進化しすぎたXeonの憂うつ元麻布春男のWatchTower(2/3 ページ)

» 2010年06月15日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

世界記録を保持するXeon 7500

 この2ソケット向けXeon 5600番台の登場から2週間遅れて、4ソケット以上の構成(MP構成)に対応したハイエンド向けのXeon 7500番台がリリースされた(2ソケット専用のXeon 6500番台を含む)。2009年にリリースが予定されていたXeon 7500番台は、開発コード名「Nehalem-EX」が示すように、上記のXeon 5600番台よりも1世代前になる45ナノメートルプロセスルールのCPUだ。命令セットも、32ナノメートルプロセスルール世代に導入されたAES-NIや、Xeon 5600番台で加わったTXTをサポートしない。

 コアの世代では 2ソケットサーバ向けのXeon 5600番台から完全に1世代違ってしまったわけだが、やむを得ない事情もある。Xeon 7000番台は、IAサーバ向けCPUの最上位モデルであるため、高性能に加えて高い拡張性と高い信頼性も求められる。それだけに、プラットフォームの検証作業では厳格なアプローチが求められる。高い拡張性を持つということは、それだけ検証作業に時間がかかるということにつながる。まして、今回のXeon 7500番台で拡張された機能の1つは、ミッションクリティカル業務にも耐える高信頼性と高可用性だから、なおさら検証に力を入れねばならない。スケジュールの遅延はマイナス要因であるが、ミッションクリティカルに耐えうるCPUには避けられない側面でもある。

 Xeon 7500番台の登場により、インテルの主力CPUは全市場セグメントにおいて(Atomを除く)、Nehalemマイクロアーキテクチャへの移行が完了した。メモリコントローラはすべてCPUに統合され、CPUの外部インタフェースとしてのFSBは姿を消した。こうしたCPUコア以外の部分(Uncore部分)の改良により、プラットフォームは一新される。これも検証期間の長期化によるスケジュールの遅延を招いた可能性がある。

 内部的な特徴は、何といってもCPUコアを最大で8個内蔵することだろう。前世代のXeon 7400番台(開発コード名“Dunnington”)が最大で6コアだったのに対し、さらに2コアを上積みしたことになる。動作クロックは、Xeon 7400番台の最大2.66GHzから2.26GHzへ15%低下したものの、コア数の増加、マイクロアーキテクチャの改善、そしてUncore部の改良により、Xeon 7500シリーズの性能は前世代に対し最大3倍にもなるとインテルは述べている。

 こうした高性能化に加えてXeon 7500番台を特徴づけるのが高い拡張性だ。このことを端的に示すのが、インテルの標準チップセットであるIntel 7500(開発コード名Boxboro)との組合せで最大8ソケットまで対応可能なことだろう。最大4ソケットまでだった従来のXeon 7000番台から2倍のスケールアップ能力を持つことになる。これを実現するため、Xeon 7500番台は4ポートのQPIを備えている。さらに、独自にチップセット(ノードコントローラ)を開発するサードパーティでは、最大256ソケット(2048コア)をサポートしたシステム(SGI Altix UV1000)も発表しており、その64ソケット版は実際に稼働して整数演算ベンチマークテスト(SPECint*_rate_base2006)で、世界記録(全CPU対象)を樹立している。

 このマルチコア能力に合わせて、メモリの最大容量も大幅に拡張された。Xeon 7500番台では、内蔵するメモリインタフェースがメモリコントローラに直接DIMMを接続するのではなく、DIMMを「Scalable Memory Buffer」(SMB)と呼ぶバッファチップを介して接続する。Xeon 7500番台が内蔵するメモリコントローラは、このSMBを接続するためのインタフェース(Scalable Memory Interconnect)を4本備えている。

 SMBは、それぞれが2チャネルのDDR3インタフェースを備え、そこに2本のRegistered DDR3 DIMMを搭載可能だ。従って、ソケットあたりで16本のRegistered DDR3 DIMMをインストール可能ということになる。Xeon 7500番台の基本構成は2CPUだから、合計で32DIMMソケットをサポートする。

 Xeon 7500番台のメモリコントローラは、一般的なPC用メモリの2倍に相当する4ランク(DIMMの動作構成単位、以前はバンクと呼ばれた)のモジュールをサポートしており、DIMMあたりの最大容量は16Gバイトになっている。これを32本のDIMMソケットにインストールした512Gバイトが2ソケット構成での最大メモリ容量となり、4ソケット時には1Tバイトのメモリを搭載可能だ。こうした大容量メモリを余裕を持ってサポートするため、Xeon 7500番台では物理アドレスが44ビット(16Tバイト)まで拡張されている。仮想化やHPCといった分野では、CPUの処理能力(コア数)よりも、メモリ搭載量が先にボトルネックとなることが多いが、Xeon 7500番台はこうした分野にも高い適性を備えていることになる。

高い拡張性を備えるXeon 7500番台

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