テレビと視聴者とインターネットの関係──3者を近付けるアイデアIntel Developer Forum 2009(1/3 ページ)

» 2009年10月05日 19時30分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

テレビと視聴者とPCの間に存在する垣根

米Intelデジタルホーム部門(DHG)ジェネラルマネージャー 兼 シニアバイスプレジデントのエリック・キム氏(左)と米CBS マーケティングプレジデントのジョージ・シュワイザー氏(右)

 この1〜2年で、新聞や出版業界のみならず、比較的好調だったテレビ業界でさえも赤字決算が伝えられている。英Financial Timesが9月30日(現地時間)に掲載した記事では、英国におけるインターネット広告収入がテレビのそれを上回ったことが報告されている。これは主要国では初めての現象だという。このように、IT媒体の興隆が伝えられる一方で、新しい問題が顕在化しつつある。

 テレビで高品質なコンテンツが無料で楽しめたのも、膨大な広告収入のおかげだった。これが減少することは、コンテンツの質の低下につながる。インターネットの動画配信に広告をつける試みは、すでに数年前から始まっており、実際に市場も2009年の3億5000万ドルから今後数年で16億ドルと急成長が見込まれている。それでも、テレビ広告収入の590億ドルには遠く及ばない。英国のインターネット広告収入の例も、その多くが、Googleなどの検索連動広告や従来型バナー広告であり、インターネットの動画配信と広告の組み合わせによるビジネスはまだ始まったばかりだ。

 既存のコンテンツ事業者がビジネスをインターネットにシフトしようとしても、単純比較で10分の1かそれ以下の収入で制作しなければならないというのが現状だ。一方で、AppleのiTunes Storeのように映画やテレビドラマをオンデマンド形式で有料ダウンロード提供したり、大手のコンテンツホルダーが動画配信システムを作ってストリーミングのオンデマンド形式によるインターネット視聴を可能にする「Hulu」のようなサービスもある。iTunes StoreはDVDのようなセルビデオの補完、Huluはテレビに頼らない無料インターネット配信システムという違いはあるが、共通するのはインターネット配信だけで事業を成り立たせることが難しい点だろう。そこで、テレビというシステムを維持しつつ、どれだけ多様な形でアプローチを行い、より多くのユーザーを引きつけるかに頭を悩ますことになる。

急成長し始めたオンラインビデオ広告市場だが、テレビ業界との差は依然として大きい(写真=左)。インターネットの世界に存在するビデオコンテンツの数はものすごい勢いで増加しており、利用できるデバイスの種類も拡大している(写真=右)

 IDF 2009で行われた、米Intelデジタルホーム部門(DHG)ジェネラルマネージャー 兼 シニアバイスプレジデントのエリック・キム氏によるキーノートスピーチにゲストで登場した米CBS マーケティングプレジデントのジョージ・シュワイザー氏が興味深い話をしている。CBSは全米5大ネットワークの1つで、当然ながらコンテンツを制作する側に立つ。シュワイザー氏は、これまでのテレビ業界に欠けていたポイントとして、「視聴者側の視点」を挙げている。クルーごとの番組改編でテレビネットワーク側は新たな番組のラインアップを「さぁ、見てください」とばかりに視聴者に提供するものの、送り手の努力も虚しく、視聴者にメッセージが届いていないことも多い。

 この問題の1つに、視聴者を目的の番組や興味ある番組に導く仕組みが整っていないことが挙げられる。また、視聴者自身もDVR(Digital Video Recorder)のような録画装置を利用して、時間に制約されない視聴、あるいは、外出先から各種デバイスを用いてインターネット経由で視聴するといった、それぞれのスタイルを模索しつつある。受け手がただ待つのではなく、視聴者側がコンテンツを自ら取りに来るようにする仕組みが重要だと、シュワイザー氏は主張する。これが、テレビとインターネットが融合した1つのスタイルになるのかもしれない。

色付けでハイライトされた部分が全米5大TVネットワークでスタートする新番組だ(写真=左)。数多く新番組が登場する一方で、番組表は従来のスタイルで提供されているので、視聴者が希望の番組を探すこと自体が大変な作業になる(写真=右)

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