MacもWindowsも1本で3台まで――「ウイルスバスター2010」発表“両刀使い”に

» 2009年09月02日 20時15分 公開
[ITmedia]

MacとWindowsの両方に対応、最大3台まで利用できる

ウイルスバスター2010

 トレンドマイクロは9月2日、最新セキュリティスイート「ウイルスバスター2010」の製品発表会を開催した。同日Webダウンロード版の先行販売を開始、パッケージ版は9月4日に発売される(→製品ラインアップと価格)。

 ウイルスバスター2010の最大の目玉は、Mac OS X向けの「ウイルスバスター for Mac」を同梱した点だ。ライセンス数は従来通り最大3台までだが、WindowsとMacを自由に組み合わせて利用できる。同社は「MacはOSとしては堅牢だがフィッシング詐欺などのOSに依存しない脅威には対策を取る必要がある」と強調し、実際にTwitterを利用して危険なWebサイトへ誘導するといった事例を紹介、Macを狙ったWebベースの攻撃が増加傾向にあると指摘する。

 また、ウイルスバスター2010では1枚のメディアにWindows版とMac版の両方が格納されており、使用するPCに応じて対応するインストーラが立ち上がる仕様だが、同社は「Macは安全」という認識とともに、「Mac向けセキュリティソフトウェアの価格(Windowsの約1.8倍)が高い」「購入できる場所がWindows向け製品に比べて少ない」ことなどがセキュリティソフトを導入する障壁になっているとし、「2009年版から価格を据え置いたまま同一パッケージに同梱する新しいライセンスを採用した」と説明した。

Windows版に似たユーザーインタフェースで、WindowsとMacを併用しているユーザーは扱いやすい(写真=左)。米国で起きた情報流出事件に便乗して、Twitterから危険なWebサイトに誘導し、ビデオ閲覧用のメディアプレーヤーに偽装した不正プログラムをダウンロードさせる手口を紹介(写真=中央)。同社が公開したデータによれば、現在Macのシェアは7.6%だが、WindowsとMacの両方に対応したハイブリッド版のセキュリティソフトウェアは極端に数が少ない。しかし、実際にはMacユーザーの73.9%がWindowsを併用しているという。同一パッケージにMac版を同梱したのは入手性を高める狙いもある(写真=右)

 なお、Mac版の主な機能は、定義ファイルベースのウイルス/スパイウェア対策や、フィッシング詐欺対策、有害Webサイトのフィルタリング機能などで、ヒューリスティックなマルウェア検出やファイアウォール機能、個人情報保護(暗号化)機能は搭載されておらず、Windows版の持つ機能に比べるとやや簡易的な印象だ。ただし、フィッシング対策は、Windows版と同様(データベースを共有している)に2008年版から導入したWebレピュテーション技術を用いているため、Safariに実装されたフィッシング対策機能などよりは効果が高いとしている。

より「安心」、より「軽快」に――そのほかの新機能と改善点

スマートフィードバックで効率的に脅威の情報を収集し、データベースに反映させる

 一方、ウイルスバスター2010の新機能としては、スマートプロテクションネットワーク(SPN)の導入が挙げられる。SPNは、Webレピュテーションだけでなく企業向け製品で利用されているE-Mail/ファイルレピュテーションとの相関からセキュリティリスクを分析する仕組みで、より即時性の高い対策を実現できるのが特徴だ。また、ユーザーのPCに侵入しようとしたマルウェアの情報をトレンドマイクロのデータベースに送信するスマートフィードバック機能も実装され、より広範囲かつ効率的に不正なプログラムの情報を取得できるようになった(ただし、コンシューマーユーザーが直接恩恵を受けるのは、現在のところWebレピュテーションのデータベース参照のみ)。「新しい脅威は今までにないほどのスピードで発生しており、2.5秒に1つのマルウェアが生まれている。セキュリティ対策で重要なのは、可能な限り速く脅威を把握すること。従来のクローラーやハニーポットを補完するための機能がスマートフィードバックだ」(同社)。

 このほか、Webブラウザ上で入力した情報を暗号化する「GuardedID Standard」を採用し、従来のパスワードだけでなくすべての入力フィールドの暗号化を実現したほか、Internet Explorerに加えてFirefoxでも同機能を利用できるようになった(GuardedID Standardは9月中にトレンドマイクロ無料ツールセンターから提供予定)。また、起動時間を3割、クイック検索時間を2割短縮し、2009年版では手動で指定する必要があったシステムチューナーの自動化や、アイドルタイムスキャンの実装など、パフォーマンスを向上する改善も施されている。

同社によれば、2.5秒に1つのマルウェアが発生している(写真=左)。従来のハニーポットやクローラーによる検体収集を補完するスマートフィードバック(写真=中央)。SPNで可能になった膨大な処理(写真=右)

絶対的なNo.1へ――コンシューマー市場に向けた3つの取り組み

トレンドマイクロ取締役エグゼクティブバイスプレジデントの大三川彰彦氏

 ウイルスバスターのマーケットシェア(販売本数)は、直近のデータ(2009年6月/出典:BCNランキング)で40%を超え、金額ベースでは50%に達している。2008年2月以降は、販売実績でほぼNO.1の座を堅守している状況だ。発表会の冒頭に登壇したトレンドマイクロ取締役の大三川彰彦氏は、個人向けと法人向けの両方で高いシェアを占める好調な販売実績を振り返り、“セキュリティリーダー”として現在同社が実施しているコンシューマー市場に向けた3つの取り組みを紹介した。

 1つは最新の脅威に対する技術革新だ。同社の調査によると、2005年から4年間でWebベースのセキュリティリスクは25倍と驚異的に増え、警察庁が公開した資料(平成21年2月26日)でもサイバー犯罪の検挙数は右肩上がりに増加している。この加速度的に増えていく脅威に対応するため、今後は特に、2010年版で実装されたSPN技術に代表されるような“クラウド・クライアント型セキュリティ”に注力していくという。

 2つめは啓発活動の実施。トレンドマイクロは現在、インターネットセキュリティの啓発サイト「Internet Security Knowledge」で情報提供しているほか、CIOフォーラムで技術者向けに情報交換の場を設けたり、子どもやシニア向けの体験講座なども行っており、継続して同社主導の啓発活動を積極的に実施していく。

 3つめの取り組みとして紹介されたのは、コア技術の水平展開だ。ウイルスバスター2010の目玉としてMac向けセキュリティが加わったが、同社はこれ以外にもすでにスマートフォンやiPhone、USBデバイス、プレイステーション3/PSP、ルーター組み込み型のセキュリティソリューションなどを提供している。大三川氏は「インターネットの利用動向を見ると、PC以外の機器によるインターネット利用時間が増加しており、特に若い世代ではゲーム機での利用が多いようだ」と分析、これらの多様化するデバイスに対してマルチプラットフォーム展開を推進していく。

 また、昨今の好調な業績は「安心」や「軽快さ」「価格」といった市場ニーズを満す製品投入とともに、製品の価値をユーザーに分かりやすく伝える告知力や、販売パートナーとの強い連携に成り立っていると説明。その基本方針を継続しつつ「Be Absolute No.1」(同社)を掲げ、今後1年間で1100万ユーザーの獲得を目指すとした。

個人/法人向け製品の販売実績(写真=左)と、マーケットシェアの推移(写真=中央/右)

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