当時は「微妙な存在」といわれていたPhenom IIだが、ある時期、Phenom II X3 720 Black Editionがやたらと売れた。“ある魔法をかけることで、トリプルコアがクアッドコアに変身する”というのがその理由だったが、その魔法というのが「AMD 790GXとSB750チップセットのマザーボードで、BIOS設定の“Advanced Clock Caliblation”を“Auto”に設定する」だけというとてつもなく簡単なものだ。790GX-G65は“AMD 790GXとSB750チップセットのマザーボード”の条件にズバリ当てはまる。
そこで、テスト用のPhenom II X3 720 Black Editionで試してみたが、BIOS設定を変更して再起動するも、やっぱりトリプルコアでしか動作しない。やはり都市伝説だったのか? 実は、クアッドコア化に関して、Phenom II X3 720 Black Editionなら何でもいいというわけではなく、ロット番号が「0904」でなければならないということらしい。テストで使用したCPUのロット番号は「0849」であり、問題のロットよりも7週ほど早く製造されたもののようだ。
クアッド化はできなかったものの、790GX-G65には、豊富なオーバークロック設定が用意されている。BIOS設定には、おなじみの「Cell MENU」が用意されており、FSBが1MHz単位で設定できるだけでなく、メモリクロック比率の変更やCPUとノースブリッジのクロック比率、ノースブリッジに内蔵されたGPUの動作クロックなどが調整可能で、各種電圧の設定も自由に変更できる。また、マザーボードには、FSBを10%/15%/20%アップできるハードウェアの「EZ OC Switch」が搭載され、手軽にオーバークロックを設定できる。
Windows用のアプリケーションとして、AMDが提供しているチューニングユーティリティ「AMD OverDrive」も付属する。AMD OverDriveには、自動オーバークロックモードがあり、システムに負荷をかけながら少しずつFSBを上昇させることで、オーバークロックの限界値を自動で探ってくれるというものだ。自動であるが、かなり高いクロックまでテストを行い、(設定されるクロックは“全手動”と比べると低いものの)ある程度の目安には十分になり得るものだ。ただし、かなり慎重にチェックを行っているようで、テストには数時間かかる。そのため、“遊び感覚で気軽に”CPUの限界値を探るには適さない。
今回使用したPhenom II X3 720 Black Editionでは、FSB 220MHz、動作クロック3080MHzまで自動でクロックアップが可能だった。
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