2008年11月に、ハイエンドデスクトップPC向けにデビューしたインテルのNehalemマイクロアーキテクチャだが、それから10カ月が経過してようやくノートPC向けにも登場した(→参考記事・NehalemがノートPCでも使えるぞ──“Clarksfield”Core i7発表)。Clarksfieldという開発コード名で呼ばれてきたこのCPU、正式にはCore i7-920XM、Core i7-820QM、Core i7-720QMの3製品として入手可能になったわけだ。
しかし、それから3カ月弱が経過した2009年12月現在も、Core i7を搭載したノートPCの種類は潤沢ではない。主流はショップブランドで販売されるホワイトボックス系で、大手PCベンダー製となるとデル(Studio 15やStudio XPS 16、およびAlienware M15x)と日本ヒューレット・パッカード(Pavilion Notebook PC dv7)くらいしか選択肢が存在しないのが現状だ。しかも、いずれも直販専用モデルであり、店頭で気軽に買うことができない。
全出荷PCの7割前後がノートPCというわが国では、デスクトップPCの多くがノートPCに置き換えられているものと思われる。にもかかわらず、こういった高性能CPUを搭載したノートPCへの需要が盛り上がらないのはなぜだろうと考えてしまうのは筆者だけではないはずだ。Nehalemマイクロアーキテクチャを採用したノートPCが普及するのは、2010年1月と言われるArrandale(開発コード名)の登場を待つしかないのだろうか。
ここで紹介するのは、日本HPの「HP Pavilion Notebook PC dv7/CT」(カスタマイズ冬モデル)だ。13万9650円の標準構成モデル(CPUはCore i7-720QM)に対し、評価機はCPUをCore i7-820QMにアップグレード、メモリを4Gバイト、ストレージも標準の320GバイトHDD(7200rpm)から128GバイトSSD+500GバイトHDD(7200rpm)に強化した、ハイエンド構成となっている。この構成でも価格は22万6800円(配送料別)であり、ハイエンドノートPCも安価になったものだと痛感する。
右の表に示したのは、標準構成に含まれるCore i7-720QMと、原稿執筆時点においてプラス3万6750円のオプションとなるCore i7-820QMの仕様を比較したものだ。Core i7-820QMは3次キャッシュの容量が増大しているだけでなく、2コア動作時には動作クロックが最大400MHzも異なることになる。
CPU | 共有3次キャッシュ | 定格クロック | LFM |
---|---|---|---|
Core i7-720QM | 6Mバイト | 1.6GHz | 0.933GHz |
Core i7-820QM | 8Mバイト | 1.73GHz | 1.2GHz |
TurboBoost | 4コア | 3コア | 2コア | 1コア |
---|---|---|---|---|
Core i7-720QM | 1.73GHz | 1.73GHz | 2.4GHz | 2.8GHz |
Core i7-820QM | 2.0GHz | 2.0GHz | 2.8GHz | 3.06GHz |
一方、Core i7-720QMはLFM(Low Frequency Mode:SpeedStepでクロックダウンしたときの動作クロック)が0.933GHzと低いことから、アイドル時の消費電力も低いことが期待される。本機は総重量3.38キロ(カタログ値)のノートPCだから、バッテリー駆動時間は大きな問題ではないが、ファンの回転を抑制するという点では効果があるかもしれない。
日本HPのBTOオプションでは、提供されるメモリ構成は2GバイトDIMMが1枚、あるいは2枚の構成(PC3-8500 DDR3 SDRAM)だが、仕様的には4GバイトDIMM 2枚の8Gバイトが最大メモリ搭載量となる。ただし、日本HPが提供するOSが現状では32ビット版のWindows 7 Home Premiumに限られており、大容量メモリを活用することは難しい。
このCPUと組み合わせるチップセットは、現状で唯一のCore i7向けモバイルチップセットとなるインテルのIntel PM55 Expressだ。この世代ではグラフィックス機能はチップセットではなく、CPUに統合されることになるが、Clarksfieldはグラフィックス機能を持たないため、外付けグラフィックス(GPU)を用いることが必須となる。
本機が採用するGPUは、NVIDIAのGeForce GT 230Mだ。48個のシェーダプロセッサ(CUDAコア)を持つパフォーマンスセグメント向けのモバイル向けGPUで、1Gバイトの専用グラフィックスメモリ(DDR3)を搭載する。40ナノメートルのプロセスにより製造されており、高性能と低消費電力の両立を図っている。
液晶ディスプレイは、画面解像度が1600ドット×900ドット表示の17.3型ワイドで、表面に光沢のあるタイプだ。本機に用意されているディスプレイはこの1種類のみで、フルHD解像度をサポートするオプションはない。ディスプレイサイズが大型化したことで、かえって視野角の狭さが気になる部分があるが、これは本機に限ったことではなく、ほぼすべてのノートPCに該当する。
評価機のメインストレージは、上述したようにオプションとして提供される128GバイトのSSDと500GバイトのHDDの組み合わせだが、500Gバイト×2という選択肢も用意される。Webサイトでは、それぞれ高速SSD、高速HDDと表記されており、標準の320GバイトHDDに対し、プラス4万2000円の追加が必要となる。評価機ではSSDとしてSamsungのMMCRE28G5MXP-0VB(MLC 128Gバイト)が、HDDとしてSeagateのST9500420AS(7200rpm)が使われていた。
ストレージのうち光学ドライブはDVDスーパーマルチ機能を備えたBD-ROMドライブ(BDコンボドライブ)を標準内蔵する。評価機には日立LGデータストレージ製のBDDVDRW CT10Lが使われており、GPUのGeForce GT 230Mが備える動画再生支援機能(PureVideo HD)と合わせて、安定したBlu-ray Discの再生機能を提供する。サウンド機能もAltec Lansingブランドのステレオスピーカーに加え、底面にはHPトリプル・バス・リフレックス・サブウーファーを搭載するなど充実している。もちろん、内蔵するHDMI端子を経由して映像と音声を、大画面テレビや大型ディスプレイに出力することが可能だ。
Blu-ray Discの再生、サブウーファーをも備えたサウンド機能となると、気になるのは利用時のファンノイズだ。外付けGPUやハイエンドのCPU、7200rpmのHDDなど、発熱するパーツには事欠かない本機だが、音量的にも音質的にも意外と冷却ファンのノイズは気にならない。ボディが414(幅)×278(奥行き)×33〜46(厚さ)ミリと大きく、大型のヒートシンクが使えること、質量の大きいボディによるノイズをダンプする効果などが寄与しているのだろう。冷却ファンは電源投入で回転を始め、常時回転しているが、これはBIOSセットアップのデフォルト設定に従ったもの。BIOSセットアップの設定を変更することで低消費電力時にはファンの回転を抑えることも可能だ。
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