既報の通り、正式発表されたGPU内蔵型の新CPUことClarkdale。この最新CPUをいち早く搭載したのがマウスコンピューターの「MDV-ADS7110B」だ。CPUにIntel Core i5-650(3.2GHz)、グラフィックスにGeForce GTS 250、OSに64ビット版のWindows 7 Home Premiumを採用しながらも9万円程度という高いコストパフォーマンスを誇る。
まず最初にClarkdaleについて簡単に説明をしておこう。このClarkdaleは今後、メインストリームからミドルレンジ以下のCPUを担うことになっており、当初はIntel Core i5/Core i3/Pentium GといったCPUで展開される。Clarkdaleは2つのCPUコアに加えてGPUコアも1つのパッケージに詰め込んでいる点が特徴だ。そしてCPUコアの製造プロセスが45ナノから32ナノへと微細化したことにより、消費電力も低くなっている(ただしGPUの製造プロセスは45ナノ)。
内蔵するGPUは、従来のIntel Graphics Media Accelerator(いわゆるIntel GMAXXXX:X部分は型番)という呼称から、型番の付かないIntel HD Graphicsに変更された。性能的にもDirectX 10およびOpenGL 2.1対応やシェーダーモデル4.0(SM4.0)といった3Dグラフィックス性能の向上が図られている。ただし、この内蔵GPUを利用するためには、専用のチップセットIntel H57/H55/Q57が必要だ(今回試用したマシンのチップセットはIntel P55で内蔵GPUの利用はできない)。
なお、CPUコアは2つだがCore i5(Clarkdale)ではHyper−Threadingが有効になっているため、実行可能なスレッドは4つだ。物理コアが4つありHyper−Threadingが無効になっているLynnfield版のCore i5と実行可能なスレッド数は同じとなっている。
Lynnfield版のCore i5とClarkdale版のCore i5を詳細に比べるとかなり違いがあるのだが、両者を簡単に分類するとしたら、Lynnfield版は物理コアが4つでGPUを内蔵せず、それなりに消費電力があるCPUで、一方のClarkdale版は、物理コアは2つに減ったけれどHyper−Threadingが有効になって実行スレッド数は減らず、GPUを内蔵していてなおかつ低消費電力のCPU、と考えていい。
Clarkdaleの詳細については解説記事(参考:→“かっとび”GPUを統合した「Core i5-661」の実力を正式発表“前”に検証する)を参考にしてもらうとして、正式発表と同時にこのCPUを搭載した「MDV-ADS7110B」(以下、ADS7110B)をさっそく紹介していく。
今回試用したADS7110Bには、Clarkdale版Core i5/Core i3ではミドルレンジとなるCore i5-650(3.20GHz)が搭載されていた。動作クロックは3.2GHzでIntel Turbo Boost時には3.46GHzまでアップする。Lynnfield版Core i5で最上位となるCore i5-750は、定格クロックが2.66GHz、Intel Turbo Boost時が3.2GHzなので、動作クロックではミドルレンジのCore i5-650のほうが高くなっている。
また、TDPで比べるとCore i5-750が95ワット、Core i5-650が73ワットで動作クロックの向上とは逆に消費電力がかなり低くなった。より環境に優しいエコなCPUと見ることもできる。
ADS7110BにはチップセットにIntel P55 Expressを採用したMSIの「P55-SD50」というATXマザーボードが搭載されていた。このマザーボードは市販されておらず、OEM向け製品のようだ。ただし、スペックを見ると「P55-CD53」に準じており、これをOEM向けにカスタマイズしたものと思われる。メモリスロットは4基あり標準では2GバイトのDDR3 PC3-10600モジュールが2枚装着されている。搭載できるメモリ容量は最大で16Gバイト(4Gバイト×4)と十分だ。
拡張スロットやインタフェースの数、内蔵する有線LAN(ギガビット対応)などは同じだが、市販のP55-CD53にはオーバークロックチューニングを自動で行う専用エンジンの「OC Genie」が搭載されている一方、このP55-SD50ではそれが省かれているといった違いがある。
また前述したようにチップセットがIntel P55 Expressのため、CPUに内蔵されているGPU機能は利用できない。そのためマザーに1基用意されているPCI Express x16スロットにECS製の「NGTS250-1GMU-F」というNVIDIAのGeForce 250 GTS搭載グラフィックスカードが装着されている(ビデオメモリは1Gバイト)。ひと昔前とは言え上位クラスのGPUだったわけで、3D描画を含めたグラフィックス性能に不満を感じることはほとんどないだろう。ただ、例によって拡張スロットが2段分必要になり、PCI Express x1スロット1基をつぶしてしまうのは残念だ。
なお、筆者が普段使っているマシンは、USB 2.0がバックパネルに6ポート、フロント部分に2ポートの計6ポートあるのだが、このマザーボードにはバックパネルにズラリと10ポートものUSB 2.0が並んでいる。本体フロント側に2ポート用意されているので計12ポートを利用できる。すべてUSB 2.0なので次世代のUSB 3.0に関しては別途インタフェースカードを増設する必要はあるものの、現行のUSB機器の拡張性に関して何ら問題はないだろう。
このほかオンボードの機能としてはサウンドが「Realtek ALC889」の8チャンネルオーディオ、「Realtek RTL8111DL」の1000BASE-T対応有線LANにPS/2ポートといった構成になっており、オンボード機能やインタフェース類に関しての不満はまったくない。
ADS7110Bのケースは、マウスコンピューターがラインアップする多くのミドルタワー型製品に採用されているものと同じものだ。取り立てて注目すべきポイントがあるわけではないが、必要十分な拡張性は持っている。5インチベイは4つ、3.5インチベイはHDD用が3つ、それ以外が2つの計5つと拡張性は高い。このうち5インチベイの最上部にDVDスーパーマルチドライブが装着されており、HDD用の3.5インチベイには1テラバイトのHDDが装着されている。空いているベイが多いのでHDDや光学ドライブ増設も楽に行えるだろう。
ただし、評価機に搭載されている電源ユニットの容量が450ワットと余裕があるわけではないのが気になった。もちろん、標準構成ではCPUが低消費電力なこともあり容量不足に陥ることはないが、CPUやグラフィックスカードの交換、HDDの増設をしていくと将来的に不足する可能性があるかもしれない。ケースの冷却性に関しては、背面に大型の12センチ角ファンが装着されており、動作音も静かだった。
以上、試用したADS7110Bの構成を概観してきたが、大きな特徴としてClarkdaleを搭載したということ以外、極めてオーソドックスな構成になっている。先に触れたように、チップセットがIntel P55 Expressのため、内蔵GPUが使えないといったデメリットはあるものの、逆にLynnfieldのCore i7を載せることが可能なので、将来的にパワー不足を感じたらCPUのアップグレードで対応することもできるこの構成は“アリ”だと思う。
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