「デジタルライフスタイルの未来はiPhoneにある」――フィル・シラーアップル上級副社長に聞く(1/4 ページ)

» 2009年11月26日 17時33分 公開
[林信行,ITmedia]

シンプルでパワフルな最新ラインアップ

9月9日にサンフランシスコで開催されたAppleの音楽イベントでのフィル・シラー氏(奥)とスティーブ・ジョブズ氏(手前)

フィル・シラー 今この部屋には、アップルが今年発表した新製品のほとんどが並んでいます。これらの製品を振り返ることは、我々が今年1年やってきたことを振り返り、クリスマスシーズンに向けてどんな品ぞろえを用意したか整理することにもなるでしょう。

 我々は今年も最高のラインアップを用意しました。まず、今年の夏に発表したアルミユニボディのMacBook Proですが、これは非常に頑丈でありながら薄くて軽量、LEDディスプレイやガラスのマルチタッチトラックパッド、そして本体と一体化することで長時間動作を実現したバッテリーといった特徴で注目を集めました。

ユニボディになったMacBook White

 それに加えて、最近お手ごろ価格になったMacBookでも、MacBook Proの特徴を取り入れながら、モダンで頑丈、かつ軽量なポリカーボネートのユニボディ筐体で生まれ変わりました。非常に細かいことですが、例えばUSB端子の内側をのぞき込むと、中が筐体色にあわせて白く塗られているのが分かります。こうした細部への気配りも、競合他社には見受けられないアップル製品ならではの特徴でしょう。

 そして新OSのMac OS X v10.6 “Snow Leopard”。ここに並んでいるMacは、すべてこの最新OSで動いていますが、このOSは、これまでで最も売れたMac OS v10.5 “Leopard”の2倍のペースで売れています。

2560×1440ドット表示の27型ワイド液晶を備えた新型iMac

 こちらは注目の新iMac。LEDバックライトの大型液晶を搭載し、ボディはガラスとアルミだけのシンプルな素材の組み合わせで生まれ変わりました。SDメモリーカードスロットを備え、キーボードとマウスは標準でワイヤレス仕様、これにより挿さなければならないケーブルは電源ケーブルただ1本だけになりました。

 27型モデルは、我々がこれまで作った中でも最大のLEDバックライト液晶ディスプレイです。これは大変なことですが、我々はすべての製品ラインアップで液晶をLEDバックライトでそろえることができました。実際にハイビジョンの映像を再生してみると、その品質の良さに驚かされます。新しいiMacは、どのモデルもIPSという技術を採用し、どの角度から画面を見ても色がきれいに見えるのも大きな特徴です。

全面マルチタッチ対応のMagic Mouse

 また、iMacに標準で付属するMagic Mouseも大好評です。マウスの上側全面がタッチセンサーになっており、どこでもクリックが可能で、右利き用にも左利き用にもソフトの設定次第で変更ができます。しかも、その上で指を滑らせて画面のスクロールができます。この時、指を勢いよく滑らせて離すと慣性でしばらく画面が360度好きな方向にスクロールし続けるのですが、実はこの自然に感じる操作1つを作るのにも、我々は非常に細かな調整をしています。

 さらに2本指のジェスチャーにも対応し、これによりiPhoneから広がったマルチタッチ操作が、ノート型Macだけでなく、デスクトップのMacにも広がりました。ここまでが今年のMacです(関連記事:Lynnfield搭載iMacと新デザインMacBook、Magicなマウスで奇襲をかけるアップル)。

―― 次はiPodですね。

フィル・シラー ええ。まずはiPod shuffleから。こちらは、まず新しい色を用意し、今回は新しい質感のものもそろえました。しかしそれ以上に大きな特徴は、この世界最小の音楽プレーヤーが、あなたに声で曲名を読み上げてくれるという点でしょう。

 続くiPod nanoも、美しく彩色されたアナダイズドアルミボディの美しい外装が特徴ですが、それに加えて新しくビデオ撮影ができるようになっています。もちろん、iPod touchも新しくなりました。より大容量になる一方で、より価格は下がり、人気のApp Storeのアプリ、特にゲームを最も手ごろに楽しめる商品となっています。

 そして大トリはもちろん、iPhone 3GSです。これは世界中で非常に大好評の製品です。我々はこの電話がソフトバンクの携帯電話の中でも、最も売れている携帯電話であることを誇りに思っています。これが我々の今年のラインアップです。

iPod shuffle(写真=左)。iPod nano(写真=中央)。iPhone 3GS(写真=右)

Windows 7登場後も新規ユーザーは加速

―― 新しいラインアップは、Macをすでに持っていたり、知っている人には、非常に悩ましいラインアップですが、一方で、これからMacを使い始める人には、価格重視の人、快適さ重視の人といった、さまざまなセグメントに際立ったモデルが用意されていて非常に買いやすいのではないかと思います。

フィル・シラー 我々は常に、製品ラインアップはシンプルで分かりやすいことが何よりも重要だと考えてきました。やたらと製品を増やしたり、数字だらけの型番を製品名に使ったり、むやみに構成を増やしたりといったことは、あまりよくないと思っていますが、我々の競合メーカーは今でもそうしたことをやり続けています。

 多くのメーカーは、非常に複雑なラインアップと、多すぎる製品バリエーションを用意して、どれが自分にふさわしいか顧客を迷わせていますが、我々はそうしたことはしません。

―― 実際、そうした方針によって新しくMacを使い始める人が増えているのでしょうか?

フィル・シラー ええ。WindowsからMacに乗り換える「スイッチャー」増加の勢いは衰えていません。いや、それどころか実際のところ、以前より加速しています。最近ではマイクロソフトの新OS、Windows 7のリリースもありましたが、それでも販売ペースが落ちることはありませんでした。

―― 実際のところWindows 7の影響はどんな感じだったのでしょう?

フィル・シラー それを語るにはまだ少し時期尚早ですが、ここまでのデータを振り返ると、ペースダウンどころか、Windows 7発売後もMac販売の勢いが加速している印象があります。というのも、WindowsからMacへ乗り換える人たちが挙げる(スイッチの)魅力は、Windows 7が出た後でもまったく変わらずそのままだからです。それどころか、これまでWindows XPを使っていた人にとっては、Macのほうが魅力的なアップグレード先になっている、という側面もあるようです。

 というのは、我々の最新OSであるSnow Leopardは、前バージョンの成功を受け、人々がLeopardで気に入っている部分を、洗練させたり、魅力を伸ばしたりする方向で開発しました。これに対してマイクロソフトは、洗練させようとしてもWindows Vistaという前OSが破たんしてしまっていたので、それができません。

 それではVistaにアップグレードせずにいたWindows XPユーザーなら(Windows 7への移行に)問題はないでしょうか。実は彼らは一度HDDのデータを消去してからでないとアップグレードできない、という問題を突きつけられたのです。これはユーザーにとってうれしいことではありません。

 それに加え、持っているPCがWindows 7のハードウェア要求を満たしていないため、マシンそのものも買い替えなければいけない、というユーザーも多いようです。そこで顧客は、HDDのデータを抹消して先に進むか、今のハードウェアはそのままにして(新しいOSのための)新しいハードウェアを購入するか、あるいはいっそのことMacに乗り換えてみようかと迷い始めるのではないでしょうか。

 そこでふと考えるのです。「なんでWindowsじゃなくってMacなのか」と。そして思い浮かぶのが、Windowsで日々つきつけられるセキュリティ問題やウイルス問題といったものにも向き合う多大な労力。また、WindowsだとハードウェアもOSも使っているアプリケーションもバラバラの別の会社が作っていて、何か問題があった時にはどこが責任を取ってくれるのか分からないという事実を思い出します。これらの状況はWindows 7の登場をもってしてもまったく変わっていないことに気がつくのです。

 一方Macはといえば、アップルが1社で責任を持って、工業デザインからハードウェア技術、OS開発まで行っています。そう考えると、Windows 7の登場後のMacは、これまでと同様、あるいはこれまで以上に、顧客の目に有望な選択肢として映るのではないかと思います。

―― それは米国だけのことでしょうか? それともグローバルな話ですか?

フィル・シラー これはグローバルな傾向です。

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