フォトレタッチや動画編集、2D/3Dグラフィックスといったクリエイティブワークを主眼に置いたときに、最もこだわりたいのは、やはり画質と解像度だ。
特に画質は、色域の広さ、色再現性の高さ、階調表現の正確さなど、高いレベルが要求される。また、クリエイティブワーク向けの高機能なアプリケーションは、画面上に多彩なツールパレットを表示する場合が多いため、高解像度であるほど多くのツールエリアやワークエリアを確保できて使いやすい。
こうした環境を想定したEIZOの高品位ワイド液晶ディスプレイが「FlexScan SX」シリーズだ。今回はその中でも新モデルの「FlexScan SX2262W」に注目したい。
その魅力は、22型ワイドという比較的小型の画面サイズで、WUXGA(1920×1200ドット)の高解像度を実現したことだ。WUXGAの画面解像度を備えた製品は24型クラスがほとんどだが、設置スペースの都合で導入を断念していたユーザーも少なからずいるだろう。
SX2262Wならば、従来のWSXGA+(1680×1050ドット)モデルと同じ22型ワイドの画面サイズで、約1.3倍の情報量となるWUXGAを高精細に表示できる。フルHD(1920×1080ドット)と比較しても、縦の解像度が広がるので、作業効率は高まるはずだ。
SX2262Wは高解像度でコンパクトに設置できるという、まさに日本の住宅事情にマッチした製品なのだ。
続いて高画質を支える数々の機能を見ていこう。FlexScan SXシリーズはEIZOが誇るカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge」シリーズの弟分に位置付けられるラインアップなので、ColorEdgeに次ぐ高画質を実現している。
まずは色域の広さに着目したい。Adobe RGBカバー率95%、NTSC比92%という広色域は、このサイズの液晶ディスプレイではトップクラスだ(多くの製品はNTSC比72%程度)。Adobe RGBモードで撮影したデジカメ写真の編集や、NTSCベースの動画編集なども、高い色再現性で作業できる。最終出力までの作業効率も短縮されるだろう。
さらに、色空間変換機能によってsRGB色域を正確に再現できるため、Webコンテンツの制作など、sRGBベースの製作環境にも対応できるのが頼もしい。写真の編集や印刷はAdobe RGBで、Webへの転載はsRGBで、といったように用途別に最適な色域を選択できる液晶ディスプレイは少なく、SX2262Wの大きな強みといえる部分だ。
インタフェースはデジタル/アナログ両対応のDVI-Iを2系統(デジタル接続はHDCP対応)備えることに加えて、DisplayPortの採用に注目したい。DisplayPortは10ビット入力に対応しており、グラフィックスカードやアプリケーションなどの環境を整えれば、最大約10億7374万色もの表示を実現できる。8ビット環境と10ビット環境の違いは、下記の記事で詳しく検証しているので、併せてチェックしてほしい。
また、12ビットのLUTを搭載し、8ビット表示のDVI接続では約680億色中から最適な約1677万色、10ビット表示となるDisplayPort接続では約680億色中から最適な約10億7374万色を表示できる。最近は10ビットのLUTを持つ製品が増えたが、12ビットのLUTではさらに高精度な階調表現が可能だ。
独自のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」にも対応し、黒に近いグレー、低彩度や低明度のカラーといった微妙な階調を判別できるのも、クリエイティブワークにとって心強い。
そのほかにも、ColorEdgeから数々の高画質化機能を継承しているのは見逃せない。簡単に列挙すると、画面全体で輝度/色度の均一性を高める「デジタルユニフォミティ補正回路」、電源オンから短時間で輝度を安定させる「輝度ドリフト補正」、経時変化による輝度変化を常に補正する「ブライトネス自動制御」、周辺の温度で画面の色度が変化するのを抑制する「温度センシング」、輝度変化に伴う色度変化を抑制する「色度補正」などを搭載している。広色域パネルや12ビットのLUTとともに、どんな環境でも安定した高画質で使える安心感が手に入るのはありがたい。
動画の表示に関しても、画面の明るさに応じてメリハリを効かせる「コントラスト拡張」や「輪郭補正」、中間調の応答速度6msを実現する「オーバードライブ回路」が備わっている。静止画のワークフローはもちろん、モーショングラフィックスや動画編集においても、その高画質をフルに発揮してくれるに違いない。低価格な製品には望むべくもない機能が満載で、高画質化機能のカタマリといえる1台だ。
クリエイティブワーク用のディスプレイを設置するスペースに余裕があるならば、画面サイズが24.1型ワイドの「FlexScan SX2462W」もおすすめだ。解像度はSX2262Wと同じWUXGAだが、画面サイズが一回り大きいぶん、画面上の文字やアイコンなどが大きく表示されて視認性がよい。画像編集などでドット単位やそれに近い精密な作業を行うときには、高解像度とともに画面サイズも大きいほうが使いやすいものだ。
12ビットのLUT、10ビット入力に対応したDisplayPortインタフェース、デジタルユニフォミティ補正回路や輝度ドリフト補正といった高画質機能は、FlexScan SXシリーズで共通化されている。SX2262Wに比べると、スペックに若干の違いがあり、輝度、コントラスト比、応答速度などが微妙に異なるが、これらの要素はクリエイティブワークを左右するほどの影響はないだろう。
ただし、液晶パネルと色域の違いは覚えておきたい。まず液晶パネルだが、VA系のSX2262Wに対して、SX2462WはIPS系だ。一般にIPS系の液晶パネルは視野角特性がVA系よりさらに優れており、画面をかなり斜めから見ても、発色(色度)がほとんど変化しない。
FlexScanが採用するVA系の液晶パネルは視野角特性がよいため、少しぐらい斜めから画面を見ても発色の違いは気にならないが、広い範囲で色をチェックしながらのレタッチや、映像を再生して複数人で全体的な色をチェックするようなシーンでは、IPS液晶パネルの広視野角が生きてくることもありそうだ。
SX2462Wは色域も広く、Adobe RGBカバー率98%、NTSC比102%を誇る。Adobe RGBモードで写真を撮影しても、色域の限界までカラーを使い切ることは滅多にないため、実質的にAdobe RGBのほぼすべての色を再現可能と思ってよいだろう。大画面で厳密なカラー作業を行いたいユーザーや、広色域や広視野角に魅力を感じるユーザーはSX2462Wが最適だ。
SX2262Wほどの高画質化機能は求めないが、22型ワイドの画面サイズとWUXGAの高解像度が欲しいというユーザーには、「FlexScan S2242W-H」を推したい。各種の高画質化機能やDisplayPorを装備しないぶん、比較的手ごろな価格で購入できる。
スペックは十分に高く、VA系の液晶パネルを採用し、色域はSX2262Wと同等のAdobe RGBカバー率95%、NTSC比92%と広い。10ビットのLUTも搭載し、EIZO独自のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」にも対応済みだ。最大輝度とコントラスト比はS2242W-Hが上回っており、応答速度がSX2262Wと同様に高速な点からも、動画やゲームの表示に強い。
FlexScan SXシリーズがクリエイティブワーク向けの高画質指向ならば、S2242W-Hはより幅広い一般ユーザー向けのモデルといえる。輝度をかなり低く設定できたり、Auto EcoViewやEcoView Indexに対応し、縦位置表示が可能なSX2462Wと同じスタンドを採用するなど、SX2262Wの下位に位置するモデルながら、細かい使い勝手は申し分ない。
FlexScan SX2262W/SX2462W/S2242W-Hの主なスペック | ||||
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製品名 | FlexScan SX2262W | FlexScan SX2462W | FlexScan S2242W-H | |
ボディカラー | ブラック、セレーングレー | ブラック、セレーングレー | ブラック、セレーングレー | |
画面サイズ | 22型ワイド(56センチ) | 24型ワイド(61センチ) | 22型ワイド(56センチ) | |
画面解像度 | 1920×1200ドット | 1920×1200ドット | 1920×1200ドット | |
液晶パネル種類 | VA | IPS | VA | |
最大表示色 | 約10億7374万色:10ビット対応(DisplayPort)、約1677万色:8ビット対応(DVI) | 約10億7374万色:10ビット対応(DisplayPort)、約1677万色:8ビット対応(DVI) | 約1677万色:8ビット対応 | |
内部演算処理/ガンマ補正 | 約680億色中/12ビットLUT | 約680億色中/12ビットLUT | 約10億6433万色中/10ビットLUT | |
広色域表示 | Adobe RGBカバー率95%、NTSC比92% | Adobe RGBカバー率98%、NTSC比102% | Adobe RGBカバー率95%、NTSC比92% | |
デジタルユニフォミティ補正回路 | ○ | ○ | − | |
温度センシング・輝度変化に伴う色度補正 | ○ | ○ | − | |
輝度ドリフト補正・輝度自動制御 | ○ | ○ | ○ | |
コントラスト拡張・輪郭補正 | ○ | ○ | − | |
オーバードライブ回路 | ○ | ○ | ○ | |
FineContrast | Text、Picture、Movie、sRGB、User1、User2、User3 | Text、Picture、Movie、sRGB、User1、User2、User3 | Text、Picture、Movie、sRGB、Custom | |
Auto FineContrast | ○ | ○ | ○ | |
拡大モード(スケーリング) | フルスクリーン、拡大、ノーマル | フルスクリーン、拡大、ノーマル | フルスクリーン、拡大、ノーマル | |
Power Resolution | − | − | − | |
Power Gamma | − | − | − | |
EcoView Sense | − | − | − | |
Auto EcoView | ○ | ○ | ○ | |
EcoView Index | ○ | ○ | ○ | |
EIZO EasyPIX | ○ | ○ | ○ | |
EIZO ScreenSlicer | ○ | ○ | ○ | |
UniColor Pro | ○ | ○ | − | |
視野角 | 上下178度/左右178度 | 上下178度/左右178度 | 上下178度/左右178度 | |
輝度 | 280カンデラ/平方メートル | 270カンデラ/平方メートル | 350カンデラ/平方メートル | |
コントラスト比 | 1000:1 | 850:1 | 1200:1 | |
応答速度:黒→白→黒 | 12ms | 13ms | 12ms | |
応答速度:中間階調域 | 6ms | 5ms | 6ms | |
映像入力 | DVI-I(HDCP対応)×2、DisplayPort×1 | DVI-I(HDCP対応)×2、DisplayPort×1 | DVI-D(HDCP対応)×1、D-Sub×1 | |
音声入力 | − | − | ステレオミニ×1 | |
音声出力 | − | − | ヘッドフォン×1 | |
スピーカー | − | − | 500ミリワット+500ミリワット | |
USB機能 | USB 2.0アップ×1、ダウン×2 | USB 2.0アップ×1、ダウン×2 | USB 2.0アップ×1、ダウン×2 | |
スタンド機構 | FlexStand(昇降:174ミリ/チルト:上30度/スイベル:左右各172度) | ハイトアジャスタブルスタンド(昇降:82ミリ/チルト:上40度/スイベル:左右各35度) | ハイトアジャスタブルスタンド(昇降:82ミリ/チルト:上40度/スイベル:左右各35度) | |
縦位置表示 | ○(右回り90度) | ○(右回り90度) | ○(右回り90度) | |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 511×240.5〜256×347.5〜521.5ミリ | 566×230×456〜538ミリ | 511×208.5×439〜521ミリ | |
重量 | 約9.6キロ | 約10.7キロ | 約9.6キロ | |
EIZOダイレクト価格(税込) | 6万9800円 | 10万4800円 | 5万9800円 | |
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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年3月31日