冒頭で触れたように、事前リーク情報で1000ドルという想定価格があってこその499ドル表明での驚きだが、改めて考えてこの値段は安いのだろうか? それは、ユーザーがiPadに何を求めるかによって変わってくる。
高機能なiPhoneやiPod touchと考えた場合、前述のように動作は高速で非常にスムーズであり、バッテリー駆動時間も長い。おそらく期待を裏切らないはずだ。だが、MacBookのような“パソコン”と考えると機能不足だし、iPhoneやiPodのように気軽に持ち出すタイプのデバイスでもない。ユーザーがiPadを新しいカテゴリの製品だと考えられるかどうかがポイントになるだろう。もしニーズにフィットしたのならば、499ドルという値段は確かに“安い”。
むしろ問題は、3Gに対する考え方と、まだまだ未知数な「iBookstore」の存在だ。頻繁に持ち出すタイプのデバイスでないと考えた場合、3Gをサポートする必然性は低い。自宅ならWi-Fiがあるからだ。すでにいくつか指摘されているように、月額14.49ドルで使える250Mバイトという容量はその気になればあっという間に消費してしまう。3Gの使い方としては、たまにWebブラウズやメールチェックをするといった運用になりそうだ。iPadは、MacまたはPCと同期がある程度前提になっているため、「すべてを3Gで……」という使い方をすることは少ないだろう。むしろ29.99ドルでデータ通信無制限というのがオマケ的なもので、本来はWi-Fiオンリー、または補助的に上限つきの14.99ドルという使い方が一般的だと思う。
ちなみに米AT&Tの場合、スマートフォンに容量無制限のデータ通信機能を付与しようと思ったとき、基本料金に15ドル(iPhoneの場合は専用プラン選択のうえで20ドル)を足すだけでいい。スマートフォンとはいえ、そこまでガリガリとデータを消費するわけではないため、実際の通信量は前述のような数百Mバイト程度で収まることが多い(米国の3Gはそこまでパフォーマンスが出ないという理由もあるが)。このため、データ通信の価格設定も適切なレベルといえそうだ。
以上、前編ではAppleのスペシャルイベントを写真で振り返りつつ、iPadの機能紹介やその完成度、そして価格に対するちょっとした考察をまとめてみた。後編では新サービスの「iBookstore」に焦点を絞り、iPadとiBookstoreが出版業界や教育市場に与える影響など、ビジネス的な視点から話を進めてみよう。Appleは苦境に立つ出版業界の救世主になることができるのだろうか?(後編へ続く:ぼくらは“未完成”の「iPad」に期待しすぎていたのだろうか)。
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