現在モバイルノートPCは、Web閲覧をメイン用途に据えた低価格なNetbookと、MacBook AirやThinkPad X300/X301、Adamoに代表される、高性能でデザイン性に優れた高価なモデルに2極化する傾向にある。COMPUTEX TAIPEI 2007で初代Eee PCが話題を呼び、続く2008年にAtomを採用したNetbookが台頭したことで、ノートPC市場の情勢は瞬く間に一変してしまった。その要因の1つが圧倒的な価格競争力にあることは間違いない。
ただし、Netbookは確かに安価ではあるものの、システムに高い負荷を要求する幅広いユーザーニーズを満たすには(Atomは)非力すぎる。インターネットが利用できれば十分と考える多くのユーザーがいる一方で、より高い性能を持つモバイルノートPCを求めるユーザーももちろん存在し、後者にとってNetbookの性能は満足できるものではなかった。問題は、2極化するモバイルノートPCカテゴリにおいて極端に差がつきすぎてしまった価格だ。
エイサーの「Aspire Timeline」は、「市場に革命を起こす」(同社)べく、モバイルノートPCにおける価格帯の溝を埋めるために投入された製品である。ここで紹介する「AS3810T」は、基本システムに超低電圧版のCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)とIntel GS45 Expressの組み合わせを採用し、1366×768ドット表示に対応する13.3型ワイドの液晶ディスプレイを備え、最薄部23.4ミリの薄型ボディと標準で約8時間の長時間バッテリー駆動性能を実現したモデル――これだけ聞くと“プレミアム”なモバイルノートPCを連想させるが、実売価格は8万9800円まで抑えられている。ほぼ同じ基本システムを採用するデルの「Adamo(DESIRE)」が27万6000円であることを考えると、これは驚異的な価格設定だ(DESIREは128GバイトのSSDを搭載しているが)。
ここでは簡単なベンチマークテストを実施し、比較対象として前述のAdamo(DESIRE)とMacBook Air(MB940J/A)、VAIO type P(VGN-P70H)を取り上げた。また、PCMark05の結果には、AMDのYukonプラットフォームを採用した6万円前後の「HP Pavilion Notebook PC dv2」も加えている。なお、MacBook AirにはWindows Vista Home Premium(SP1)を導入している。
今回比較したノートPCの主要スペック | ||||
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モデル名 | Aspire Timeline(AS3810T) | Adamo(DESIRE) | MacBook Air(MB940J/A) | VAIO type P(VGN-P70H/R) |
CPU | Core 2 Duo SU9400(1.4GHz) | Core 2 Duo SU9400(1.4GHz) | Core 2 Duo SL9400(1.86GHz) | Atom Z520(1.33GHz) |
メモリ | 2Gバイト(DDR3) | 4Gバイト(DDR3) | 2Gバイト(DDR3) | 2Gバイト(DDR2) |
チップセット | Intel GS45 Express | Intel GS45 Express | GeForce 9400M | ISCH US15W |
液晶ディスプレイ | 13.3型ワイド光沢 | 13.4型ワイド光沢 | 13.3型ワイド光沢 | 8型ワイド光沢 |
画面解像度 | 1366×768ドット | 1366×768ドット | 1280×800ドット | 1600×768ドット |
ストレージ | 250GバイトHDD | 128GバイトSSD | 128GバイトSSD | 60GバイトHDD |
有線LAN | ギガビット対応 | ギガビット対応 | − | −(専用アダプタ経由) |
無線LAN | IEEE802.11b/g/n(nはドラフト準拠) | IEEE802.11a/b/g/n(nはドラフト準拠) | IEEE802.11a/b/g/n(nはドラフト準拠) | IEEE802.11b/g/n(nはドラフト準拠) |
Bluetooth | Bluetooth 2.1+EDR | Bluetooth 2.1+EDR | Bluetooth 2.1+EDR | Bluetooth 2.1+EDR |
USB | USB 2.0×3 | USB 2.0×3(うち1基はeSATA兼用) | USB 2.0×1 | USB 2.0×2 |
外部出力 | HDMI、アナログRGB | DisplayPort×1(DVI変換アダプタ付き) | Mini DisplayPort×1 | −(専用アダプタ経由) |
Webカメラ | ○ | ○ | ○ | ○ |
バッテリー駆動時間 | 約8時間 | 約5時間 | 約4.5時間 | 約4.5時間 |
ボディサイズ | 322(幅)×228(奥行き)×23.4〜28.9(高さ)ミリ | 331(幅)×242(奥行き)×16.4(厚さ)ミリ | 325(幅)×227(奥行き)×4〜19.4(厚さ)ミリ | 245(幅)×120(奥行き)×19.8(高さ)ミリ |
重量 | 約1.6キロ | 約1.81キロ | 約1.36キロ | 約0.634キロ |
OS | Windows Vista Home Premium(SP1) | 64ビット版Windows Vista Home Premium(SP1) | Mac OS X 10.5 | Windows Vista Home Basic(SP1) |
価格 | 8万9800円前後 | 27万6000円 | 29万8800円 | 10万円前後 |
それではテスト結果を見ていこう。まずWindows エクスペリエンス インデックスは、CPUが4.6とモバイルPCとしては十分に高いスコアを記録した。Atom Z520を採用するVAIO type PはWindows Vistaの動作をやや重く感じたが、AS3810Tなら快適に利用できそうだ。また、メモリスコアも4.8とまずまずで、2.5インチドライブを採用するHDDは最も高い5.4をマークした。
PCMark05の結果を見ると、SSDを採用するAdamoとMacBook Airに比べてストレージ性能の差が目立つものの、それ以外はほとんど遜色なく、CPUは3624と最も高いスコアを記録した。また、VAIO type Pと比較するとすべてにおいて圧倒的に上回る値をマークしており、比較機種との価格差を考えれば非常に満足できる結果と言える。Graphicsスコアは高いとは言えないものの、グラフィックス機能がチップセット内蔵のGMA 4500MHDなので仕方のないところだろう。もっとも、同社は今後外付けGPUのオプションとしてATI Mobiloty Radeon HD 4330などを2009年7月以降に提供する予定としており、グラフィックス性能を求めるユーザーはこちらを検討するのも手だ。
以上、駆け足で簡単なベンチマークテストを実施してみたが、実売8万9800円という価格でも、モバイルノートPCとして十分な性能を備えていることが分かった。これまでNetbookのパフォーマンスに不満を持っていたユーザーにとって、Aspire Timelineが魅力的な選択肢になることは間違いない。なお、そのほかのベンチマークテストや実際の使用感、外観などの詳細記事は追って掲載する予定だ。(→詳細レビュー:Netbookを完全に超えた? 「Aspire Timeline」を徹底チェック)
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