“倍速補間”ד超解像”で先を行く――三菱、23型フルHD液晶「RDT232WM-Z(BK)」体験会滑らかな動画表示に驚きの声(1/2 ページ)

三菱電機の新ディスプレイ「RDT232WM-Z(BK)」を発売前に体験できるプレビューイベントが開催された。RDT232WM-Z(BK)は倍速補間技術を他社に先駆けて搭載したことで、従来より動画ブレを大幅に抑えた23型フルHD液晶ディスプレイだ。その実力は一般ユーザーの目にどのように映ったのか――、会場からのリポートをお届けする。

» 2010年06月07日 10時00分 公開
[ITmedia]

3つの特徴で動画をクッキリかつ滑らかに表示

会場に展示された「RDT232WM-Z(BK)」

 5月28日、ITmedia +D PC USER編集部主催、三菱電機共催の「RDT232WM-Z(BK)」プレビューイベントが、東京都内のアイティメディア社内にて開催された。

 このイベントは、三菱電機が5月18日に発表した23型フルHD液晶ディスプレイのRDT232WM-Z(BK)を、6月11日の発売前にいち早く体験できるというもの。抽選で選ばれた一般参加のユーザーと製品開発者、そして特別ゲストとして招かれたフリージャーナリスト/AV評論家の本田雅一氏も交え、“濃密なディスプレイトーク”が繰り広げられた。

 まずはRDT232WM-Z(BK)の開発者である三菱電機 デジタルメディア事業部 モニター事業センター 技術部の藤村直弘氏が、製品の特徴と技術について解説。RDT232WM-Z(BK)は実に多彩な機能を備えているが、藤村氏は大きな特徴として「倍速クリアピクチャー」「デジタル2画面対応のPinP」「ギガクリア・ウィンドウ」の3点を挙げた。

特徴1――「倍速クリアピクチャー」

倍速クリアピクチャーの効果について語る藤村氏。余談だが、OSDメニューのフォントは同氏が自作したという開発秘話に会場が盛り上がった

 1つめの特徴である「倍速クリアピクチャー」とは、120Hz駆動の液晶パネルと三菱独自の技術を組み合わせることで実現した「倍速補間」機能だ。主に37型以上の大型液晶テレビに見られる動画ブレ低減機能だが、32型以下の液晶テレビやPCディスプレイでは導入が進んでおらず、RDT232WM-Z(BK)は倍速補間機能を搭載した業界初のPC用液晶ディスプレイになる(国内販売のスタンドアロン型PC用液晶ディスプレイにおいて業界初。2010年5月18日現在、三菱電機調べ)。23型というプライベートユースに適した画面サイズで倍速駆動に対応しているのもポイントが高い。

 倍速補間とは、毎秒60フレームの映像において前後フレームの差分からその間の動きを予測し、元映像にない中間フレームを作り出して挿入することで、毎秒120フレームの映像を出力することにより、動画のぼやけ感を抑え、滑らかに表示する機能のこと。液晶は映像の内容が変わるまで同じ表示をし続ける「ホールド型」デバイスなので、電子ビームが当たる瞬間だけ発光(表示)して次の瞬間には消える「インパルス型」デバイスのCRTに比べて、目の網膜に前フレームの映像が残りやすく、これがぼやけ感となって現れる。フレーム数が2倍に増える倍速補間では映像切り替えのタイミングが速くなり、ぼやけ感が減る仕組みだ。

 ただし、PC用の液晶ディスプレイではインターネットの動画共有サイトなど低解像度の映像を視聴する機会も多く、こうした映像を拡大表示すると倍速補間の有無にかかわらず、ぼやけ感が大きくなる場合も少なくない。そこで倍速クリアピクチャーでは、中間フレームを作る前段の処理で独自の画像処理LSI「ギガクリア・エンジン」に含まれる超解像技術を使って、ぼやけ成分を補正し、あらかじめ解像感を高めた映像を作成する。その映像から倍速補間で中間フレームを作成し、毎秒120フレームの映像とすることで、さまざまな映像ソースでクッキリ滑らかな表示を可能にしているのだ。

 藤村氏は、倍速クリアピクチャーの効果はVESA規格のMPRT値を見ると明らかだと語る。MPRTとはMoving Picture Response Timeの略で、「動画応答時間」と訳される。液晶の動画表示能力を数値化した指標としては応答速度が一般的だが、これは画素が特定の階調から別の階調へ切り替わる時間を計測したもので、ホールド型表示によって目に残るぼやけ感などは考慮されず、見た目の動画ブレを正確に表現しているとはいいがたい。これに対してMPRTは、動画表示における輪郭のぼやけ幅をCCDカメラで撮影・測定し、時間に換算するため、人間の視覚的なぼやけ感を数値で比較できる指標として、応答速度より優れている。

 このMPRTを採用すると、従来のTNパネル搭載機は22msとなるが、RDT232WM-Z(BK)では8msまで短縮できており、1/3近いぼやけ感の少なさを達成している。ちなみに、VAパネル搭載の上位機種である「MDT243WGII」は黒挿入、バックライトスキャン、オーバードライブの合わせ技(MP ENGINEII)で動画ブレを低減するが、それでもMPRTは10msだ。倍速クリアピクチャーがいかに有効かが分かるだろう。1つ付け加えておくならば、RDT232WM-Z(BK)の応答速度はグレーからグレーで3msとなっており、パネル自体の応答速度もかなり速い。

MPRTの値を示すグラフ。従来のTNパネル搭載機に比べて、どの階調でも動画ブレが抑えられているのが分かる

 ところで最近はNVIDIAの3D立体視システム「NVIDIA 3D Vision」に対応した120Hz駆動の液晶ディスプレイもいくつか販売されているが、これらは倍速補間をサポートしないため、動画ブレはRDT232WM-Z(BK)のほうが明らかに少ないと藤村氏は力説する。NVIDIA 3D Visionに対応した120Hz駆動の液晶ディスプレイでは、3Dグラスをかけたユーザーの左右の目に少しずつずれた毎秒60フレームの映像を送り込むことで、合計120フレームの3D立体視映像を構築するが、標準的な毎秒60フレームの映像を入力した場合は、2フレームずつ同じ映像が繰り返し表示されるだけだ。つまり、ホールド型表示の液晶では60Hz駆動の液晶ディスプレイとぼやけ感が変わらないことになる。

 イベント会場では、この事実を分かりやすく伝えるためのデモ展示が行われていた。60Hz駆動の従来製品、120Hz駆動の他社製品(NVIDIA 3D Vision対応で倍速補間は非搭載)、そしてRDT232WM-Z(BK)の倍速補間オン/オフといった異なる環境で、DVI分配機を使って同じ映像コンテンツを表示するという内容だ。実際に見比べてみると、60Hz駆動の従来製品と倍速補間に対応しない120Hz駆動の他社製品では動画のぼやけ感がほぼ同じに見えるが、倍速補間をオンにしたRDT232WM-Z(BK)では、スクロールするテロップや映像が別次元といえるほど明確に描かれる。その違いはPC初心者でも一目で分かるほどだ。

会場に展示されたデモ機。右から、60Hz駆動の従来製品、120Hz駆動の他社製品(NVIDIA 3D Vision対応で倍速補間は非搭載)、RDT232WM-Z(BK)の倍速補間デモモード(画面左半分がオン、右半分がオフ)、RDT232WM-Z(BK)の倍速補間表示(全画面でオン)。60Hz駆動の従来製品と、倍速補間に対応しない120Hz駆動の他社製品は動画ブレの具合がほとんど同じに見えるが、倍速補間をオンにしたRDT232WM-Z(BK)ではブレが大幅に低減できている

RDT232WM-Z(BK)の倍速補間デモモード(画面左半分がオン、右半分がオフ)。このようにデジカメで撮影してブレの違いがはっきり分かるほど、倍速クリアピクチャーは効果的だ

特徴2――「デジタル2画面対応のPinP」

 2つ目の特徴である「デジタル2画面対応のPinP」とは、DVI-DとHDMIのデジタル入力同士の親子画面表示が可能になったということ。同社の従来機はアナログとデジタルの組み合わせのみPinPに対応していたが、新たにDVI-DとHDMIの組み合わせが行えるようになった(HDMI同士、D端子とD-SubのPinPには非対応)。これにより、DVI-Dで接続したPCの画面上に、HDMIで接続したDVD/BDプレーヤーやゲーム機の映像を小さく表示できるなど、利便性が向上している。

 映像入力端子はHDMI×2、D5、DVI-D、D-Subと豊富で、音声入力端子はD5用のRCAステレオとPC入力用のステレオミニ、音声出力端子はステレオミニのヘッドフォンを用意する。もちろん、HDMI入力時は音声信号も映像信号と同時に伝送可能だ。また、補正信号によってクリアな音を再現するDIATONEリニアフェイズ技術を採用したステレオスピーカー(出力は3ワット+3ワット)も内蔵し、多機能なリモコンまで付属するなど、装備の充実ぶりは目を見張る。

特徴3――「ギガクリア・ウィンドウ」

 3つめの特徴である「ギガクリア・ウィンドウ」は、専用ソフトをWindows Vista/7搭載PCにインストールすることにより、マウスで指定した範囲のみ超解像技術を適用できる機能だ。超解像技術はボンヤリした動画を鮮明にしてくれる半面、PCのデスクトップ画面などに適用するとアイコンや文字のエッジがきつくなるが、この機能を使えばWindows Media PlayerやWebブラウザ上などで再生している動画部分だけに超解像をかけることができ、使い勝手がグンと増す。特にYouTubeなど解像度が低めの映像をウィンドウモードで視聴している場合、ギガクリア・ウィンドウは重宝する。

PinPの小画面や、Windows上で指定した範囲だけに超解像を適用するデモを行う藤村氏。Windows上での超解像の効き具合は調整可能だ
カード型リモコンではなく、しっかりしたフルリモコンが付属。入力系統や倍速クリアピクチャーの設定などはワンタッチで変更できる

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年6月27日