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第1回 キヤノン「PIXUS」の売れ筋プリンタ3台を比較するプリンタ09-10年モデル徹底検証(2/5 ページ)

» 2009年12月18日 18時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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「PIXUS MP640」――ベストセラー機の血を引く“いいとこ取り”モデル

 PIXUSの複合機で最も人気が高く、キヤノンも売れ筋モデルに位置付けているのがPIXUS MP640だ。2008年は、出力性能の高い「PIXUS MP630」、無線/有線LAN機能を標準装備した「PIXUS MP620」の2台をラインアップしていた。どちらもニーズを押さえたラインアップといえるが、ユーザーによってはどちら付かずで手を出しにくいところもあったのだろう。こうした層のために2009年は両機を統合し、MP640として一本化してきた。

未使用時の状態(写真=左)と使用時の状態(写真=右)。MP990とよく似たボックス型デザインだが、少し小さい。量販店での実売価格は2万5000円前後

 プリントエンジンは染料のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに顔料のブラックを加えた5色構成。インク滴のサイズは最小1ピコリットルというPIXUS複合機でおなじみの仕様となっている。出力速度に影響するノズル数は、合計で4416ノズルとMP990に次ぐ多さだ。MP630からすれば据え置きだが、MP620(2368ノズル)から見れば、プリントスピードが格段に増すとともに、自動両面印刷が可能になったことになる。

 液晶モニタのサイズは従来の2.5型から3.0型に引き上げられ、高い視認性を確保。MP990と同様、イージースクロールホイールに十字キーを統合した改良型の操作パネルによって、分かりやすく簡便な操作性を実現している。

 スキャンエンジンはセンサーがCIS、光学解像度が4800×9600dpiとMP630から変更はない。速度も違いは感じられないので、昨年のままと見てよいだろう。MP620(2400×4800dpi)からは解像度がアップしたことになる。

 そのほか、2系統給紙やCD/DVDレーベル印刷機構も備えている。MP630に比べて利便性が向上し、MP620に比べてプリント/スキャンエンジン性能が向上したことで、“いいとこ取り”の製品になった。かつて上位モデルとして存在したMP800系に比肩する豪華な仕様ながら、価格はMP620とほぼ同等(発売時)に抑えられており、トータルバランスに優れた1台だ。

インクは染料4色と顔料ブラックの5色構成で、3サイズのインク滴を打ち分ける高速エンジンは健在だ
スキャナは光学4800dpiのCISセンサーを搭載。MP990とは異なり、フィルムスキャンには対応しない
液晶モニタは3.0型に大きくなった。チルト角度の調整も可能。操作パネルはホイールと十字キーを一体化した

ボディ右下のカバーを開くと、3スロット構成のマルチカードリーダーが現れる。PictBridge対応のUSBポートも搭載する
前面カセットと後部トレイによる2系統給紙機構はMP990と同様だ。前面カセットは未使用時に本体内に完全に収納できる
CD/DVD/BDレーベル印刷もサポート。MP990と同様、レーベル印刷時は付属のトレイを手動でセットする仕様だ

「PIXUS MP560」――必要十分な機能と価格に配慮したお買い得モデル

 PIXUS MP560はPIXUS複合機でミドルレンジに位置するモデルだ。PC USERの2008年プリンタ特集ではMP500系を紹介しなかったが、2009年はMP600系がMP640に一本化されたため、上位3番手に浮上してきたMP560を取り上げることにした。

未使用時の状態(写真=左)と使用時の状態(写真=右)。ボックス型デザインは共通だが、操作パネルを右側に設けている。量販店での実売価格は2万円前後

 「PIXUS MP540」の後継機となるミドルレンジモデルだが、MP560の基本スペックはMP640にそれほど引けを取らない。顔料ブラックを加えた5色インクと、FINEによる1ピコリットルの極小インク滴によって、画質面では比肩している。ノズル数は合計2368とMP640の半分程度なので、さすがにプリントスピードではおよばないが、L判フチなしプリントが30秒程度で出せることから、ストレスを感じるほどではない。

 スキャンエンジンは光学解像度が2400×4800dpiで、MP600系よりもやや落ちる。入出力の深度はMP640と同じで、モノクロが16ビット/8ビット、カラーは48ビット/24ビットに固定となっている。フィルムスキャンが可能なMP990よりは劣るものの、コピーや書類のスキャン程度が主な用途ならば、恐らく不満は感じないだろう。

 また、この価格帯で2系統給紙、自動両面印刷、無線LANといった機能を備えるのも大きな特徴といえる(CD/DVDレーベル印刷や有線LAN、赤外線通信は非対応)。無線LANのセットアップは、上位機と同様にAOSSに対応しており、設定に戸惑うこともない。

 一方、上位機と差が付けられている部分が操作パネルだ。天面の右側に小さく配置され、液晶モニタは2.0型にとどまるので、少し窮屈な印象を受ける。ただし、十字キーと一体化したイージースクロールホイールや設定メニューは上位機と共通化されているため、PIXUS複合機らしい使い勝手は維持している。

 MP560は求めやすい価格帯の無線LAN付きPIXUS複合機として注目できる1台だ。なお、MP560の下位には、自動両面印刷と無線LANの機能を省いた「PIXUS MP550」が用意されている。MP560とMP550の関係は、2008年のMP630とMP620の関係に似ているが、プリントエンジンは同じなので、取捨選択がしやすいだろう。

インクはMP640と同様、染料4色と顔料ブラックの5色構成を採用する。ただし、ノズル数はMP640より少ない
スキャナは光学2400dpiのCISセンサーを搭載し、フィルムスキャンには非対応だが、十分な解像度といえる
天面右側に縦位置で配置された操作パネル。液晶モニタは2.0型と小さめだが、ボタンやメニューの構成は変わらない

3スロット構成のマルチカードリーダーとPictBridge対応USBポートは上位機と共通だ。ただし、有線LANや赤外線ポートは用意されない
上位機と同様、前面カセットと後部トレイによる2系統給紙機構を用意。自動両面印刷機能も備えている。CD/DVD/BDレーベル印刷は行えない

 ここで紹介した3モデルの主な仕様を下表にまとめた。

PIXUS複合機新モデルの主な仕様
モデル名 MP990 MP640 MP560
キヤノン直販価格 3万9980円 2万9980円 2万1980円
量販店実売価格 3万5000円前後 2万5000円前後 2万円前後
液晶モニタ 3.8型 3.0型 2.0型
インク 染料5色+顔料Bk(独立) 染料4色+顔料Bk(独立) 染料4色+顔料Bk(独立)
ノズル数 C/M/Gy×各1536ノズル、Y/染料Bk/顔料Bk×各512ノズル C/M×各1536ノズル、Y/染料Bk×各512ノズル、顔料Bk×320ノズル C/M×各768ノズル、Y/染料Bk×各256ノズル、顔料Bk×320ノズル
印刷最高解像度 9600×2400dpi 9600×2400dpi 9600×2400dpi
最小インク滴 1ピコリットル 1ピコリットル 1ピコリットル
スキャナ 4800×9600dpi(CCD) 4800×9600dpi(CIS) 2400×4800dpi(CIS)
フィルムスキャン 35ミリスリーブ×6、マウント×4
メモリカードリーダー CF、SD、MS、MS Duo(xDは要アダプタ) CF、SD、MS、MS Duo(xDは要アダプタ) CF、SD、MS、MS Duo(xDは要アダプタ)
PictBridge
赤外線
PC接続インタフェース 100BASE-TX有線LAN、IEEE802.11b/g無線LAN、USB 2.0、Bluetooth(オプション) 100BASE-TX有線LAN、IEEE802.11b/g無線LAN、USB 2.0、Bluetooth(オプション) IEEE802.11b/g無線LAN、USB 2.0、Bluetooth(オプション)
給紙機構 後部トレイ、前面カセット(普通紙専用) 後部トレイ、前面カセット(普通紙専用) 後部トレイ、前面カセット(普通紙専用)
排紙機構 前面トレイ 前面トレイ 前面トレイ
給紙容量 前面カセット150枚、後部トレイ150枚(はがき40枚) 前面カセット150枚、後部トレイ150枚(はがき40枚) 前面カセット150枚、後部トレイ150枚(はがき40枚)
自動両面印刷
CD/DVD/BDレーベル印刷
L判フチなし印刷速度(公称値) 約17秒 約17秒 約33秒
L判フチなし印刷コスト(公称値) 約19円 約17.1円 約16.7円
サイズ(幅×奥行き×高さ) 470×385×199ミリ 450×368×176ミリ 453×368×160ミリ
重量 約10.7キロ 約8.8キロ 約8.1キロ
※L判印刷速度/コストは「GL-101」使用時。コストはインク代+用紙代の合計

 次のページでは、3モデルの使い勝手や機能をもう少し詳しく見ていこう。

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