AMDを含める半導体メーカー各社が出荷数を軒並み下げているなか、Intelを救ったのがAtomといわれている。低消費電力のCPUを低コストで出荷することで、Intelにとって新しい市場を開拓すべく登場したAtomは結果的にNetbookというスマッシュヒットとなって、順調に普及しつつある。Intelによれば、WiiやiPhoneなどを上回るペースで普及が進んでいるという。
この先、Atomのさらなる普及のために重要となるポイントがSoC(System on Chip)ソリューションの存在だ。今日の携帯電話やMobile Internet Device(MIDなど)には、CPUやチップセットを1つのパッケージとして統合した製品を採用するケースが多い。これが低消費電力の実現とチップ数削減による小型化や低コスト化に結びついている。
しかし、IntelはAtomでもPCで一般的な2チップソリューションや3チップソリューションを採用しており、これが小型機器や特定分野におけるAtom普及の阻害要因になっていたといわれる。そこで、Atomでも複数の機能を1つのチップに統合し、さらなる市場開拓を目指すのがSoCの狙いだ。現状で、基本アーキテクチャの完成からSoCによる機能統合完了まで1年程度のタイムラグが生じているが、これを1四半期程度まで縮めることが目標だという。製造では台湾のTSMCと提携し、ここで顧客のニーズに合わせた開発と製造が行われることになる。
世代的には、2008年に登場したMenlow(開発コード名)の後継となる「Moorestown」(開発コード名)が2010年半ばに登場し、同年後半にはMoorestownを採用した製品が市場に出荷されるという。Moorestownはアーキテクチャを刷新したモデルだが、すぐに32ナノメートルプロセスルールを採用した「Medfield」が登場する予定だ。さらに、こうした製品をプッシュすべく、Intelは以前より開発に関わっている「Moblin」というLinuxベースのMID向けOSを機会あるごとにアピールしている。今回のIDFでも、初公開となる「Moblin 2.1」の動作デモが行われており、携帯電話やMIDから便利に操作できる仕組みが紹介された。
「未来を語る」のIDFだけに、ロードマップや“先の先”にある情報を知るには十分な情報が提供された。順風満帆をアピールするIntelだが、同時に「ムーアの法則の限界という技術上の壁」「PC販売頭打ちによる経済市場上の壁」という2つの問題が指摘されている同社にとって、未来の可能性とこれまでの成功例を積極的に示すことは、投資家やアナリストを意識したアピールともいえる。Intelの実力と同時に苦悩する舞台裏の姿も垣間見られたような、オープニングのキーノートスピーチだった。
次のリポートでは、ロードマップの詳細や新世代アーキテクチャについて、紹介していこう。
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