富士通が満を持して投入した3D対応モデルは、3D映像を“見る”だけでなく、“作る”までサポートした意欲的なPCだ。早速、その魅力に触れてみた。
6月9日、富士通の2010年PC夏モデルが発表された。同社はこのタイミングでPCブランドをワールドワイドで統合し、国内コンシューマー向けデスクトップPCは「FMV-DESKPOWER」シリーズから「ESPRIMO」に、ノートPCは「FMV-BIBLO」から「LIFEBOOK」にブランド名を変更した。デスクトップPCのラインアップはこれまでと同じ2系統で、液晶一体型PCのFHシリーズと、スリムタワー型のDHシリーズだ。前者の「ESPRIMO FH」シリーズは、従来の「FMV-DESKPOWER F」シリーズの後継に相当するモデルだが、この意欲的なブランドの刷新にふさわしく、さまざま部分で手が加えられ、華やかなシリーズとなっている。
FHシリーズの店頭モデルについて、ラインアップと主なスペックを下表にまとめた。上位モデルとなるFH900およびFH700は、23型ワイドのフルHD表示(1920×1080ドット)に対応した液晶ディスプレイを内蔵する。どちらもDVDスーパーマルチドライブ機能に対応したBlu-ray Discドライブを内蔵し、地上デジタル放送のダブル録画、タッチ操作などに対応するが、最上位モデルのFH900はテレビ機能が一層充実しており、地上デジタル放送に加えてBSデジタル、110度CSデジタルの3波に対応した高機能テレビチューナーを備えている。また、USBの最新規格USB 3.0(スーパースピードモード)をサポートしている点も目新しい。
1600×900ドット表示に対応する20型ワイド液晶ディスプレイを内蔵する製品は3モデル用意される。下位の2モデルは買いやすい普及価格帯で、FH550/3Aが基本性能重視、FH530/1ATは低価格のテレビ機能モデルといったすみ分けとなっている。そして、なんといっても注目したいのは、FH550シリーズ上位モデルのFH550/3AMだ。充実のテレビ視聴/録画環境に加えて、Blu-ray 3Dの視聴、2D DVD映像をリアルタイムで3D映像に変換しての視聴、そして2つのWebカメラをPC本体に内蔵して3D映像を撮影する「世界初!! 3つの3D体験」をうたい、3D立体視技術をフィーチャーした意欲作となっている。
今回はこの「FMV ESPRIMO FH550/3AM」にフォーカスし、「3つの3D体験」の魅力に迫ってみよう。
FMV ESPRIMO FHシリーズの主なスペック | |||||
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モデル名 | CPU | メモリ | HDD | 光学ドライブ | WEB MART価格(6月16日現在) |
FH900/5AD | Core i5-450M(2.4GHz) | 4GB | 1TB | Blu-ray Disc | 22万4800円 |
FH700/5AT | Core i5-450M(2.4GHz) | 4GB | 1TB | Blu-ray Disc | 20万9800円 |
FH550/3AM | Core i3-350M(2.26GHz) | 4GB | 1TB | Blu-ray Disc | 19万9800円 |
FH550/3A | Core i3-350M(2.26GHz) | 4GB | 1TB | DVDスーパーマルチ | 16万4800円 |
FH530/1AT | Celeron T3300(2.0GHz) | 4GB | 500GB | DVDスーパーマルチ | 14万4800円 |
FMV ESPRIMO FHシリーズの主なスペック | |||||
モデル名 | 液晶サイズ | 画面解像度 | テレビ機能 | カラバリ | |
FH900/5AD | 23型ワイドタッチ対応 | 1920×1080 | 3波デジタル×2(AVCREC対応) | エスプレッソブラック、スノーホワイト、ルビーレッド | |
FH700/5AT | 23型ワイドタッチ対応 | 1920×1080 | 地上デジタル×2 | エスプレッソブラック、スノーホワイト、ルビーレッド | |
FH550/3AM | 20型ワイド3D対応 | 1600×900 | 地上デジタル×2 | エスプレッソブラック | |
FH550/3A | 20型ワイドタッチ対応 | 1600×900 | − | エスプレッソブラック、スノーホワイト、ルビーレッド | |
FH530/1AT | 20型ワイド | 1600×900 | 地上デジタル | エスプレッソブラック、スノーホワイト | |
FMV ESPRIMO FH550/3AMの最大の特徴は、なんといっても富士通が「3つの3D体験」とアピールする3D立体視技術への対応である。これまでにも、3D立体視技術を採用したPCはいくつか登場してきているが、本機ではさらに一歩踏み込んだ3D体験が可能だ。具体的には、Blu-ray 3Dの視聴、2D DVD映像の3D映像へのリアルタイム変換、そして3D Webカメラによる3D映像/3D画像の作成が可能と、「視聴」「変換」「作成」の3つの3D体験により、3D立体視技術の魅力を存分に味わえる。
平面のものが立体に見える3D立体視技術の基本原理では、両眼の視差を利用している。人間の左右の目は離れているため、同じものを見ていてもそれぞれの目には微妙に角度の違う像が見える。両眼の視差を利用した3D立体視技術では、この違いを人工的に操作することで、実際には立体でないものを立体に感じさせる仕組みだ。
両眼視差を利用して3D立体視を実現する技術にはいくつかの方式があり、映画館や家電製品によって方式が異なる。本製品で利用しているのは「円偏光方式」と呼ばれるものだ。偏光方式は、特定の方向に振動する光のみを通す偏光フィルタを利用する方法で、「円偏光方式」では進行方向に向かってらせん状に振動するよう偏光させる。
具体的には、液晶ディスプレイに偏光の方向を変えた右目用と左目用の2種類の像を合成表示(横1ラインごとに右目用と左目用を交互に表示)し、右目部分と左目部分で偏光方向を変えた偏光メガネを使い、左目には左目用、右目には右目用の像だけを見せる。3Dメガネに電源が不要で重量が軽いこと、対応液晶ディスプレイと3Dメガネが、ともに比較的低コストで3D立体視を実現できることがこの方式のメリットといえる。
なお、このほかに現状で有力な3D立体視技術には、NVIDIAが3D Visionで採用しているアクティブシャッター方式もある。こちらは液晶ディスプレイに右目用と左目用の像を交互に高速に表示し、その表示と連動して3Dメガネの左目部分と右目部分を交互に開閉させることで強制的に右目と左目に別々の像を見せる。こちらは視野角の制限が少なく、また(対応の液晶ディスプレイを利用すれば)解像度も保てる半面、電動シャッターとバッテリーを内蔵した3Dメガネは偏光方式のメガネに比べて重く大きく、液晶ディスプレイと3Dメガネともにコストがかかり、どうしても製品として高価なものとならざるを得ない。
その点、本機は実売で20万円を切る価格を実現しており、より多くの人に3Dの立体視体験をしてほしい、気軽に使ってもらいたいという富士通の強い意気込みを感じ取ることができる。
なお、3Dカメラは初回使用前に初期設定を行う必要がある。デスクトップ上にショートカットアイコンが用意されている「3Dカメラの設定」を実行し、画面の指示に従っていけばよい。加えて、本機で3D表示を最適に利用できる範囲は、液晶ディスプレイの垂直方向から6〜14度の角度、および画面から55〜70センチの距離が推奨されている。20型ワイド液晶一体型PCを利用するごく一般的な範囲だろう。
次のページでは、同社が唱える「世界初 3つの3D体験」を細かく見ていこう。
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2010年7月22日