前編(初級者のためのRAW現像入門(前編)――RAW撮影のススメ)では、RAW現像のメリットや、現像ソフトによってもその仕上がりが異なってくることを解説した。
その現像ソフトの1本、アドビシステムズ「Photoshop Lightroom」(以下Lightroom)は、デジタル写真の入力から、管理、編集、公開、出力までに対応したRAW現像ソフトだ。今年6月にメジャーバージョンアップを果たした「Lightroom 3」が発売され、さらに8月には、対応カメラとレンズの追加、バグフィックス、機能向上を図った製品候補版「Lightroom 3.2 RC」が公開された。
バージョン3での主な改良点は、プロファイルによるレンズ収差の自動補正機能や、遠近感の補正機能、フィルムの粒子シミュレーション機能、テザー撮影の追加などだ。管理面では、動画ファイルの入力・管理に対応したほか、写真共有サイト「Flickr」へのアップロードが可能になった。またバージョン3.2 RCでは、Facebookへのアップロードに対応した。
新機能をチェックする前に、Lightroomの基本的な機能と使い方をここで簡単に確認しておこう。Lightroomは、初代バージョンから一貫して「ライブラリ/現像/スライドショー/プリント/Web」という5つのモジュールで構成されている。この5つのモジュール名が画面右上に表示され、そこをクリックすることで画面を切り替えて作業を行う。
作業は、まず「ライブラリ」モジュールにて、現像したいデータを読み込むことから始める。読み込める静止画ファイルは、各社のRAWデータのほかJPEG、TIFF、PSD形式に対応。動画ファイルはAVI、MOV、MP4の各形式をサポートする。読み込んだデータは、サムネイルとして表示され、表示の拡大/縮小、並べ替え、EXIFなどのメタデータの確認と編集、キーワードの設定などが行える。また、各画像にレーティング(優先度)やフラグ、カラーラベルを設定し、画像を多元的に管理・分類できることが特徴のひとつだ。
次の「現像」モジュールでは、さまざまな画像補正を行う。利用できる機能は、ホワイトバランス補正、露出補正、階調補正、トーンカーブ、色相と彩度、明瞭度、シャープネス、ノイズ低減、レンズ補正、トリミング、スポット補正などだ。
これらの補正機能は、RAWデータを直接加工しているわけでなく、補正の情報として記録されるだけだ。そのため、補正を何度繰り返してもオリジナルのデータは維持され、元のクオリティは損なわれない。いわゆる「非破壊編集」と呼ばれる仕組み。これはLightroomに限らずRAW現像ソフトに共通した特徴である。
そして、狙い通りの状態に画像を補正できたら、書き出し機能によってJPEGやTIFF、PSDなどの形式で出力する。さらに必要に応じて、「スライドショー」モジュールにてPDFやMP4のスライドショーファイルに出力したり、「プリント」モジュールにてレイアウト印刷したり、「Web」モジュールにてHTMLやFLASH形式の画像ギャラリーを作成したりもできる。
Lightroomの諸機能の中で、個人的に特に重宝しているのは、各種の補正のパラメータを自由にコピー&ペーストできることだ。例えば1枚の画像に対して、ホワイトバランス補正と露出補正、トーンカーブ、シャープネス、ノイズ軽減を適用し、最適な状態に仕上げたとしよう。その補正のパラメータをコピーすれば、同一条件で撮影した他の複数の画像に対して、任意のパラメータを選んで一括ペーストすることができる。つまり、似たような設定で撮影した画像がぼう大にある場合、個々の画像ごとに微調整を加えつつ、一括してRAW現像ができるのだ。Lightroomはその使い勝手が非常にいい。
各種補正のパラメータを「現像プリセット」として保存できる点も便利だ。初期設定では、Lightroom内にさまざまなプリセット(クロスプロセスやポジプリント調、昔風、冷調、赤外線フィルムなど)が用意されているほか、一般ユーザーが作成したプリセットをウェブからダウンロードすることもできる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.