連載第1回、第2回、第4回と、TS-639 Proを取り上げた。TS-639Proは企業ユースにも対応するミドルレンジの製品だが、その基本的な機能は連載第3回で触れたエントリーモデル「TS-110」から連載第5回のハイエンドモデル「TS-8059U-RP」まで変わることはない。ここでもう一度「TurboNAS」シリーズの特徴をおさらいしておこう。
TurboNASの基本システムは、エントリーモデルがMarvell 800MHz〜1.2GHzと256Mバイト〜512Mバイトメモリの組み合わせ、ミドルレンジ以上ではIntel Atomと1Gバイト〜2Gバイトメモリの組み合わせを採用している。そのため、ソフトウェアRAIDでありながらも高いパフォーマンスを実現し、全モデルにおいてCIFS/NFS/iSCSIをサポートする。
Atom搭載モデルは、同様のCPUとマザーボードを個人でも入手可能であるため、「自分でパーツを買いそろえて自作したほうが安上がり」という意見もある。しかし、マザーボードのコンパクトさとは裏腹に、HDDの搭載台数を増やそうとすればその分のスペースと電源容量が必要になるうえ、小型のPCケースではエアフローが不十分となりやすい。さらにホットスワップに対応したトレイとなると、最低でも5インチベイが2基は必要となる。通常NASは、コンパクトな本体と巨大なストレージという、PCとは異なる構造になるため、ハードウェアスペックから期待されるさまざまなニーズを満たすためにはTurboNASのような専用設計が求められる。
また、家庭内利用を考慮した省電力、静音設計もTurboNASの特筆すべき特徴だ。ファンレスモデルを除く全モデルには、温度によって回転数を変えるスマートファンが搭載されているほか、一定時間アクセスがない場合にHDDの回転を停止させるスタンバイモードが用意されている。また、指定時刻に電源をオン/オフするスケジュール機能のほか、Atom搭載モデルにはWake on LANも搭載されており、起動しておく必要のない時間帯がある場合にはより効果的な省電力が可能だ。
TurboNASシリーズは、NASでありながらもそれを超えたオールインワンサーバとしての側面を持つ。Webサーバ、MySQLサーバといった業務用途のものだけでなく、ホームサーバとして重宝する機能が多数用意されている。
家庭内でNASの利用を考えた場合、保存されるファイルは主としてメディアファイルになると思われる。メディアファイルはメディアプレーヤーなどPC以外で再生できることが多く、それ自体が大容量を必要とするため、ネットワークで利用する場合の恩恵も大きい。TurboNASシリーズには各種メディアファイルをネットワーク経由で配信できるUPnPメディアサーバ機能やiTunesサーバ機能が搭載されている。さらにバックグランドでダウンロードを行うダウンロードステーション、ネットワークカメラを制御する監視ステーションなど豊富な機能をそろえている。
ファームウェア導入時からすでに豊富な機能を誇るTurboNASシリーズだが、さらに機能を追加するパッケージ管理システムを2系統用意している。1つは管理画面から簡単に追加できる「QPKG」、もう1つはQPKGから導入する管理システムで、パッケージはコマンドラインから導入を行う「iPKG」だ。
QPKGには初期状態で導入済みのMySQLをブラウザから管理・操作できる「phpMyAdmin」やメールサーバパッケージの「XDove」、ブログソフトウェアの「WordPress」など、厳選された利用価値の高いものが用意されている。一方、iPKGは導入にはコマンドラインからの操作など、ある程度のスキルを必要とするものの、1300以上(Atom搭載モデル用の場合)の豊富なパッケージが用意されている。コンパイル環境も一通りそろっているため、iPKGで提供されていないものでもソースコードからのインストールが可能だ。
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