AMDは統合型チップセットの新モデル「AMD 785G」を8月4日に発表した。PC USERでは、ASUSの「M4A785TD-V EVO」を用いたベンチマークテストの結果などを紹介しているが、ASUS以外のPCパーツベンダーからも、AMD 785Gを搭載したマザーボードが発表されている(AMD 785Gのパフォーマンスについては“DX10.1対応”統合型チップセット「AMD 785G」の意外なお得度を参照されたい)。
MSIのAMD 785G搭載マザーボード「785GM-E65」は、すでにCOMPUTEX TAIPEI 2009でも展示されていたmicro ATXフォームファクタのマザーボードで、サウスブリッジにはSB710を採用している(COMPUTEX TAIPEI 2009で展示されていたサンプルについては、種類が増えた「P55マザー」は遊び心で勝負──MSIブースPCパーツ編 を参照)。
AMD 780Gに統合されたグラフィックスコアの「Radeon HD 4200」では、DirextX 10.1に対応したことが強く訴求されているが、それとともに注目したいのが、実装されている高画質化エンジンが、これまでのAMD 780Gで採用されていたUVD(Universal Video Decoder)からUVD2にアップグレードされたことだ。ハードウェアデコードできる動画が2ストリームに増えたおかげで、Blu-ray Discに収録されるコンテンツで多く見られる「Picture in Picture」などがスムーズに再生できるようになったほか、GPGPUが利用できる「ATI Streme」にも対応したことで、アップスケーリングやダイレクトコントラストなどの処理がハードウェアで行えるようになったことも大きな変化といえる。
ここでは出荷直前の“予習”として、MSIのAMD 785G搭載マザーボード「785GM-E65」について、画像を中心に紹介していこう(製品情報はMSI、AMD 785G採用のmicroATXマザー「785GM-E65」を参照のこと)。
CPUソケットはAM3対応で、DDR3用のメモリスロットが4基用意されている。DDR3-1333/1066/800が利用可能で、最大容量は16Gバイトだ。なお、CPUソケットはTDP140ワットのCPUまで利用できる。785GM-E65が発表された時点ではAM3対応のCPUでTDPが140ワットのモデルは存在しないが、将来登場するかもしれないハイエンドモデルが使えるのはユーザーに安心感を与えてくれるだろう。
micro-ATXフォームファクタのマザーボードだけあって、拡張スロットの構成は、PCI Express x16が1基、PCI Express x1が1基、PCIが2基と数が限られている。ただし、PCI Express x16にRadeon HD 3300搭載のグラフィックスカードを組み込むと、チップセットに統合されたRadeon HD 4200と組み合わせたHybrid CrossFireが有効になってグラフィックス性能を向上させることができる。
人気の高かったAMD 780Gと同様に、ビデオプロセッシング機能が充実しているAMD 785Gを搭載しているだけあって、785GM-E65のバックパネルには、アナログRGB出力に加えて、DVI-D、そしてHDMIを備えている。HDCP対応なので地上デジタル放送で供給される著作権保護コンテンツも785G-E65に接続した大画面ディスプレイに出力可能だ(地デジチューナーカードは別途用意する必要がある)。
基板や実装したチップの温度と電圧などのハードウェアモニタリングを行うのはFintekの「F71889F」だ。MSIのマザーボードではハードウェアモニタリングにFintekのチップを採用しているモデルがある。Intel X58 Express搭載モデルの「X58 Platinum」でも「F71882FG」を載せている。
Intersilの「ISL6323A」は、電力回路の有効フェーズ数を制御するPWMコントローラで、マザーボードの省電力化を促進する役割を果たしている。MSIでは、独自開発の省電力エンジン「DrMOS」を導入した2008年春のモデルからISL6323Aを実装している。
なお、785GM-E65の電力回路は4フェーズで構成されている。基板には4つのLEDが用意されていて、有効になっているフェーズ数にあわせてLEDが光る仕組みになっている。ユーザーは視覚的に省電力機能を把握できるわけだ。
785GM-E65は、バックパネルにIEEE1394を備えているのが、その制御はVIAの「VT6315N」で行っている。また、ネットワークコントローラには1000BASE-Tにも対応するRealtekの「RTL8111DL」を採用する。
サウンドコントローラはRealtekの「ALC889」を採用し、7.1チャネルのHDオーディオ出力に対応するほか、光出力も利用可能で、785GM-E65のバックパネルにも角型の出力端子が搭載されている。MSIのマザーボードでは、PC USERでもフォトレビューで紹介した「790GX-G65や「P55-GD65」などの最新モデルで採用されている。
グラフィックス関連では、グラフィックスコアのローカルメモリとして利用できる「サイドポートメモリ」用に128MバイトのDDR3をオンボードで用意しているので、メインメモリを共有する場合よりパフォーマンスの向上が期待できる。785GM-E65では、サイドポートメモリにエルピーダの「J1116BASE-DJ-E」を採用している。AMD 785Gを搭載したほかのマザーボードでも、同じチップを採用する例が多い。J1116BASE-DJ-Eのスペックをエルピーダのデータシートで確認したところ、DDR3-1333でCL設定は9-9-9となっていた。
MSIのマザーボードにはオーバークロック専用の「赤いディップスイッチ」を備えたモデルが多い。785G-E65は、micro ATXマザーなので、それほどオーバークロック需要がないようにも思えるが、そういうモデルでも赤いディップスイッチを載せるあたりに、MSIの“遊び心”が感じられる。FSBを4段階に切り替えることができ、それぞれ、定格、10%増、15%増、20%増と、なかなかアグレッシブなオーバークロックにしてくれる。
これ以外でも、BIOSにAuto Overclocking Technologyを導入するなど、オーバークロック機能は充実している。このあたりの動作については、後日掲載する予定の性能評価レビューで紹介したい。
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