“Eee PCの上を行く”Atom搭載スリムノート――ASUS「S121」とは何者か?(前編)12.1型WXGA液晶×革張りボディ(1/3 ページ)

» 2009年05月13日 12時00分 公開

Eee PC Sシリーズ最高峰、だけどEee PCじゃない「S121」

ASUSのAtom搭載スリムノート「S121」。発売は5月中旬以降、価格は8万9800円

 国内外の低価格ミニノートPC市場で高いシェアを誇るASUSTeK Computer(ASUS)のEee PCブランド。その数ある製品ラインアップの中でも上位機種に相当するのがスリムボディを採用した「Eee PC S101」や「Eee PC S101H」といった通称「Sシリーズ」だ。特に2008年11月に国内で発売されたS101は、当時市場に出回っていたIntel Atom搭載のNetbookとしては非常に薄型軽量、かつ洗練されたデザインに仕上がっており、ASUSがNetbook市場をけん引する存在であることを強く印象づけることに成功したといえる。

 ASUSは2009年4月24日、このSシリーズの新しい最上位機種となる「S121」の国内投入を明らかにした。S121はSシリーズならではのスタイリッシュなスリムボディを継承しながら、これまでのEee PCを上回る大画面・高解像度の12.1型WXGA液晶ディスプレイや、インスタントモードをはじめとする多くの付加機能を盛り込んでいる。また、CPUにNetbook向けのAtom N系ではなく、MID/UMPC向けのAtom Z系を選択したこともあり、既存のEee PCとは多くの面が違う。そのため、S121はSシリーズ最上位でありながらEee PCブランドには属しておらず、製品名は単にS121と表記される。

 S121の国内販売は当初5月2日からとアナウンスされていたが、生産の遅延を理由に5月中旬以降に延期された。今回は発売に先駆けてS121の試作機を入手したので、使い勝手やパフォーマンスをチェックしていきたい。


本革・クリスタル・メタルを組み合わせた新デザインのボディ

 まずはS121の大きな特徴であるボディデザインだが、ASUSが「上質を極めたスタイリッシュノート」とまでいうだけあって、Atom搭載のノートPCとしては手が込んでおり、きらびやかな外装で知られるS101よりもさらにコストがかけられている。

 UVコーティングを施した光沢感あふれる天板や、多数の工程を経たメッキ加工のフレーム、液晶ヒンジ部の両端に埋め込まれたスワロフスキー製クリスタルガラスなど、Sシリーズの基本的なデザインを踏襲したうえで、パームレストに本革を貼り付け、液晶ヒンジ部の両端やキーボードの上部に細かな装飾を加えることにより、高級感をさらに向上させている。

光の反射によって、表情が変わるUVコーティングの天板(写真=左)。液晶ヒンジ部の端に埋め込まれたクリスタルガラスはS101と同じだが、金属のヒンジ部自体が細かく彫り込まれている(写真=中央)。キーボードの上部に配された細かな模様と、白色LEDが光るクリアパーツの電源ボタンも高級感を演出している。パームレストは本革とヘアライン加工の金属パーツを組み合わせたデザインで、見た目も手触りもよい(写真=右)

 金属や革、クリアパーツなど、異なる質感の素材を複雑に組み合わせているが、ブラウンをベースとした落ち着いた色調で統一されており、全体的なデザインはうまくまとまっている印象だ。デザインの好みは人それぞれだが、個人的にはS101よりも、こちらのほうが魅力的に思える。無論、ボディは見かけ倒しではなく、剛性感も十分あり、片手で本体を握って持ち上げても筐体がゆがむようなことはない。

 ボディのカラーはブラウンの1色のみで、S101に用意されていたシャンパンやグラファイトは選べない。ツヤのあるブラウンの天板や液晶ディスプレイ周辺部は指紋がかなり目立ちやすいので、付属のクリーニングクロスを使って清潔な状態を常に保っておきたいところだ。一方、本革のパームレストは手触りがよく、指紋の付着なども気にならない。

付属のキャリングケースにも部分的に皮革素材が使われている。ちなみに、化粧箱もS101と同様に、黒で統一されている

最薄部23ミリのスリムボディ、約8.2時間のバッテリー駆動

 液晶を閉じた状態のボディは、S101を一回り大きくしたような外観だ。本体サイズは297(幅)×210(奥行き)×23〜26(高さ)ミリと薄型だが、重量は約1.45キロとなっており、12.1型ワイド液晶ディスプレイとHDDを採用する関係で、重さはそれなりにある。

 10.2型ワイド液晶搭載のSSDモデルであるS101は、本体サイズが264(幅)×180.5(奥行き)×18〜25(高さ)ミリ、重量が約1.06キロなので、これと比べると持ち運びのしやすさは少々劣る。10.2型ワイド液晶搭載のHDDモデルであるS101Hは、本体サイズが264(幅)×181(奥行き)×25〜27.5(高さ)ミリ、重量が約1.1キロで、やはり重量では不利になるが、薄さで勝っている点は注目したい。ただし、これはS101HのHDDが2.5インチ/9.5ミリ厚のドライブなのに対して、S121のHDDが1.8インチ/8ミリ厚のドライブであることも関係している。

パームレストの裏側に薄型のリチウムポリマーバッテリーを装着している。ACアダプタはコンパクトだ

 S121が携帯性の面でS101やS101Hより勝っているのはバッテリー駆動時間だ。画面サイズが大きいものの、Atom N系より消費電力が小さくて済むAtom Z系の採用と、大きめのボディサイズを生かした大容量のリチウムポリマーバッテリー(7.3ボルト 7200mAh)のおかげで、公称のバッテリー駆動時間は約8.2時間と長い。

 S101の約6時間、S101Hの約4時間というバッテリー駆動時間に比べて、かなり余裕があるので、外部電源を確保できない外出先で使うシーンが多いならば、S121のスタミナは重宝するだろう。

 独自の省電力ユーティリティ「ASUS Power4 Gear」も搭載しており、キーボード左上のボタンを押す度にSuper Performance、High Performance、Game、DVD movie、Battery savingなどの動作モードが切り替えられる。一部の国産モバイルノートPCに見られる省電力ユーティリティほど細かな電力制御はできないが、各モードは、非動作時におけるスタンバイやスクリーンセーバーへの移行、ディスプレイオフ、HDDオフといった基本的な省電力動作のカスタマイズが可能だ。

 ACアダプタはS101やS101Hと共通だ。突起部を含めない実測でのサイズが35(幅)×85(奥行き)×26(高さ)ミリ、電源ケーブル込みの重量が約215グラムと小型軽量なので、本体といっしょに常時携帯しても邪魔になりにくい。

キーボード左上のボタンを押す度に、「ASUS Power4 Gear」の動作モードが切り替わる(写真=左)。Power4 Gearの各モードはタスクトレイから変更することもでき、ユーザーによる設定のカスタマイズにも対応する(写真=中央、右)。試作機のため、画面が英語表記になっているが、製品版では日本語表記になるという

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