ASUSTeK Computer(ASUS)の「S121」は、Atom搭載スリムノートPCの新モデル。ASUSのEee PCブランドの中でも洗練されたスリムボディを用いた「Sシリーズ」(Eee PC S101/S101H)のハイエンドに位置する。
CPUはIntel Atomだが、Netbook向けのAtom N系ではなく、MID/UMPC向けのAtom Z系(もっとも昨今はノートPCへの採用が多い)を採用し、通常のNetbookより一回り大きな1280×800ドット表示の12.1型ワイド液晶ディスプレイや、インスタントモードなどの付加機能も装備するなど、既存のEee PCとは違った特徴を持つ。そのため、S121はSシリーズ最上位機でありながら、Eee PCブランドには含まれていない。
先に掲載したレビューの前編(12.1型WXGA液晶×革張りボディ:“Eee PCの上を行く”Atom搭載スリムノート――ASUS「S121」とは何者か?/前編)では、ASUSが特に注力したというボディのデザインをはじめ、携帯性、基本スペック、拡張性、ワイド液晶ディスプレイの表示品質、キーボードとタッチパッドの使い勝手などを検証した。
今回の後編では、インスタントモードやボディの内部構造をチェックし、システムのパフォーマンス、Windowsの動作レスポンス、バッテリー駆動時間、ボディの発熱および騒音といった各種テストも実施する。
12.1型WXGA液晶×革張りボディ:“Eee PCの上を行く”Atom搭載スリムノート――ASUS「S121」とは何者か?(前編)
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SSDかHDDか、それが問題だ:今度のEee PCはHDD搭載でも美しい――「S101H」と「1002HA」を使い比べる(前編)
性能、温度、騒音、スタミナは?:“華麗なるミニノート”――ASUS「Eee PC S101」の真価を問う(後編)
分解して内部に潜入:“華麗なるミニノート”――ASUS「Eee PC S101」の真価を問う(中編)
新旧モデル対決も:“華麗なるミニノート”――ASUS「Eee PC S101」の真価を問う(前編)
S121はプリインストールOSのWindows XP Home Edition(SP3)とは別に、高速で起動するインスタントモード「Express Gate」を搭載している。米DeviceVMの組み込みLinux環境「Splashtop」をベースとした機能で、電源オフ時もしくはWindows XPが休止状態のときにキーボード左上のボタン(Windows XP起動時はPower4 Gearの動作モード切り替えに使用)を押すと、7〜8秒程度で起動する仕組みだ。
Express Gateを起動すると、Web(Webブラウザ)、Music Player、Online Game、Photo Manager、Chat、Skypeのメニューが表示される。WebブラウザはFirefoxベースのSplashtop Browserを採用するほか、音楽再生用のMusic Playerや写真再生用のPhoto Managerでは、Windows上で作成したフォルダやファイルにアクセスでき、S121に接続したメモリカードやUSBストレージの内部にもアクセス可能だ。
ネットワーク接続はS121内蔵の有線LANと無線LANを利用可能で、ディスプレイの輝度や省電力の設定もできるなど、簡易的に使うインスタントモードとしては十分な機能を備えている。終了も即座に行えるため、外出先でちょっとした時間にWebで調べ物をしたいが、Windowsの起動は時間がかかりすぎる、と思うようなシーンで役立つだろう。
製品のウリとなる厚さ23〜26ミリのスリムボディは、どのような構造になっているのか、分解して内部を確認してみた。
製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは編集部が使用した製品のものであり、すべての個体にあてはまるものではありません。
メモリスロットへのアクセスは簡単だ。底面にある2本のネジで固定されたカバーを開くと、1基のSO-DIMMスロットが現れる。標準で1Gバイトのメモリモジュールを装備しており、メモリスロットの空きはない。メーカーのサポート外になるが、手元にあった数枚の2GバイトDDR2メモリ(PC2-5300)と換装したところ、2Gバイトと正しく認識された。
160GバイトのHDDは1.8インチ/8ミリ厚のSerial ATAドライブだが、チップセットのIntel System Controller Hub(SCH) US15WはSerial ATAをサポートしないため、Parallel ATAに変換されてつながれている。こちらにアクセスするには、本体の分解が必須だ。
まずは底面のリチウムポリマーバッテリーを外し、キーボード上部の4つのツメと粘着テープで固定されたキーボードユニットを取り出す。次に底面とキーボードの下に見えるネジをすべて取り出し、ツメでかみ合わされた液晶ヒンジ部のカバーとトップカバーを外すと、HDDがようやく露出する。分解時はキーボードやタッチパッドなどを接続する細かなケーブル類も外す必要があるので、注意が必要だ。
さらにそこから、基板を固定するネジや各種ケーブル類を外すことで、マザーボードが取り出せる。CPUのAtom Z520(1.33GHz)と1チップ構成のIntel SCH US15Wチップセットは実装面積が小さくて済むため、Atom N系のCPUとIntel 945GSE Expressチップセットを組み合わせた一般的なNetbookと比較して、マザーボードのサイズは小さく、突起部を除いて約170×93ミリしかない。
Atom Z系のCPUとIntel SCH US15Wチップセットは発熱量が小さいため、デルの「Inspiron Mini 12」や「Inspiron Mini 10」、ソニーの「VAIO type P」といった製品ではファンレス設計を採用しているが、S121は冷却性能を優先して、ファンを搭載している。周囲の温度にかかわらず、安定した冷却が行える半面、高負荷時にはファンの動作音がするので、この辺りは好みが分かれるだろう(発熱と騒音の検証は後述)。
このように、S121の外観はEee PC S101やS101Hに似ているが、内部の設計は大きく異なる。ボディサイズに余裕があるだけに、S101やS101Hと同じインタフェース配置ではなく、カードスロットを側面に配置するなどの工夫がほしかったところだ。
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