NVIDIAの最新GPU「GeForce GTX 400」シリーズは、DirectX 11に対応するとともに、従来のGeForce GTX 200シリーズから構成を一新した“Fermi”アーキテクチャを採用したことが注目されている。Fermiに関してはPC USERで何度か紹介しているように、従来までの“シェーダーパフォーマンスを重視したGPU”に対して、“ジオメトリ演算性能を強化した”のがFermiの特徴といえる。
なぜジオメトリを重視するのかという理由は、GPUコンピューティングにおけるパフォーマンス向上はもちろん、DirectX 11で導入されたテッセレーションでもジオメトリ性能が求められるためだ。また、PhysXパフォーマンスもGeForce GTX 200シリーズと比べて最大2.5倍と強化されている。
機能面の強化では、CSAA(Coverage Sampling Anti-Aliasing)に32サンプリングモード(従来は16サンプリングまでのサポート)が追加されたことが挙げられる。32xCSAAでは、8ポイントのカラーサンプルに24ポイントのCoverage Sampleを加えることで32サンプルによるアンチエイリアス処理を行うことが可能となり、よりなめらかな階調表現が実現する。
Fermiアーキテクチャについてより理解を深めたいときは「“Fermi”を採用したGF100の機能をデモ画面でチェックする」、および、「次世代GPUアーキテクチャ「Fermi」の内部構造に迫る」、そして、「これは壮大なコンピューティング革命の始まりに過ぎない」などを参考にしていただきたい。
今回登場したGeForce GTX 400シリーズには、上位モデルのGeForce GTX 480、下位モデルのGeForce GTX 470という2製品がラインアップされている。それぞれのCUDAコアは480基と448基で、1月にNVIDIAが行ったプレビューで紹介された512基から削減された仕様になっている。NVIDIAの説明では「Fermiアーキテクチャのキャパシティは512基だが、現時点でユーザーに提供できるGeForce GTX 480で搭載できるのは480基」としている。
GeForce GTX 480 | GeForce GTX 470 | GeForce GTX 285 | |
---|---|---|---|
CUDA Core | 480 | 448 | 240 |
テクスチャユニット | 60 | 56 | 80 |
ROPユニット | 48 | 40 | 32 |
GPUクロック | 700 | 607 | 648 |
シェーダクロック | 1401 | 1215 | 1476 |
メモリクロック | 924 | 837 | 1242 |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR3 |
メモリ接続バス幅 | 384 | 320 | 512 |
メモリ帯域幅 | 177.4Gバイト/秒 | 133.9Gバイト/秒 | 159Gバイト/秒 |
メモリ容量 | 1536Mバイト | 1280Mバイト | 1024Mバイト |
消費電力 | 250ワット | 215ワット | 183ワット |
補助電源レイアウト | 8ピン+6ピン | 6ピン+6ピン | 6ピン+6ピン |
DirectXサポート | 11 | 11 | 10 |
トランジスタ数 | 30億 | 30億 | 非公開(GTX280は14億) |
テクスチャユニットとROPユニットの数は、GeForce GTX 480がそれぞれ60基と40基、GeForce GTX 470が56基と40基となっている。内部アーキテクチャが変更されたことに伴い、このあたりの数もGeForce GTX 285と比べ変化している。
トランジスタ数は30億で、これはGeForce GTX 280と比べて2倍強、Radeon HD 5800と比べても1.5倍に相当する。NVIDIAのハイエンドGPUとしてようやく40ナノメートルプロセスルールを採用した。ただ、Radeon HD 5800シリーズと同じプロセスルールでトランジスタ数が1.5倍となれば当然ダイは大きくなる。一般的に大きなダイは小さなダイよりも歩留まりが低い。CUDAコアが削られた間接的な原因の1つにこのダイサイズも関係するのではないだろうか。
グラフィックスメモリでは、最新のGDDR5メモリを採用する。GeForce GTX 480はGDDR5を384ビット幅のメモリバスに接続し、924MHzで駆動する。その帯域は177.4Gバイト/秒に達する。GDDR5メモリはGDDR3メモリと比べて同一クロックでも転送速度は2倍になるが、GeForce GTX 285の159Gバイト/秒と比べてあまり増加していないのは、GeForce GTX 285が512ビットでメモリバスに接続しているためだ。バス幅の削減とメモリクロックが低い分だけ、GDDR5の利点をいくぶん相殺したことになっている。グラフィックスメモリ容量は1.5Gバイトまでと、従来より大容量になったが、これにも384ビットというメモリバス幅とグラフィックスメモリとして使われているチップ自体の容量増が関係している。
NVIDIAの資料によると、GeForce GTX 480を搭載しグラフィックスカード全体の最大消費電力は250ワット、GeForce GTX 470は215ワットとされている。補助電源コネクタ構成は、GeForce GTX 480で8+6ピン、GeForce GTX 470で6+6ピンとなる。すでに存在するGPUで8+6ピン構成だったGeForce GTX 280が236ワットだったことからすれば大きな値ではないように見えるが、Radeon HD 5870の188ワットと比べると、やはり「モンスター級」といえる。
今回評価で試用したGeForce GTX 480搭載のリファレンスカードは、後部にファンを配置した外部排気方式こそGeForce GTX 285と同様だが、クーラーユニットにヒートパイプを組み込むなど、冷却性能を大幅に強化している。GPUで発生した熱をヒートパイプを使ってヒートシンクに伝え、ファンから取り込んだ外気によって冷却する。シロッコファンの風量を最大化するためか、基板にも給気口を開けている。なお、基板裏面はヒートシンクや放熱用の金属パネルなどは取り付けていない。そのほか、カード上部にはSLI用の端子が2基、ディスプレイ出力はDVI-I(DL対応)×2、およびMini HDMIを搭載する。
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