各種個人サイトからWebサービス、ショッピングサイトまで、さまざまなサイトを構築し、気軽に一般公開できるのもクラウドのメリットだ。オジー氏の講演では、欧米を中心に世界中で広く利用されているブログシステム「WordPress」の開発者であるマット・マレンウェッグ氏が登場し、Windows Azure上でWordPressを動作させるデモを紹介した。WordPressのプログラム本体はオープンソースで公開されており、WordPressの提供する無料ブログサービスだけでなく、ユーザー自身がWordPressのコードをWebサーバにインストールすることで自らのブログサイトを構築することも可能だ。
WordPressの実行にはPHPが動作するWebサーバとデータベースが必要となるが、PDC09で紹介されたデモではプラットフォームにWindows Azure、データベースにSQL Azureを組み合わせることで、Windows Azure上でWordPressを動作させていた。マレンウェッグ氏によれば、Automaticでは新しいブログサイトとして「OddlySpecific.com」を運営しており、このサイトがWindows Azure上で動作しているという。オープンソースとその典型的な成功例といえるWordPressが、その対極にあるMicrosoftの新サービスにコミットしているというのも奇妙な構図だが、これもまた、Microsoftがクラウドへ注力していることを示す象徴的な姿だろう。
Windows Azureとともに、PDC09での興味深いテーマの1つが次世代のデータセンターだ。データセンターというと、膨大な数のサーバラックが並んでいる、空調とセキュリティが完備された巨大なビルを考えるが、最新データセンターはそうした“旧態然”のイメージから大きく変身している。
急増するデータ量への対応と、きめ細かいサービスの提供を目指し、GoogleやYahoo!といった企業は継続したデータセンターの拡充を迫られるが、Microsoftも例外ではない。特にWindows Azureのようなデータセンターをフル活用するクラウド製品が登場したことで、Microsoftはデータセンターの拡充に“急きょ”取り組むことになった。Windows Azureのサービス提供に向けてMicrosoftが発表したデータセンターの拡充計画では、北米のシカゴとサンアントニオの2カ所に存在するAzure向けの巨大データセンターに加えて、2010年には欧州でダブリンとアムステルダムの2カ所、アジアではシンガポールと香港の2カ所に同様のデータセンターを立ち上げる。全世界で従来の3倍の規模を用意することになる。
こうした巨大データセンターを短期間に設営するのは非常に困難でコストもかかるが、その問題を解決すべくMicrosoftで用意したのが同社の第4世代データセンターシステムだ。Microsoftが示した第4世代データセンターの姿は、データセンターというよりもコンテナの集積所に近い。1つ1つの“コンテナ”内部にはサーバやストレージ、ネットワークシステムのほか、電源や空調が設置され、これだけで小さなデータセンターとして機能する。この「ITPAC」と呼ばれるコンテナをつなぎ合わせることで巨大なデータセンターを短期間で設置できるのが第4世代データセンターの特徴だ。
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