「薄く、軽く、長時間駆動」――モバイルノートPCに求められるこれらの要素をソニーが極限まで追求したのが「VAIO X」だ。
この新型ノートPCは、CPUにモバイルノートPC向けのCore 2 Duoや、Netbook向けのAtom Nではなく、それより省電力で小型化にも有利なMID/UMPC向けのAtom Zを採用することで、11.1型ワイド液晶ディスプレイに17ミリピッチのキーボードという無理のない操作環境を確保しつつ、かつてないレベルで薄さ、軽さ、長時間駆動の共存も実現している。
製品概要についてはニュースリリース記事や発表会リポート、詳しい内部構造と開発陣の並々ならぬこだわりはインタビュー記事をご覧いただくとして、ここでは実際の使い勝手やパフォーマンスをさまざまな角度から検証していきたい。
VAIO Xは店頭販売向けの標準仕様モデル(実売価格11万前後から)、ソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデル(直販価格8万9800円から)ともに10月22日の発売予定で、今回検証したのは製品版に近い試作機だ。実際の製品とは異なる可能性がある点は、あらかじめお断りしておく。なお、ソニースタイルでは2009年10月19日10時より順次、あらかじめメールで登録したユーザー向けに予約販売を行う予定だ。
まずは最大の特徴である薄型軽量ボディをおさらいしておこう。本体サイズは278(幅)×185(奥行き)×13.9(高さ)ミリに収まり、前面から背面まで同じ厚さのフルフラットボディに仕上がっている。13.9ミリというのが最厚部の値であるのには驚きだ。フットプリントはA4用紙(297×210ミリ)より一回り小さく、厚みは大学ノート2〜3冊分程度しかない。
薄さ以上にインパクトがあるのが重量だ。店頭販売向けの標準仕様モデルでも約765グラムと非常に軽く、さらにVAIOオーナーメードモデルの最軽量構成ならば約655グラムまで軽くなる。約665グラムという重量は、10型以上の液晶ディスプレイ搭載ノートPCで世界最軽量という(2009年10月8日時点、ソニー調べ)。
以下に、非常に薄型軽量のVAIOノートとして2003年に発売され注目を集めた「バイオノート505エクストリーム」と並べ、サイズを比較してみた。さすがに505エクストリームの薄さはいまだに色あせないが、VAIO Xのフルフラットな極薄ボディは、後部に向けて厚みが増す505エクストリームより持ち運びやすい印象だ。
ボディは真っ平らで余計な突起や膨らみがなく、重さは500ミリリットルのペットボトルより少し重いくらいなので、ビジネス用のブリーフケースはもちろん、A4の書類が入るようなバッグであれば、すっきり収納でき、必要なときにはサッと取り出せて、持ち歩きにストレスを感じることもあまりないだろう。
ちなみに、筆者の仕事用バッグはモバイルノートPCやデジカメ、書類など内容物が多いが、そこにVAIO Xの標準仕様モデルを1台追加して持ち歩いても、普段よりバッグがかさばる印象を受けたり、余分な重さに疲れたりすることはなく、普段とほぼ同じ感覚で携帯できた。確かに、10型以上の液晶ディスプレイ搭載ノートPCでこれほど気楽に持ち運べたのは初めてだ。
この薄型軽量ボディを実現できた背景にはAtom Zの採用だけでなく、片面実装基板をはじめ、各パーツの吟味や新開発などさまざまな技術の集積があるわけだが、それが実り、ソニーが狙う「モバイルノートPCを持ち歩きたいけど、重くてかさばるため、あきらめてきた」という潜在的なユーザー層を刺激できる十分なインパクトはあるように思う。
VAIOノートらしい所有欲をくすぐるボディデザインは健在で、特にVAIO XはハイエンドモバイルノートPC「VAIO Z」以上のこだわりが見られる。その最たるものが「VAIO」ロゴで、ほかのモデルと差異化を図るべく、初めてローズゴールドのロゴを採用した。シルバーのロゴが多いVAIOの中では、これだけでかなり特別な印象になる。
ボディカラーもスタンダードな「ブラック」だけでなく、VAIOオーナーメードモデルでは、人目は引くが品よく落ち付いたトーンでまとめた「ゴールド」、ブラックを基調として天板にカーボン繊維のヘアラインをあしらった光沢感ある「プレミアムカーボン」も用意した。底面は薄さを際だたせるために端を斜めにカットしつつ、濃いブラウンのカラーでコントラストを付けている。
デザインの上質感と、薄型軽量、堅牢性のバランスも追求した。天板の素材は4層で構成されるカーボンレイヤーの中央に特殊なシートを1枚サンドイッチ状に挟み込んだハイブリッドカーボンを開発。従来の5層マルチレイヤーカーボンに比べて、わずかに厚くなる代わりに、強度を保ったまま、軽量化した。パームレストとキーボードカバーは一体成型で、VAIO Zと同じアルミの絞りパーツを用いて、質感、剛性、軽量に配慮している。
液晶ディスプレイとパームレストを端を縁取るようにくぼませた「Rigid Arc Design」(リジッドアークデザイン)もポイントだ。見た目の薄さが強調されるほか、液晶ディスプレイを開けるときに指がボディの端にかかりやすくなり、剛性アップにも貢献している。底面の素材は、強度と薄型軽量に配慮したカーボン混入樹脂(バッテリーの外装は樹脂製)だ。デザインの好みは人それぞれだが、一目見て高級志向のモデルであることが分かる外装といえる
13.9ミリの極薄ボディということで強度に不安を感じるユーザーもいるだろうが、以上のような素材や仕上げの工夫もあり、ボディの剛性に不満はない。
ソニーはVAIO Xが150キロfの平面加圧振動試験をクリアしたほか、パームレストの端を持った状態でボディを揺らす片持ち振動試験や、液晶を開いた状態で底面の角から落下させる角衝撃試験なども実施し、厳しい品質試験をくぐり抜けて製品化したことをアピールしているが、実際に手にしてみても貧弱な印象は受けず、薄型軽量ボディの凝縮感とカッチリした作りに感心する。
ボディを持った際に天板やパームレストがペコペコと大きくゆがむようなことはなく、品質試験のようにパームレストの端を手で持ってボディを小刻みに揺らしても、ボディがしなって不安になるようなことは皆無だ(下の動画では結構強い力でボディを振ったり、押したりしている)。
次のページでは、VAIO Xのバッテリー駆動時間、基本スペックをチェックする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.