Windowsにおいて「マイドキュメント」をはじめとする特殊なフォルダが用意されているのは、ユーザーにとってだけでなく、ソフトウェア開発者にとっても都合がいい。アプリケーションが作成するファイル保存場所を決める際、デフォルトの保存フォルダを「マイドキュメント」や「マイピクチャ」に設定しておけば、ユーザーがアクセスしやすくなるからだ。
しかし、すべてのアプリケーションがWindowsのユーザー用フォルダにデータを保存しようとするわけではない。アプリケーションによっては、システムドライブ直下など独自の場所にデータフォルダを作成するものもある。例えば、デジカメの写真を転送するアプリケーションが「マイピクチャ」を意識せず、専用のフォルダを作成してデータを転送することも少なくない。こうした場合、同じ種類のファイルをきちんと一元管理しておきたいという強い意志がなければ、転送された別のフォルダにあるファイルをわざわざ「マイピクチャ」に移動して整理しようとは思わないだろう。
また、Windowsの用意したフォルダと、自分の行いたい分類の仕方が異なるというユーザーも少なくないはずだ。例えば、データ保存専用のドライブを別途用意して、各種ファイルを自分で作成したフォルダに格納する場合もあるし、ファイルにアクセスするためにフォルダを探すのが面倒で、多数のファイルをデスクトップに直接置くユーザーもいる。これでは、せっかくのユーザー用フォルダも無駄になってしまう。
こうしたユーザー用フォルダが使いにくく感じる原因の1つは、ファイルの置き場所が散在しがちなのに、ユーザー用フォルダが物理的なフォルダと1対1で対応しているためだ。例えば、Vistaで「ドキュメント」のデフォルトの位置は通常「C:\Users\<ユーザー名>\Documents」であり、別のフォルダを追加することはできない。ファイルをより細かく分類したい場合、「ドキュメント」フォルダ以下に自分でフォルダを作成していくしかない。つまり、自由度が低いのだ。
こうした問題を解消するため、Windows 7には「ライブラリ」という概念が導入された。このライブラリは一見、「マイドキュメント」のような特殊フォルダに思えるが、複数のフォルダを参照して一括管理することが可能な新機能だ。Windows 7ではデフォルトでタスクバーにエクスプローラーのアイコンが配置されているが、これをクリックすると、最初にライブラリが開く仕様となっている。Windows 7ではユーザーの各種フォルダをライブラリで管理することが推奨されているのだ。
ライブラリは、デフォルトで「ドキュメント」「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」と、カテゴリー別に4つが用意されている。ライブラリは、複数のフォルダに分散して格納したファイルを、同じフォルダ以下にあるように見せる仮想的なフォルダと考えればいいだろう。例えば、「ドキュメント」というライブラリを開くと、個人のドキュメントフォルダである「マイドキュメント」(C:\Users\<ユーザー名>\Documents)と、「パブリックのドキュメント」(C:\Users\Public\Documents)の両方を同時に参照する。別々の場所にあるファイルが1つのフォルダに存在しているように見えるのだ。
もちろん、「ドキュメント」など1つのライブラリで参照するフォルダを追加登録したり、ライブラリ自身を新規作成することもできる。ライブラリの機能を使えば、ドライブに散在したデータを自分の思うままに分類し、1つのフォルダで管理しているように、まとめておくことができるわけだ。
ちなみに、ほかの場所から新規のファイルやフォルダをライブラリにドロップすると、ライブラリに登録されたフォルダの1つに実体が保存される。デフォルトでは「マイドキュメント」など個人のユーザー用フォルダに保存されるが、保存場所は変更可能だ。
ライブラリでは個人用ファイルと共有用ファイルがまとめて管理されるため、混同しやすい懸念もあるが、このように新規で追加したファイルやフォルダは保存先を指定でき、デフォルトでは個人のユーザー用フォルダに保存されることから、ほかのユーザーに見られたくないファイルを知らない間に共有してしまうようなミスは少なくて済みそうだ。
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