本当にソフトウェアだけで、AVCHDのネイティブ編集を快適に行なえるのか、2010年春モデルのAVCHDビデオカメラで撮影した素材を中心に検証を行なった。
検証に使用したのは、筆者が自宅でビデオ編集機として使っている2台の自作デスクトップPCだ。CPUは1台がCore i7 860(2.8GHz)、もう1台がCore 2 Quad Q9550(2.83GHz)を搭載する。普段はEDIUS Pro 5で編集作業を行い、HD編集時の素材は主にHDVカメラの映像をMPEG-2のまま取り込んだものだ。
この環境でAVCHDのファイルを扱う場合、直接読み出すこと自体はできるものの、1ファイルの単純なプレビューでもコマ落ちが激しいため、別コーデック(Canopus HQ)のAVIファイルに変換してから編集しなければならない。HDVのネイティブ編集は何とか行なえるが、AVCHDのネイティブ編集など想像もできないという状況だ。
なお、よりスペックが低いPCでどこまで動作するのかを確認するため、自作デスクトップPCだけではなく、Core Duo T2400(1.83GHz)を搭載したノートPCの「ThinkPad T60」でも検証してみた。
検証に使用したPC | |||
---|---|---|---|
マシン | 自作デスクトップ1 | 自作デスクトップ2 | ThinkPad T60 |
CPU | Core i7 860(2.8GHz) | Core 2 Quad Q9550(2.83GHz) | Core Duo T2400(1.83GHz) |
コア数/スレッド数 | 4コア/8スレッド | 4コア/4スレッド | 2コア/2スレッド |
チップセット | Intel P55 Express | Intel P35 Express | Intel 945PM Express |
メモリ | 2Gバイト(PC3-12800) | 2Gバイト(PC2-6400) | 2Gバイト(PC2-5300) |
GPU | GeForce 8800 GTS | GeForce 8400 GS | Mobility Radeon X1300 |
グラフィックスメモリ | 512Mバイト | 256Mバイト | 64Mバイト |
システム用HDD | 7200rpm 3.5インチSATA×1 | 7200rpm 3.5インチSATA×1 | 5400rpm 3.5インチSATA×1 |
データ用HDD | 7200rpm 3.5インチSATA×1 | 7200rpm 3.5インチSATA×1 | システム用と共用 |
OS | Windows XP Professional(SP3) | Windows XP Professional(SP3) | Windows XP Professional(SP3) |
これらのPCにEDIUS Neo 2 Boosterを導入してAVCHDのネイティブ編集を行った結果は、下表の通りだ。
EDIUS Neo 2 Boosterでリアルタイムプレビュー可能な素材数 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カメラ | メーカー | フォーマット | 記録モード | 記録解像度 | ビットレート | 自作デスクトップ1の結果 | 自作デスクトップ2の結果 | ThinkPad T60の結果 |
HDR-CX370 | ソニー | AVCHD | FX | 1920×1080 | 24Mbps | 3ストリーム+1タイトル | 1ストリーム+2エフェクト+1タイトル | × |
HDR-CX370 | ソニー | AVCHD | HQ | 1440×1080 | 9Mbps | 3ストリーム+1タイトル | 1ストリーム+2エフェクト+1タイトル | 1ストリーム |
iVIS HF M31 | キヤノン | AVCHD | MXP | 1920×1080 | 24Mbps | 3ストリーム+1タイトル | 1ストリーム+2エフェクト+1タイトル | × |
GZ-HM570 | 日本ビクター | AVCHD | UXP | 1920×1080 | 24Mbps | 3ストリーム+1タイトル | 1ストリーム+2エフェクト+1タイトル | × |
HDC-TM70 | パナソニック | AVCHD | HA | 1920×1080 | 17Mbps | 3ストリーム+1タイトル | 1ストリーム+2エフェクト+1タイトル | × |
Xacti DMX-CS1 | 三洋電機 | MP4 | Full-HD | 1920×1080 | 16Mbps | × | × | × |
EOS 7D | キヤノン | MOV | 1080/30p | 1920×1080 | 44Mbps | 1ストリーム+1タイトル | 1ストリーム | × |
※リアルタイム再生できない場合は「×」と表記 |
一世代前のCPUとなるCore 2 Quad Q9550(2.83GHz)搭載機でも、1つのファイルに「エフェクト」と呼ばれる特殊効果を2つ適用しつつ、単純なタイトルを1つ追加するくらいであれば、レンダリングせずともフル画質/コマ落ちなしでの再生ができる。もちろん、タイムライン上でマウスをドラッグして大まかな素材の内容を把握する「スクラブ」の動作も、かなりの程度追従してくれる。
AVCHDの編集を少しでもやったことがある人なら、これは衝撃的な体験だろう。別のファイルを子画面で表示させると、リアルタイム再生はできなくなるが、それでも半分近いフレームレートで見られるので、どんな映像なのかをざっと確認するくらいならできてしまう。
EDIUS Neo 2 Boosterはマルチスレッド対応が徹底しているらしく、8スレッドの同時処理が可能なCore i7 860(2.8GHz)搭載機なら、3ファイル同時読み込み+タイトル1つ追加の状態でもコマ落ちせずに再生できる。また、同じファイルを、ちょっと時間をずらして画面内の別の場所に子画面で配置するといった内容なら、4本並べても軽々再生してしまう。
ビデオカメラのメーカーや機種、画質モードによって処理の重さに多少の違いはあるものの、Core i7を搭載したPCを使えば、AVCHDビデオカメラの映像でもDVカメラとほぼ同じ感覚でネイティブ編集できるという印象だ。特に、HDビデオ編集のためにCore 2 Quadを使い続けているユーザーにとっては、Core i7への乗り換えを決断する決定的な動機になりうる。
なお、ThinkPad T60で試してみたところ、1440×1080モードで撮影した映像なら、1ファイルのプレビューが何とか行なえた。AVCHDだけでなく、HDV編集についても高速化されているようで、ThinkPad T60で軽々とプレビューできてしまうのにも驚かされた。これなら、外出先でのノートPCによるHD編集も現実的なレベルで行なえそうだ。
ちなみに、場面転換の効果であるトランジションについては、通常のプリセットに加えて、GPUで画像処理を行う3Dトランジション「GPUfx」も実装されている。これにより、対応するグラフィックスカードを搭載していれば、高度な3D効果でも極めてスムーズにプレビューすることが可能だ。
GPUfxはDirect 3D 9.0c以降、ピクセルシェーダ モデル3.0以上に対応したGPUを備えたグラフィックスカード(HDプロジェクトで256Mバイト以上、SDプロジェクトで128Mバイト以上のグラフィックスメモリが必要)で利用でき、その処理能力はGPUの性能に左右される。
AVCHD以外に、このところ認知度が急激に高まっているデジタル一眼レフカメラによる動画も、このクラスの編集ソフトに興味を持つほどのユーザーなら気になるところだろう。今回はキヤノンの「EOS 7D」で撮影したフルHDの映像で試してみた。
キヤノンの一眼レフカメラでは、QuickTime形式(コーデックはH.264)で録画する仕組みが採られており、1080/30pモードのビットレートは実に約44Mbpsにもなる。だが、意外にもQuickTime Playerでの再生だけなら、Core 2 Quad Q9550搭載機でもコマ落ちなしで実行でき、EDIUS Neo 2 Boosterでも1ストリームのプレビューが可能だった。さらにCore i7 860搭載機では、タイトルを乗せても再生できた。
ここから複雑な効果や字幕を駆使した編集を行なうつもりなら、独自のCanopus HQコーデックへ変換してしまうのが無難だが、カット編集くらいならネイティブでも問題ないという印象だ。
ただ、同じH.264で圧縮した映像であっても、独自路線をいく三洋電機の「Xacti」シリーズの映像(MP4形式)はEDIUS Neo 2 Boosterではリアルタイム再生ができなかった。なお、読み込み可能なカメラはトムソン・カノープスのWebサイトに一覧表が掲載されているので確認してほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.