Snow Leopardが登場!! Macはどうなる!?座談会 後編(1/4 ページ)

» 2009年10月02日 16時16分 公開
[ITmedia]
座談会は7月31日(金)に行われた

参加者のプロフィール(50音順/敬称略)

磯貝一

90年にソフトバンク入社。THE COMPUTERを経て、PC WEEK日本版(現ITmediaエンタープライズ)の立ち上げを担当。95年からネットメディア専業に。ZDNet JAPAN、オルタナティブ・ブログ、TechTargetジャパン、環境メディアの立ち上げに関与し、現在はメディア・マーケティング統括部部長。

田中宏昌

PC USER編集長。Hello!PC時代からPC本体を主に担当。長年の隠れMacファンでもある。

長濱和也

PC USER編集部員。DOS/V magazineの編集部に所属後、PC USERに在籍。主にPCパーツや中国記事を担当。本職は帆船の船長らしい。

松尾公也

83年に電波新聞社入社。その後、ソフトバンクに入社し、PC WEEKやMacUser、Macintosh Wireの立ち上げに携わる。Macintosh Wireのオンライン化に伴いITmedia(旧:ZDNet Japan)へ。現在は海外記事の翻訳やMacWIRE for iPhoneを担当する。無類のMac愛好家。

元麻布春男

フリーランスライター。PC/AT互換機の黎明(れいめい)期からPC業界にかかわる。1990年末よりPC USERでアーキテクチャやOSの解説、ハードウェアのレビューなどを精力的に執筆。



Snow Leopardへの期待と現実

8月28日にリリースされたMac OS X“Snow Leopard”

田中 Snow Leopardがリリースされることへの期待感はどうでしょうか?(編集部注:この座談会はSnow Leopard発売前の7月31日に行われました)

松尾 今ある古いMacが速くなるのかなぁっていうのと、HDDの占有量が少なくなるので空き容量が増えていいなぁというのと、そのくらいですよ。

元麻布 Mac Pro含め、うちにSnow Leopardが64ビットで動くMacが多分ないだろうな、と思っていて。どこかのタイミングで1台は買わなきゃいけないんだけれど、どうするかなと。でも、今買うと64ビットで動くか動かないかが微妙なので、OSがリリースされてから買ったほうがいいやと思っている。

田中 それは間違いないです。Macについては、現行のラインアップではGPGPUの対応を含めてハードウェアの準備はできていて、そこの器に新しいOSが注がれ、ようやく次へのステップが1年くらいかけて行われるのかな、という印象なんですけれど。

元麻布 だけど、Mac OS X 10.5.7とか10.5.8のレベルのアップデートでも結構トラブルが発生して、外付けHDDの無償交換を行ったりしたじゃないですか。で、10.6(Snow Leopard)の変化ってその比ではないので、多分いろいろなことが起こる。それは、不可避で発生するわけです。それはもう、WindowsでもMacでもUNIXでもLinuxでも必ず。だから、待ちの人はしばらく待ったほうがいいと思う。多分Snow Leopardになって、直接よいことってのはそれほどはないかと。次のとってもよいことへの準備のOSなので。

 Snow Leopardは、開発者向けには出さなくちゃいけない情報が豊富にあるんだけれど、一般ユーザー向けに出す情報がそれほどない。というか、Leopardと変わらないし、新しく加わるアプリケーションもほとんどない。だから、アップグレード価格で3300円というサプライズをやりましたけれど、あれはまあそうであると同時に「あ、29ドルでしか売れないかもしれない」という気もする。本当はものすごく大きく変わっているんですけれど、それはその、ユーザーの目に見えない部分が変わっているのであって、ユーザーが普段使う部分で変わってる訳ではないので。

松尾 64ビット化ってのは見えないですよね。

64ビットで動いているプログラムは、アクティビティモニタに「Intel (64ビット)」と表示される

元麻布 しかも、その64ビット化はすべての人に対して与えられるものではないし、多分、多くの人はSnow Leopardを32ビットのカーネルと64ビットのユーザーで使うのかもしれない。

 LeopardをWindowsに例えるなら、Windows 95なんですよ。要するに、ユーザーが64ビットでいたって、32ビットのカーネルを呼び出す(サンクする)わけですよね。Windows 95は、それが32ビットで16ビットのカーネルを呼び出してて、16ビットと違って32ビットのカーネルははるかにリソースに余裕があるんで安定して動くので、それは全然OKなんですけど。Snow Leopardになると、下が64ビットになるわけですよね。だけど下が64ビットになったって全部のマシンで64ビットで動作するかというと、多分動かない。それはCPUの問題でもなく、CPUとファームウェアとアップルの意図。64ビットのカーネルを動かしてもいいなと思えば動くでしょうけれど、そうじゃない場合は多分32ビットのカーネルを使うし、32ビットのカーネルを使ったほうがユーザーのクレームが少なくなる。それからドライバの互換性が取れるので、既存の市場がある。64ビットのカーネルを採用した瞬間に、それはもう、新しいドライバが必要になるので、なかなか大変ですよ。

 また、GPGPUってきわめて特殊な使い方しかできないので、すぐにあれが何かの役にものすごく立つとはあんまり思えない。すぐに何かに抜群に役立つものではなくて、HPC(High Performance Computing)の業界とかはすぐ使えるけれど、普通の人にはなかなか限定されるのではないかと。

長濱 Macユーザーの中で、画像編集とか動画編集をやってる人たちって多いじゃないですか。プロもアマチュアともに、そういった人たちのエンコード/トランスコード処理とかそういったところの訴求ってのはないんですか?

元麻布 Final Cut Proとかアドビ システムズのハイエンドアプリケーションって、じゃあ何万本売れているのかって話で、普通の人にはあんまり縁がないんですよ。だから、iMovieで何か抜群によくなったとかならばいいんだけれど、それでも動画をそこまで編集する人口ってどのくらいいるのかが、よく分からない。

松尾 iMovieの最新版で手ブレ補正機能が付いたじゃないですか。あれ、処理時間がむちゃくちゃかかるんですよね。それが、GPU使うことですごく短時間で済むんだったら、これはかなり画期的なことになるんじゃないかと思いますよ。

長濱 実際、Windowsの画像補正ソフトで手ブレをなくす機能ってあるじゃないですか。それがやっぱりGPGPUに対応したおかげで、かなり実用的になっているんです。そういったソフトウェアも出てきているんですよね。実際にMacで使えるようになって、それをミドルレンジからバリュークラスの人たちが認識したときには、需要が爆発的に増えるのではないかと。

Snow Leopardでは64ビット対応ほか、新しい基盤技術となるOpenCLとGrand Central Dispatchをサポートした

元麻布 コンテンツを作る側ではなくて、利用する側でGPGPUが使えるようにならないと爆発的な普及はないと思う。要するに、音楽でも映画でもWebみたいなテキストベースでも、書く人と受け取る人の比率って1:99とかでしょ? だから、本当に爆発的に普及するには消費する側をアクセラレートするようにならないと。それは難しいんだけれど、GPGPUというのはメモリに全部データとかコードとかをセットして、それをGPUがひたすら処理するという仕組みなので、インタラクティブにはできないんですよ。

 結局、現行のGPGPUはバッチ処理なんですよ。で、そのバッチの単位を細かくすればインタラクティブに近くはなるんだけれど、それをやればやるほど効率は悪くなります。だから、その辺の兼ね合いで、やっぱりインタラクティブ処理には使いにくい。

 例えば、GPUが使うメモリ空間とPCのCPUが使うメモリ空間って別じゃないですか。インテルとかはこれを共有させるようにしようってこともやっているんですよ。で、完全にデータをCPU側とGPU側で同じように扱うようになれば、インタラクティブな処理ができるわけですよね。だけど、まだメモリ空間が完全に分かれているので、なかなかその辺の連携がとりにくいと思います。

 GPGPUがらみの話は、今アップルがデベロッパー向けに伝えているんだけれど、エンドユーザー向けにはまだ、いえるところまできてないんですよね。

長濱 そういったものを、分かりやすくアピールできないと。

元麻布 だから、Snow Leopardというのは、多分その次にアピールできるもののための準備なんですよ。

長濱 やっぱりその次にならないと、目に見えるものは出てこないのかぁ。だからキーノートで彼らはエクスチェンジだといったんですね。エクスチェンジクライアントであると。それは今までのMacユーザーの望むものとは少し違う気がしますよね。でも、今それしかいえないのか。だって、去年のWWDCと今年のWWDCってほとんど差分ないですよ、情報の差分。Windows側のユーザーだと、ハードウェアが変わりました、例えばCPUの世代が変わりましたとかいうと、それが1つのキッカケになって買ってもらえることもあるんですけどね。

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