Phenom II X6は「Thuban」という開発コード名で呼ばれていた“ネイティブ”な6コアCPUだ。各コアごとに128Kバイトの1次キャッシュメモリと512Kバイトの2次キャッシュメモリを搭載するほか、コア共有の3次キャッシュメモリとして6Mバイトを実装する。従来のクアッドコアモデルであるPhenom II X4 965 Black Editionと比べて、1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリが増加しているが、3次キャッシュメモリに関しては“Deneb”コアと変わらない。また、プロセスルールも45ナノメートルのままなので、コアが増加した分は、そのままダイ面積の増加につながることになる。
モデルナンバー | Phenom II X6 1090T Black Edition | Phenom II X6 1055T | Phenom II X4 965 Black Edition |
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コア数 | 6 | 6 | 4 |
動作クロック | 3.2GHz | 2.8Gz | 3.4GHz |
TurboCore有効時 | 3.6GHz | 3.2GHz | − |
ソケット | AM3 | AM3 | AM3 |
対応メモリ | DDR3-1333/DDR2-1066 | DDR3-1333/DDR2-1066 | DDR3-1333/DDR2-1066 |
1次キャッシュ | (命令64K+データ64K)/コア | (命令64K+データ64K)/コア | (命令64K+データ64K)/コア |
2次キャッシュ | 512KB/コア(計3MB) | 512KB/コア(計3MB) | 512KB/コア(計2MB) |
3次キャッシュ | 6Mバイト(共有) | 6Mバイト(共有) | 6Mバイト(共有) |
HT Link クロック | 4.0GHz | 4.0GHz | 4.0GHz |
プロセスルール | 45ナノメートル | 45ナノメートル | 45ナノメートル |
発表直後のPhenom II X6ラインアップは、まず「Phenom II X6 1090T Black Edition」(1090T BE)と「Phenom II X6 1055T」(1055T)の2製品からスタートする。上位モデルの1090T Black Editionは、動作クロックが3.2GHz、1055Tは2.8GHzとされている。“Deneb”世代のPhenom II X4で最高クロックモデルが3.4GHzのPhenom II X4 965 BEであるから、動作クロックはやや低く設定されている。Thuban世代とDeneb世代のPhenom IIにおけるコア電圧をCPU-Zで確認できる値で比較してみよう。
Phenom II X4 965 BEのコア電圧は1.320ボルトであるのに対して、1090T BEのコア電圧は1.284ボルトと表示された。両モデルともTDPは125ワットとされているが、動作クロックとコア電圧のわずかな引き下げによって6コア動作が可能となっていると考えられる。
Thubanは基本的にDenebと同じアーキテクチャだが、いくつかの変更が加えられた。その代表的なものが「Turbo Core」だ。1090T BE、1055Tのようにモデルナンバー末尾の「T」は、Turbo Coreに対応した製品であることを示している。
“Turbo”という名称に、インテルの「Turbo Boost Technology」を思い出すユーザーもいると思うが、実際、Turbo Coreも、システム動作中にTDPに余裕がある場合、TDP枠の許す範囲内でオーバークロックモードに入る技術だ。インテルのTurbo Boost Technologyに近い印象を持つが、Turbo Coreの場合は1コア単位ではなく3コア単位で制御するとAMDは説明している。
このことを確かめるため、動作するスレッド数を指定できる「CINEBENCH R11.5」と使用コアを制御できるAMD OverDriveを用いてその挙動をチェックした。AMD OverDriveで6コアを使用可能とした状態でCINEBENCH R11.5を6スレッドで実行すると、1090T BEは倍率で16倍と定格で動作している。同じく4コア有効、4スレッド動作に設定してもまだ定格動作のままだ。そして、3コア有効、3スレッド動作にしたところで。3コアの倍率が17.5倍にまで引き上げられた。
なお、2コア有効、2スレッド動作でも、3コアとも定格の16倍を超えて動作しているが、処理が割り当てられない1コアは16.5倍と、ほかの2コアより低い倍率で動いているのが確認できた。クロック制御は瞬間的に切り替わるため、目視による最高クロックの確認は困難を極めたが、今回の測定で目視できたのは最大17.5倍までであった。
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