ここからは画質を見ていこう。プリンタエンジンの仕様は下表の通りで、どれも独立式インクカートリッジを採用する。最小インク滴は1〜1.5ピコリットルと非常に微細で、写真用紙への高画質設定でカラー印刷した場合、インク滴の粒状感が気になるようなシーンはまずない。
インクシステムについては、MP990、MP640、MP560、C309Gが、写真印刷用の染料ブラックと普通紙テキストへの印刷が映える顔料ブラックの2つのブラックインクを搭載。さらにMP990は写真印刷の階調を整え、モノクロ写真印刷でニュートラルなグレーが表現できる染料グレーインクを用いているのがポイントだ。
一方、EP-902A、EP-802A、EP-702Aは顔料ブラックインクやグレーインクを装備しないが、淡い色のライトインクを2色(ライトシアン、ライトマゼンタ)備えることで、写真印刷の階調性や描写力を高めている。
プリンタ部の仕様 | ||||
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製品名 | インク | ノズル数 | 印刷最高解像度 | 最小インク滴 |
MP990 | 染料5色+顔料Bk(独立) | C/M/Gy×各1536ノズル、Y/染料Bk/顔料Bk×各512ノズル | 9600×2400dpi | 1ピコリットル |
MP640 | 染料4色+顔料Bk(独立) | C/M×各1536ノズル、Y/染料Bk×各512ノズル、顔料Bk×320ノズル | 9600×2400dpi | 1ピコリットル |
MP560 | 染料4色+顔料Bk(独立) | C/M×各768ノズル、Y/染料Bk×各256ノズル、顔料Bk×320ノズル | 9600×2400dpi | 1ピコリットル |
EP-902A | 染料6色(独立) | C/M/Y/Bk/LC/LM×各180ノズル | 5760×1440dpi | 1.5ピコリットル |
EP-802A | 染料6色(独立) | C/M/Y/Bk/LC/LM×各180ノズル | 5760×1440dpi | 1.5ピコリットル |
EP-702A | 染料6色(独立) | C/M/Y/Bk/LC/LM×各180ノズル | 5760×1440dpi | 1.5ピコリットル |
C309G | 染料4色+顔料Bk(独立) | C/M/Y/染料Bk×各672ノズル、顔料Bk×720ノズル | 9600×2400dpi | 1.3ピコリットル |
以下に、これまで掲載した印刷サンプルをまとめた。各モデルの画質設定やプリントメディアなどの情報は、本特集のバックナンバー(下記のリンク)を参照してほしい。
まずは、PCから最高画質設定でメーカー純正ハイグレード写真用紙L判に出力したサンプルを並べた。7モデルを見比べてみると、キヤノン機は高彩度ながら素材の持ち味を生かした描写、エプソン機は階調性を保ちつつもメリハリを多少付けた描写、HPのC309Gは明るくあっさりした描写となった。
C309Gはほかの6モデルより画質で少々劣るが、こうして並べてじっくり見なければ、さほど気にならない。写真作品を作り込むような用途には向かないが、フォトフレームに入れてリビングルームに飾ったり、イベントの写真などを印刷して出席者に配布するような一般用途では十分使える。
今回のサンプルでは、グレーインク搭載のMP990が最も静物の質感をよく再現できた。MP640とMP560も自然な描写で印象がいい。もっとも、彩度やシャープネスなどの画調の違いは好みもあるので、色がどっしりのって、エッジも立ったEP-902A、EP-802A、EP-702Aのほうが良好な出力結果と評価する人も多いだろう。より素材に忠実な印刷結果が得たければ、ドライバの色補正方法を「Adobe RGB」や「EPSON基準色」に変更するという手段もある。
なお、印刷に使用したキヤノンの「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」とエプソンの新型「写真用紙クリスピア<高光沢>」は登場したばかりで、ともに紙質が高く、プリンタ側の高い印刷性能と合わせて、プリントの仕上がりがよかった。
日本HPは最上位写真用紙として「プレミアムプラスフォト用紙」を用意しているが、プリントエンジンは以下のサンプルで使用した「アドバンスフォト用紙」に最適化されている。プレミアムプラスフォト用紙の紙質は他社の最上位写真用紙ほどではないため、そろそろリニューアルしていいころではないだろうか。
次にA4普通紙カラーコピーの画質をチェックする。標準モードでの画質はどれも不満がない仕上がりだ。写真用紙への印刷ではやや苦戦したC309Gだが、普通紙への印刷はコントラスト感が高くて見栄えがする。顔料ブラックインクを搭載したMP990、MP640、MP560、C309Gは普通紙印刷の耐水性が高く、にじみの少ないシャープな黒が得られるのも見逃せない。
染料6色インクのEP-902A、EP-802A、EP-702Aは写真用紙への印刷が得意だが、普通紙へのカラーコピーや文書印刷では黒の締まりが少々控えめだ。ただし、EP-902AとEP-802Aはコピー原稿内の情報をイメージ部分とテキスト部分に分類し、それぞれ最適な自動処理を行う「領域判定コピー」技術により、コピー品質を高めている。
高速モードでのA4普通紙カラーコピーは、機種ごとに差が開いた。EP-902A、EP-802A、EP-702Aのエコノミーモードは色が少しのっているだけなので、印刷範囲の確認用くらいにしか使えないだろう。これら3モデルは標準モードを常用すべきだ。
MP990、MP640、MP560、C309Gは高速モードでも内容を十分判別できる。配布用に使ったり、写真が多い原稿をコピーするのには向かないが、画質を求めない原稿のコピーであれば、普段から実用できるレベルにある。
スキャナ部の主な仕様も下にまとめた。各モデルの画質設定などの情報は、本特集のバックナンバー(下記のリンク)を参照してほしい。
スキャナに最も力を入れているMP990は、被写界深度の深いCCDセンサーを採用しており、多少の立体物や製本された書物の閉じ部なども美しくスキャンできるうえ、35ミリフィルムのスキャンも可能だ。ほかの6モデルはCISセンサーを使ったもので、反射原稿のスキャンのみに対応する。光学解像度はEP-702Aが1200dpiと低めだが、反射原稿のスキャン用としては必要十分だ。
下に並べたのは、基本的にデフォルトのままでスキャンした画像だが、忠実な色で取り込むのが難しいサンプルを使ったこともあり、高い再現性が得られたのはEP-902AとEP-802Aくらいだった。キヤノン機とエプソン機はTWAINドライバの調整機能が充実しているため、スキャンする原稿に応じて設定をカスタマイズしやすい。C309Gのスキャン機能は、そこまで充実していない。
スキャナ部の仕様 | |||
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製品名 | センサー | 光学解像度 | フィルムスキャン |
MP990 | CCD | 4800×9600dpi | 35ミリスリーブ×6、マウント×4 |
MP640 | CIS | 4800×9600dpi(CIS) | − |
MP560 | CIS | 2400×4800dpi(CIS) | − |
EP-902A | CIS | 4800×4800dpi | − |
EP-802A | CIS | 2400×4800dpi | − |
EP-702A | CIS | 1200×2400dpi | − |
C309G | CIS | 4800×4800dpi | − |
次のページでは、プリントとコピーの速度にフォーカスする。
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