ミスター“K”はオーバークロッカー!──「Core i7-875K」「Core i5-655K」でインテルの遊び心を知るイマドキのイタモノ(1/3 ページ)

» 2010年05月28日 13時01分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

 「Core i7-875K」「Core i5-655K」は、オーバークロッカーを“強く”意識したCPUだ。従来、インテルのCPUでオーバークロック機能を実装していたのは、Core i7-980Xのような「Extreme Edition」だけだった。このシリーズは、インテルのコンシューマー向けCPUで最上位のラインアップという位置付けで、Core iシリーズではLGA1366対応モデルでしか用意されていない。

 このレビュー記事で取り上げる「Core i7-875K」「Core i5-655K」は、LGA1156対応の“Lynnfield”“Clarkfield”世代のモデルながら、オーバークロックを可能とした製品だ。これは、これまでIntel X58 Expressだけだったオーバークロック設定が、Intel P55 Express、Intel H55 Express、そして、Intel H57 Expressといった低価格のメインストリームプラットフォームでも可能になったことを意味する。

LGA1156対応モデルでもTurboBoostの上限倍率が変更可能に

 「Core i7-875K」「Core i5-655K」(ここでは、仮に“Kモデル”と呼んでおこう)に用意されたオーバークロック向け機能とはどのようなものだろうか。CPUの動作クロックは、ベースクロックとそのベースクロックに対する倍率で決まる。2.93GHz駆動のCPUであれば、ベースクロックが133MHz、倍率は22倍ということになる。そして、現在のCPUの多くには「倍率の上限」が設定されている。

 倍率の上限が設定されている一般的なCPUでオーバークロック設定をする場合、ベースクロックを上げることで行っていた。定格動作が2.93GHzのCPUであれば、ベースクロックを133MHzから166MHzに引き上げるといった具合だ。ただし、ベースクロックはCPUだけでなく、メモリのクロックなどにも影響する。オーバークロックを行うシステムの構成で高クロック動作に対応したメモリが求められるのはこのためだ。一方で、倍率が変更できるCPUならば、システム全体に影響するベースクロックを一定に保ちながら、CPUの動作クロックだけを上げることが可能になる。このようなオーバークロック設定なら、メモリは安価で入手しやすい通常のメモリでもかまわない。

Core i7-875K(写真=左)とCore i5-655K(写真=右)。ともに、エンジニアリングサンプルであるため、刻印から製品情報を知ることはできない

 ここで取り上げる“Kモデル”は、倍率を変更できるCPUだ。ただ、注意したいのは、マイクロアーキテクチャ“Nehalem”(開発コード名)以降のCPUでは、定格における動作クロックの上限とTurbo Boost Technology(TBT)で可能になる動作クロックの上限が設定されている。“Kモデル”でもTBTが有効になった状態でしか倍率を変更できない。しかし、すでにレビュー記事でも紹介したように、「Lynnfield」や「Clarkdale」世代のCPUで導入されたTBTの効果はベンチマークテストの結果で見る限り、大きな効果を発揮している。倍率変更の条件が、TBTが有効の状態に限られるとしても、実質的に「倍率が撤廃されたCPU」と解釈してもかまわないだろう。

“K”のベースはCore i7-870とCore i5-650

 Core i7-875KとCore i5-655Kの仕様を確認するためにCPU-Zで情報を収集してみると、それぞれCore i7-870、および、Core i5-650に準じた仕様であることが分かる。ただ、Core i5-655Kのステッピングが「K0」となっている。これは、最新、かつ、現在の最速動作クロックモデルの「Core i5-680」(動作クロック3.6GHz)と同じステッピングで、「C2」ステッピングだったCore i5-650と比べて新しくなっている。

 なお、TBTの上限クロックも、オーバークロックを設定していなければ、Core i7-875Kで3.60GHz、Core i5-655Kで3.46GHzと、Core i7-870、Core i5-650のスペックと変わらない。

CPU-Z 1.54で確認したCore i7-875K(写真=左)とCore i5-655K(写真=右)の情報。それぞれ、Core i7-870およびCore i5-650と同等だ。ただし、Core i5-655Kのステッピングが最新の「K0」となっている

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