マイクロソフト、次期「Windows Live Essentials」β版を提供開始

» 2010年06月25日 21時41分 公開
[小林哲雄,ITmedia]

2010年夏登場予定の「Hotmail」は煩雑さを解消

 マイクロソフトは6月25日、次期「Windows Live」製品に関する報道関係者向けの説明会を実施した。冒頭に登壇した同社コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部長の高橋克之氏はWindows Liveの現状を説明。Windows 7出荷後は同社のWindows Liveアプリケーション群である「Windows Live Essentials」が国内OEM PCの約85%に搭載予定であるほか、ダウンロード数も倍増していると述べ、その好調さをアピールした。

 続いて登壇したWindows Live製品を担当するWindows Live&Internet Explorerゼネラルマネージャーのブライアン・ホール(Brian Hall)氏は、実際のデモを交えながら、新しいHotmailとWindows Live Essentialsの特徴を紹介した。

マーケティング統括本部の高橋 克之氏(写真=左)。Windows Liveのゼネラルマネージャーを務めるブライアン・ホール氏(写真=中央)。Windows Liveのタグラインと3つのポイント(写真=右)

日本向けにHotmailホスト環境が用意されており、快適な操作感とともに携帯電話向けの最適化も実現しているという

 ホール氏はまず、日本市場におけるWindows Liveの投資例として、日本が米国以外で唯一Hotmailのサーバを国内に設置する国である点と、日本のケータイ事情を考慮して開発部隊を国内に置いている点を挙げた。同氏によれば、日本向けにHotmailホスト環境を用意することでパフォーマンスを30%向上し、快適なユーザー環境を提供していることに加えて、現在はHotmail Webサービスが国内の300を超える携帯電話で動作することを確認しているという。

 ここで同氏は、「電子メールは当初ISPがメールサービスを提供していたが、次にISPに関係なく利用できるWebメールが登場し、次に企業や携帯(スマートフォン)での利用を想定したメールサービスが現れた」と電子メールの変革を振り返りながら、現在の電子メール環境では、知人だけでなく企業のメーリングリストやSNSなど、複数の場所から大量のメールが発生しており、添付ファイルやWebサイトへのリンクも含まれているため、多くのユーザーにとって受信ボックスが煩雑で分かりにくくなっていると指摘した。

 これを解決するのが現在開発中の新しいHotmailだ。新バージョンでは受信メールを簡単に整理できるほか、(あちこちのウィンドウを移動することなく)Hotmail内で完結できる操作性とOffice Web Appとの連携を実現するために改良を施したという。

新Hotmailは現在の電子メールの課題に3つの解決策を用意している

 新しいHotmailにはフィルタ機能が用意され、例えば「知り合いから」というフィルタをクリックするだけで、アドレス帳に載っている人からのメールだけを整理できるようになった。また、同じ人のやり取りはスレッド表示にすることができ、メールを右クリックして「選択した差出人に対してすべて移動する」を選択すれば、受信ボックスの関連メールをフォルダに移動することもできる。さらに「今後もメッセージを移動する」のチェックを入れることで、振り分け設定も同時に行えるようになった。ホール氏はこの2つの機能によって煩雑な受信メールを効率的に閲覧可能だと説明する。

 一方、添付ファイルの大容量化に関する問題では、オンラインストレージのSkyDriveと連携を行うことで対応した。具体的には、1つのメールにつき50Mバイトまでのファイルを最大200個添付できるようになっているが、これらのデータはSkyDriveにアップロードされるとともに、サムネイルの形で相手に送信される。メールを受信する相手は、SkyDriveアクセスURLを使うことで必要なファイルだけをダウンロードする仕組みだ(なお、この機能はユーザーのSkyDriveの容量を必要とする)。このほか、携帯電話からアクセスした場合は、サムネイル表示が携帯の液晶サイズに合わせた形でリサイズされて、見やすい画面を提供するという。

フィルタの例。ソーシャルネットワークのリンクをクリックするだけでSNSからのメールをすぐに拾い出せる(写真=左)。スレッド表示にも対応した。スレッド表示のオン/オフが可能(写真=中央)。右クリックで同じ送信者のメールを振り分け設定できる。同様に削除指定も可能だ(写真=右)

SkyDriveを使った大容量添付にも対応。相手は必要な画像だけダウンロードすることができる(写真=左)。モバイル端末からWebアクセスした例。デモで使用された端末の画面はワイドVGAなので、その液晶サイズに合わせたリサイズが行われている(写真=中央)。同じIE内でOffice文書の簡易編集も可能だ。Office Web Appsは現在テクニカルβだが、新しいHotmail提供までには正式提供されるとのこと(写真=右)

 新しいHotmailは2010年夏にかけてリリースされる予定だ。

「Windows Live Essentials」は顔認証やリモートデスクトップを提供

 Windows 7とクラウドの連携に関しては、無償ツール群「Windows Live Essentials」(旧名:おすすめパック)が提供される。Essentialsを利用することで、PC内にあるデータを管理し、データをクラウドサービスにアップロードしたり、自宅の(別の)PCやSkyDriveとの連携が可能になるという。

 Essentialsの機能を個別に見ていくと、画像を管理する「フォトギャラリー」に顔認証が用意されているのが目を引く。これは人間の顔を認識し、顔データにタグ付けをして自動的に分類する機能だが、さらに学習によって関連画像を自動的に抽出することも可能だという。また、ある写真では顔が横を向いているが、別テイクでは正面を向いている、というような複数の画像を合成して1枚のベストショットを作成する合成機能や、キズやしわを簡単な操作で修正できるレタッチ機能も加わっている。

Windows 7上のデータをクラウドに載せるためのツールが「Windows Live Essentials」だ。写真や動画の管理/編集/アップロードのほか、ファイル共有やリモートデスクトップ、Windows LiveメールやMessengerが統合されている。また、LiveメールにもHotmail同様のSkyDriveを使ったフォトアルバムメールが送付できる

フォトギャラリーには自動顔認証を使った人物タグ機能が新設された。1つの画像にタグを付けるとライブラリの中から関連しそうな画像を自動的に検索し、学習させることで精度を上げる仕組みだ。ちなみに動物の顔は認識しないとのこと。レタッチ機能は修正したいところを囲むだけの簡単操作だ。このゴハン粒もきれいに取れる。鼻のテカリにも有効だそうだ

ベストショット機能は複数の画像を用意し、対象エリアを囲むことでユーザーにどちらを選ぶか選択させる(写真=左)。これを使えば簡単に全員が正面を向いた記念写真が作れる(写真=中央)。ムービーメーカーでは、複数の静止画から動画を作る「オートムービー」の機能にテーマが選べるようになった。テーマにあうトランジションや曲をつけた動画が簡単に作成できる(写真=右)

 動画を作成する「ムービーメーカー」はHDに対応し、オートムービーにテーマを選択することですばやく簡単にムービーを作成できるようになった。また、データの同期を行うSyncでは、PC間のフォルダ同期に加えて、SkyDrive上のリモートフォルダとの同期が可能になり、リモートデスクトップも追加されている。

 新しいWindows Live Essentinalsは、同日β版のダウンロードが開始され、正式版は年末までに提供される予定だ。なお、最新バージョンのWindows Live Essentinalsを利用するにはWindows Vista/7が必要で、Windows XPユーザーはこれまでに提供されていた現行バージョンが最後になる。

Sync機能の一環としてリモートデスクトップが用意された。OSにリモートデスクトップ機能がないHome系Windowsでも利用可能だ(写真=左)。ファイルの共有は、PC間だけでなくSkyDriveストレージ(最大2Gバイト)も対象になり、出先のPCから(自分のPCでなくても)必要なファイルを引き出せるようになる(写真=中央)。Windows Live Essentialsのβ提供は同日より開始。Hotmailは夏までに順次提供を開始するという(写真=右)

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