軽く薄く、そして、歴代最高のキーボードを──ThinkPad T400sで実現した究極のトレードオフ(1/2 ページ)

» 2009年06月25日 00時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

基板レイアウトの最適化で実現した薄さ

ThinkPadシリーズのポジショニングマップ。ThinkPad T400sは14.1型クラスのプレミアムモデルとなる

 レノボ・ジャパンは、6月24日に14.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載するThinkPad T400シリーズの新モデルとして「ThinkPad T400s」を発表した。製品概要は、すでに掲載されている「レノボ、薄型筐体採用の14型ワイド液晶ノート「ThinkPad T400s」」を参照していただき、こちらでは、当日行われた発表会で語られた開発者のメッセージを紹介したい。発表会では、レノボ・ジャパン 大和事業所 研究・開発 製品開発統括担当の磯田肇氏がThinkPad T400sの技術的な解説を行った。

 ThinkPad T400sで、まず求められたのは「より薄く、軽い」ボディだ。ThinkPad T400s本体の厚さは最薄部で21.1ミリ、最厚部でも25.9ミリで、ThinkPad T400より25%減ったことになる。ちなみに、ThinkPad T400の本体サイズは335.5(幅)×263(奥行き)×27.6〜31.9(厚さ)ミリで、ThinkPad T400sの本体サイズは337(幅)×241(奥行き)×21.1〜25.9(厚さ)ミリ。同様に、重さもThinkPad T400の約2.4キロからThinkPad T400sの約1.79キロと約20%減った。

 この薄型化と軽量化を実現したブレークスルーとして、磯田氏はインテルが提供するSFF(Small Form Factor)対応プラットフォームの採用と、HDI(High Density Interconnect)基板のアップデートを挙げている。どちらも薄型軽量の本体を採用して注目されたThinkPad X300シリーズですでに採用されているが、ThinkPad T400sの開発では、実装面積と重量配分を見直すことで基板レイアウトの最適化を進めたという。

 磯田氏は、その具体的な作業として、レイアウトシミュレーションを徹底して活用し、太い配線を用意しても流れる電流量が少ない部分では配線を細くするなどの“パターンの最適化”を行ったことを明らかにした。さらに、ノイズに強いストリップ・ライン構造を採用して高密度配線を実現することで、実装部品点数はThinkPad T400とほぼ同じながら、実装面積では38%も減らすことができたと説明した。

ThinkPad T400シリーズから25%薄くなって20%軽くなったThinkPad T400s(写真=左)。軽量薄型を実現するために、ThinkPad X300シリーズと同じようにSFF対応プラットフォームとHDI基板を採用したが(写真=中央)、シミュレーションを使ったレイアウトの最適化を施した第2世代のHDI基板によって、ThinkPad T400とほぼ同じ数の部品を38%面積を減らした基板に実装できるようにした(写真=右)

X300より重要になった堅牢性能

 ThinkPad T400sでは、従来のThinkPad T400シリーズと同じ14.1型ワイドの液晶ディスプレイを搭載したまま、ThinkPad X300シリーズのような薄型ボディを目指している。そのため、堅牢性能の確保に苦労したと磯田氏は語っている。ThinkPad T400sでは、天面パネルにThinkPad X300シリーズで導入されたハイブリッドCFRP(炭素繊維強化プラスチックとガラス繊維強化プラスチックの併用パネル)を採用したほか、大画面ディスプレイを搭載するThinkPad T400sでディスプレイ表面を保護するために、タッチパッドとパームレストの段差をなくし、ディスプレイベゼルにはラバーバンパーを用意するなどの工夫がされている。なお、ハイブリッドCFRPのGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)部分は、天面ユニットに搭載した無線接続モジュール用アンテナを覆っている。

 また、ボディの薄型化のために、内蔵ドライブの搭載方法もThinkPad T400シリーズから変更された。ThinkPad T400sでは、ThinkPad X300シリーズで採用された7ミリ厚のスリムタイプドライブではなく、ThinkPadシリーズで汎用のウルトラベイ対応ドライブを採用している。ドライブの厚さは9ミリになるが、ThinkPad T400シリーズでボディ側面にあったイジェクトレバーや機構部分を、ThinkPad T400sではボディ底面に移設して2.5ミリの薄型化を実現したという。

 搭載する14.1型ワイドの液晶ディスプレイパネルも解像度は1440×900ドットを維持したまま、1.9ミリ薄く、かつ、130グラム軽くなった。さらに、LEDバックライトの採用で、ThinkPad T400搭載パネルより明るさが20%増し、バックライトの消費電力は10%少なくなったと、磯田氏は説明している。液晶ディスプレイの輝度は変更可能だが、その範囲は5〜300カンデラ/平方メートルと広い。

 磯田氏は、薄く軽量になったディスプレイパネルを搭載するThinkPad T400sでも、耐衝撃性に優れたハイブリッドCFRPの採用で堅牢性能には問題なく、従来のLCD Roll Cage以上の耐衝撃性能を確保しつつ、重さは40%軽くなったと述べている。説明会では、実際に測定された「ボール落下衝撃テスト」の結果が示されたが、ThinkPad T400sのボール落下高さはThinkPad T400を上回っていた。

ボディを薄くすることで液晶ディスプレイ表面にかかるストレスが心配されたが、タッチパッドの段差をなくし、ベゼルにラバーパットを用意することでディスプレイを保護している(写真=左)。そのおかげもあって、ボール落下テストではThinkPad T400を上回る結果が示された(写真=中央)。さらに、ウルトラベイに対応した内蔵ドライブをイジェクトするレバーやスイッチをボディ底面に移すことで2.5ミリの薄型化を実現した(写真=右)

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