米国のほとんどの図書館で電子書籍のオンラインダウンロードサービスを提供している。その多くがOverDriveのシステムを採用しており、同社のソフトウェアが採用するファイル形式をサポートする電子書籍リーダーで読むことができる。
例えば、筆者が住むシアトルを含むキングカウンティの図書館では、OverDriveのシステムを採用して、デジタル著作権保護対応のEPUB、およびPDF eBook、Mobipoket eBooksのファイル形式による電子書籍ダウンロードサービスを提供している。提供可能なファイル形式はタイトルによって異なり、iPodなどの携帯メディアプレイヤーで再生できるMP3やWMA形式のオーディオブックを用意しているタイトルもある。
貸し出し可能期間もタイトルによって異なり、自分で短めに設定することもできる。設定期間が過ぎると自動的に閲覧不可になるため、(返却のためにファイルの)アップロードなどをする必要はない。また、予定より早く読み終わった場合、Adobeのファイル形式を採用する電子書籍はソフトウェアを使って早めに返却できるが、Mobipocket eBook形式の電子書籍はライセンス条件により不可となっている。
図書館のオンラインサイトで提供しているファイル形式をKindleはサポートしていない。そのため、Kindleを持っていても図書館の電子書籍ダウンロードサービスを利用できない。一方で、EPUBに対応するソニーのDigital Readerでもnookでも図書館の電子書籍を利用できる。今後市場に投入される新製品も、ほぼすべてがEPUBを採用する見込みだ。
この点に関して積極的にプロモーションしていないことが不思議なぐらいだが、確かに、図書館から電子書籍で借りられるタイトルの数はまだ少なく、これに対応していることのメリットは現時点でそれほど大きくないのかもしれない。しかし、今後充実していくことは間違いなく、電子書籍リーダーを選択する基準の1つになっていくだろう。また、EPUBを採用する電子書籍が拡大して標準となるに従い、EPUBのみに対応する新たなサービスが生まれていく可能性もある。
これまで電子書籍リーダー市場で一人勝ちしてきたAmazon.comだが、Kindleと競合製品の対決構図ができつつある米国の電子書籍リーダー市場において、Kindleがどこまで独自路線を貫き通し続けられるかに、業界が注目している。
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