McAfeeの買収に見るIntelの「全方位外交」Intel Developer Forum 2010(1/3 ページ)

» 2010年09月15日 18時57分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 最近のIT業界における企業動向で、関係者に大きな衝撃を与えたのが、2010年8月19日に発表された米Intelによる米McAfeeの買収だ。その金額は約77億ドルに上る。この買収は、IT業界で起こりつつある“大きな変化”の兆候であると同時に、Intelが今後目指すべき道を示した事例としても見ることができる。Sandy BridgeとともにIDF 2010におけるもう1つの重要なテーマとして注目している参加者も多い。

 IDF 2010の初日に行われた米Intel社長 兼 CEOのポール・オッテリーニ氏による基調講演では、買収におけるIntelの公式声明ともとれる内容も含まれていた。その“公式声明”が示唆する「今後数年、あるいは十数年先のIntel」を考えてみたい。

PCの“その先”を目指すIntelのロードマップ

 IntelがMcAfeeの買収を発表したとき、同社が開催した電話会議の席でオッテリーニ氏は「PC分野もさることながら、Intelではその先も見据えてMcAfeeの買収を決断した」と語っている。ここでいう“その先”とはPC以外の分野、いわゆる“スマートフォン”などの携帯機器、家電、そして、まだネットワーク化されていない各種デバイスすべてを含んだものといわれている。

 こうしたデバイスの台数は将来的にPCの10倍、あるいはそれ以上に増加すると予想され、各メーカーにとって多くのビジネスチャンスとなる。IntelはAtomを中心にスマートフォンなどの組み込み分野へ進出を狙っているが、これも“ポストPC”の時代を意識した動きだ。McAfeeの買収で狙う市場も、Atomが目指す“ポストPC”の未来で期待される可能性の部分と考えられる。

 とはいえ、現在のIntelはPCで使うCPUの開発と製造を行う半導体メーカーだ。IDF 2010の基調講演に登場したオッテリーニ氏は、米Gartnerの調査資料をベースにしたスライドを提示し、今後もPC市場が力強い成長を続けていくと強調している。2010年の夏からPC市場の回復傾向に急ブレーキがかかり、Intelの2010年後半の決算も微妙な空気が漂いつつあることが事前に伝えられているが、“その先”の市場とともに、PC市場の現況が最大の関心事であることが基調講演におけるオッテリーニ氏の発言からも伝わってくる。

米Intel社長 兼 CEOのポール・オッテリーニ氏(写真=左)。米Gartnerの調査データを基にしたPC市場の成長率推移予測(写真=右)

 こうした「業態の移行期」にある同社の現在の立場と今後目指すべき方向性について、オッテリーニ氏は次のように説明する。「2000年まで、Intelは純粋にCPUを製造する半導体企業だった。ところが現在、数々の買収を経てIntelの業態は変化しており、もともとあったハードウェアだけでなく、プラットフォームからソフトウェア、サービスまで、あらゆる垂直方向の技術を備えたソリューション企業へと生まれ変わっている」(オッテリーニ氏)

 この説明を顕著に示すのが2009年6月のWind River買収だ。この買収でIntelは組み込み機器向けのリアルタイムOS(RTOS)と開発ツール、そして関連ミドルウェアといった基本的なソフトウェア技術と製品を持つことになった。Wind Riverの主力製品は「VxWorks」と呼ばれる組み込み向けRTOSと、LinuxをベースにしたRTOSの「RT Linux」(Wind River Linux)だが、これとは別に、IntelはNokiaとの共同プロジェクトで「MeeGo」というスマートフォン向けOSプラットフォームを開発している。このように、将来的に成長が期待される分野のOSプラットフォームをIntelはひと通りそろえている。

2000年時点のIntelと現在のIntel。カバーする領域がハードウェアのみの状態から、現在ではソフトウェアからサービスまで広がっている

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