家庭内コンテンツをいつでもどこでも同じ操作感で――Acerが「clear.fi」を発表Acerの野望 2010 in 北京(1/2 ページ)

» 2010年05月28日 05時00分 公開
[後藤治,ITmedia]

 既報の通り、Acerが北京で開催した「source home 2010」では電子書籍端末の「LumiRead」などが披露されているが、同カンファレンスで打ち出されたメッセージは、Acerの新しいホームネットワーク構想である「clear.fi」だ。ここで改めてイベント全体の様子を振り返ろう。

いろんなことがあったけど、Acerは元気です

「source home 2010」の会場となったのは、招かれたメディアの宿泊先でもあるPangu 7 Star Hotel。北京オリンピックの名物風景として注目を集めた“水立方”こと国家遊泳中心と“鳥の巣”の愛称で知られる北京国家体育場が部屋から一望できる

 PC市場シェアでついにDellを抜き去り、hpに次ぐ2位へと躍り出たAcerは、今最も勢いのあるPCメーカーの1つと言っていいだろう。米TIME紙恒例の「世界で最も影響力のある100人」の2010年版(The 2010 TIME 100)に並ぶJ.T. Wang会長の名前もこれを裏付けている。Acerのワールドワイド戦略を世界に向けて発信するイベントとして、2009年度は各地域ごとに発表の場を設けるツアー(ニューヨーク、北京、アムステルダム)が実施されたが、今回の「source home 2010」はニューヨークで事前に開催される予定だった発表会が直前でキャンセルされたこともあり、各国のメディアが一堂に会するやや規模の大きいものとなったようだ。

スピーチを待つAcerのJ.T. Wang氏とGianfranco Lanci氏。いかにも「絶好調」な笑みがこぼれる

 冒頭に登壇したAcerのCEO、Gianfranco Lanci氏は、まず始めにPC市場を取り巻く変化と同社の業績を振り返った。示されたスライドでは、金融危機に端を発したPC需要の停滞を受けて2009年第1四半期は大きく落ち込んでいるが、同年第3四半期からは回復基調に転じ、2010年第1四半期の同社の売上高は49億4800万米ドルと、前年同期比45%の成長を見せている。また、営業利益も前年同期比69%増の1億6100万米ドルと業績は順調に伸び、同氏は「PC市場は完全に健全な状態」へ復帰したと総括した。ちょうど「CeBIT 2010」で発表した市場予測を実際の数字で証明した形だ。

 また、これにあわせて、AcerはPC全体の市場シェアでDellを抜き2位に浮上。さらにノートPC市場では19.4%までシェアを伸ばし、わずかながらついにhpを上回った。いよいよ「世界制覇」の文字が現実味を帯びてきたと言えそうだ。

直近の業績を見ると、2010年第1四半期の売上高は49億4800万米ドル、営業利益は1億6100万米ドルと、前年同期比で大幅な伸びを見せた。営業利益の推移を見ても非常に好調で、失速した2009年第1四半期から勢いを取り戻しているのが分かる(写真=左/中央)。PC市場全体のシェアはDellを抜き2位へ、ノートPC市場シェアではトップの座についた(写真=右)

成熟市場と新興市場の国別シェア一覧。日本エイサーは「2011年までに国内シェア5位」を掲げているが、日本の名前はいまだリストされていない。2010年第1四半期と前年同期を比較すると、売上高はすべての地域で伸びているのが分かる

デバイス間の垣根を取り去る「clear.fi」

2010年第4四半期に投入されるタブレット端末も「clear.fi」のコンセプトを担う製品の1つだ

 一方Lanci氏は、PC市場の顧客層が子どもや女性、高齢者などを含む一般層へと広く拡大していき、PCのコモディティ化に伴ってPCを購入する際の動機付けも変化していると指摘した。同氏によると、もはや処理性能などの技術的な進歩はメインの訴求点にはなり得ず、その代わりにデザインや質感などが重要視されているという。インタフェースは伝統的なキーボードからマルチタッチへと移行し、若い世代ではタッチデバイスがごく普通になりつつある。より簡単にデータを統合、同期する仕組みが古いPCから新しいPCへ乗り換える動機になり、ユーザーは目的に応じて異なる形態、異なる画面サイズのデバイスを使い分けている。また、PCの利用形態も変化し、従来のようにデジタルコンテンツを受動的、静的に消費するのではなく、デジタルデバイスは常にネットに接続され、ユーザーはいつでもどこでも複数のデバイスを通してコンテンツを扱うようになると説明した。

 しかし実際は、ノートPCやNetbook、電子書籍端末、スマートフォンなど、異なるデバイスでは異なる操作性、異なるOSが実装されているのが現状である。そこで同社は、デバイス間の差異を意識することなく、共通のユーザーインタフェースでホームネットワーク上にあるコンテンツを扱うための仕組みを提供していく。それが「clear.fi」だ。clear.fiに対応する各デバイスはDLNAに準拠し、面倒な設定なしに相互接続され、共通のUIであるAcer Media Consoleで操作できるようになる。また、各デバイスに保存されたデジタルコンテンツは、動画、音楽、写真、録画済み番組といったジャンルごとに即座に検索でき、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でどこからでも再生、もしくは保存が可能になる。ネットワークストレージやメディアプレーヤーとして投入されているAcer Revoファミリーは、ストレージの拡張を容易に行える構造であり、家庭内コンテンツの増大に簡単に対応できるのも特徴の1つだ。

「clear.fi」ではホームネットワーク上のすべてのデバイスが相互接続され、コンテンツの保存場所を問わず、どこからでも利用可能になる。スマートフォンや電子書籍端末も例外ではない(写真=左)。また、「clear.fi」のコンセプトに対応する統合されたユーザーインタフェースを用意し、各デバイスごとの操作性の差異も取り去っていく(写真=中央)。「clear.fi」のUIは画面の大きさなどで違いはあるものの、ルック&フィールは完全に統一される。現段階ではまだ開発中とのことだが、基本的にはタッチ入力をサポートし、ホーム画面の下部にドックをレイアウトしたUIになるようだ(写真=右)

 clear.fiがカバーするのは、PCやNAS、メディアプレーヤーだけではない。今後投入されるスマートフォンやタブレット端末、電子書籍端末までがこの構想に組み入れられており、家庭内のあらゆるデジタルデバイスが相互接続され、統一されたUIで操作できるようになるという。例えば、通常はインターネット上のサービスを利用するスマートフォンが、家庭ではホームネットワークに接続し、いわば“ホームクラウド”のメディアブラウザとして機能する。イベント会場の別室で行われたデモでは、2人の男女がキッチンやリビング、書斎、寝室と、別々に移動しながら、ホームネットワーク上にあるコンテンツを一体型PCで見たり、(メディアプレーヤーを接続した)大画面テレビで再生したり、PCでダウンロードした電子書籍を「LumiRead」で閲覧する様子が実演された。

clear.fiでは、画面下部のドックに目的別のアイコンを並べたUIが採用されるようだ。写真は一体型PCの「Aspire Z5710」(写真=左)。ホームネットワーク上のコンテンツは、動画、音楽、写真、録画したテレビ番組など、ジャンルごとに探し出せる。また、ドックにはネットワーク上のデバイスがアイコンで表示され、切り替えが簡単に行える(写真=中央)。HDMIを備えるメディアプレーヤー「RevoView」。テレビに接続するだけでネットワーク上のデジタルコンテンツを大画面で楽しめるほか、本体にHDDやメモリカードスロットを内蔵している。HDDの交換が容易に行えるのも特徴だ(写真=右)

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