この取材では、“寒村”と言いたくなるような集落も訪ねてみた。道路は舗装されておらず、飲料、菓子、カップラーメン程度の食料と洗剤などの日用雑貨を扱う小さな商店が3店舗あるぐらいで、ネットカフェすらない。人よりニワトリが多そうな村だ。
電気は通っているが、村で一番モノがそろっている食堂(兼住居)でも、洗濯機、温水器、15型ブラウン管テレビ、2ドア冷蔵庫がある程度だ。この村でテレビを見るにはパラボラアンテナを取り付ける必要があるが、村の半分以上の家にパラボラアンテナがついてない。洗濯機を持っていないのか、軒先で洗濯板を干している家もあった。
そんな農村に、ハイアールサポートセンターの看板を掲げた“個人宅”を見つけた。そこの住民が自分の家でハイアール製品のサポートを代行しているのだろう。別の個人宅では、携帯電話キャリアの中国移動(China Mobile)サポートセンターの看板を掲げていた。村の掲示板や電柱には、白物家電やテレビの価格が書かれた電器屋の広告や、バイクやトラクター販売店の広告がいたるところに張られている。
公共交通手段で移動するだけでえらく苦労する、ブラウン管のテレビや洗濯機も完全に普及してない、個人宅で大手メーカーのサポート業務が代行される、この寒村で必要とされるのは、バイクやトラクターであって、その次に携帯電話、テレビ、白物家電が求められる。そうなると、必然的にPCの優先順位は低くなり、液晶テレビやプラズマテレビへの買い換えよりも、まずブラウン管テレビを購入するのが先となる(中国ではまだまだ当たり前のようにブラウン管テレビを販売しているのだ)。
ハイアールのニュースリリースで「家電下郷のおかげで山東省に“ハイアール冷蔵庫村”出現」「家電下郷の対象に指定されているPCの72%がハイアール製PC」「家電下郷の対象になっている省エネエアコンの9割がハイアール製」というものがあった。
確かにホコリや砂じん対策など農村の環境に配慮したハイアールの工夫も家電下郷で売れる要因の1つだろうが、それよりも、家電下郷の対象店舗でハイアールの製品しか売っておらず、中国大陸奥地の農村にはハイアールのサポートセンターしかないことを考えると、農村に生きる人たちは「ハイアールを選ぶしかないっ」というのが「ハイアール冷蔵庫村」が出現した理由と考えるのが、ごくごく自然だったりするだろう。
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