“曲線美”が色再現性の決め手になる?――液晶ディスプレイの「ガンマ」を知ろうITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第7回(1/2 ページ)

液晶ディスプレイで黒つぶれや白飛びが目立ったり、Macで作成した画像をWindowsで見ると暗く表示されるといったトラブルは、「ガンマ」に原因がある場合が多い。今回は液晶ディスプレイの表示に大きな影響を与えるガンマについて解説する。ガンマの知識はカラーマネジメントや製品選びで役立つため、特に画質を重視するユーザーはぜひチェックしてほしい。

» 2009年07月10日 20時00分 公開
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ディスプレイの「ガンマ」とは一体何なのか?

 ガンマとは、そもそもギリシア語アルファベット第3字のことで、大文字が「Γ」、小文字が「γ」と表記される。γ線やγ星、γGTPなど、普段の生活で見かけることも少なくないガンマだが、コンピュータの画像処理においては「中間調(グレー)の明るさ」を示す用語として使われるのが一般的だ。

 もう少し詳しく説明しよう。PC環境で「色」を扱うハードウェアには、ディスプレイ、プリンタ、スキャナなどがある。これらの機器をPCとつないで利用する際には、それぞれに色情報の「入力」と「出力」が発生するが、各機器には固有の発色特性(いわば、クセ)があり、入力された色情報をそのまま素直に出力できない。この入出力における発色特性のことを「ガンマ特性」という。

 PCディスプレイに表示される色のデータは、光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の組み合わせで成り立っており、RGBそれぞれが8ビット(2の8乗=256階調)の情報を持つ。256階調の3乗(Rの256階調×Gの256階調×Bの256階調)が約1677万色となり、これを一般的に「フルカラー」と呼んでいるわけだ。

 一部にRGB各色10ビット(2の10乗=1024階調)、つまり1024階調の3乗(約10億6433万色)の発色に対応したディスプレイも存在するが、OSやアプリケーション側のサポートが進んでおらず、現状ではRGB各色8ビットの約1677万色表示がPCディスプレイにおけるスタンダードな色環境となっている。

 PCとディスプレイで色をやり取りする場合は、PCからディスプレイに入力したRGB各色8ビットの色情報を正確に出力できる関係、つまり「入力:出力」=「1:1」の関係が理想だ。しかし前述の通り、PCとディスプレイではガンマ特性が違うため、色情報の伝達は「入力:出力」=「1:1」の関係にはならない。

 ではどのようになるかというと、各ハードウェアのガンマ特性を数値化した「ガンマ値(γ)」を当てはめた関係になる。色情報の入力を「x」、出力を「y」とすると、ガンマ値を適用した関係は「y=x^γ」という式で表される。

ガンマ特性は「y=x^γ」の式で表される。理想はガンマ値「1.0」の「y=x」だが、ディスプレイには固有のガンマ特性(ガンマ値)があるため、「y=x」にはならない。通常はWindows標準のガンマ値となっている「2.2」に合わされて調整され、グラフは上のような曲線を描く。また、Mac OS標準のガンマ値は「1.8」となっている

 通常、ディスプレイのガンマ特性は中間調が暗くなる傾向にある。そこで、あらかじめ中間調を明るくしたデータ信号を入力し、「入力:出力」のバランスを「1:1」に近づけることで、色情報を正確にやり取りできるように工夫している。このように機器側のガンマ特性に合わせて、色情報を調整して帳尻を合わせる仕組みを「ガンマ補正」と呼ぶ。

「ガンマ補正」の簡単な仕組み。ディスプレイのガンマ特性を考慮し、それに合わせて調整したガンマ値の色情報(中間調を明るくした色情報)を入力すると、理想の「y=x」に近い発色となる。通常、ガンマ補正は自動的に行われるため、ユーザーが意識しなくても、PCディスプレイではおおむね正しい発色が得られる。ただし、ガンマ補正の精度はメーカーや製品によって異なる(詳しくは後述)

OSと液晶ディスプレイにおけるガンマの関係

 PCのOSがWindowsの場合は、ガンマ値が「2.2」のディスプレイを使うと、理想に近い色を再現できることが多い。Windowsはガンマ値「2.2」のディスプレイを使うことを想定しているからだ。このことから、Windows標準のガンマ値は「2.2」といわれており、大半の液晶ディスプレイはガンマ値「2.2」に合わせて設計されている。

 一方のMac OSでは、標準的なディスプレイのガンマ値を「1.8」に設定している。考え方はWindowsの場合と同じで、ガンマ値「1.8」に設定されたディスプレイを接続して表示すると、理想に近い色再現が得られるというわけだ。

 WindowsとMac OSでは標準のガンマ値が異なるため、Windows環境で作成・調整した画像をMac OS環境で見ると明るくなったり、Mac OS環境で作成・調整した画像をWindows環境で見ると暗くなったりという現象が発生する。同じ画像でもガンマ値「1.8」では中間調が明るくなり、ガンマ値「2.2」では中間調が暗くなるからだ。

同じ画像をガンマ値「2.2」(写真=左)と「1.8」(写真=右)の設定で表示した例。ガンマ値「1.8」の設定では、全体的に明るい表示となっている。使用した液晶ディスプレイはナナオの20型ワイドモデル「FlexScan EV2023W-H」だ

 Windows環境とMac OS環境の発色を合わせるには、両OSでガンマ値を統一すればよい。ただし、Mac OSではガンマ値を簡単に変更できるが、Windowsにはそのような機能が標準で用意されていない。Windows上ではグラフィックスカードのドライバで色調整したり、別途色調整のソフトウェアを使うことになるので、意外に面倒な作業がともなう場合がある。Windows環境で使用しているディスプレイに「ガンマ値」を調整する機能があれば、そちらを使うほうが簡単かつ正確な結果が得られるだろう。

 表示する画像がガンマ値「1.8」のMac OS環境で作られたと分かっている場合や、Macユーザーから受け取った画像が不自然に暗く表示されるならば、ディスプレイのガンマ設定を「1.8」に変更すると、制作者の意図通りの発色で画像を表示できるはずだ。

ナナオの液晶ディスプレイは、OSDメニューからガンマ値を手軽に設定できる。初期設定のガンマ値「2.2」に加えて、Mac OS標準の「1.8」など、複数の設定を選択可能だ

 余談だが、WindowsとMac OSの標準ガンマ値が違うのは、両OSの設計思想や歴史が関係している。Windowsではテレビに合わせてガンマ値「2.2」、Mac OSは業務印刷のプリンタに合わせてガンマ値「1.8」を採用した。特に、業務印刷やDTPの分野では古くからMac OSが使われており、現在でもガンマ値「1.8」が基本となっている。一方で、インターネット・デジタルコンテンツ全般で標準的なsRGBや、広色域の印刷業務で普及が進んでいるAdobe RGBといったカラースペースでは、ガンマ値「2.2」が標準だ。

 2009年9月にアップルがリリースする予定の最新OS「Mac OS X 10.6 Snow Leopard」では、sRGBやAdobe RGBの普及などを考慮し、デフォルトのガンマ値が「1.8」から「2.2」に変更される予定だ。したがって、今後はMacでもガンマ値「2.2」が主流になっていくと予想される。

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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年9月30日