なぜ画面に直接触って操作できるのか?――「タッチパネル」の基礎知識ITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第8回(2/3 ページ)

» 2010年09月27日 10時00分 公開
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超音波表面弾性波(SAW)方式

 「超音波表面弾性波(SAW)方式」は、主に抵抗膜方式の短所である低い透過率を解消し、明るく視認性が高いタッチパネルを実現するために開発された。単に「表面弾性波方式」や「超音波方式」とも呼ばれる。単体の液晶ディスプレイ以外ではPOSやATM、キオスク端末など、公共スペースでも広く使われている。

 この方式では、指などで触れた画面の位置を超音波表面弾性波の減衰によって検知する。内部構造としては、ガラス基板の隅に配置した複数の発信子(圧電トランスデューサ)から、パネル表面に振動として伝わる超音波表面弾性波を出し、発信子の向かい側に設置した受信子でこれを受ける。画面に触れた場合、超音波表面弾性波が指などに吸収されて弱まるため、この変化を検知することで、位置を特定できる仕組みだ。もちろん、指で触ったときに振動を感じるようなことはなく、操作性はよい。


 長所としては、フィルムや透明電極を画面に張り付けない構造なので透過率が高く、視認性で優位に立つ。また、表面のガラスによって静電容量方式以上の耐久性や耐傷性が確保できる。万が一、表面に傷が付いてもタッチ操作の検出が行えるのもポイントだ(静電容量方式では表面の傷で信号が途絶えることがある)。構造上、経時変化や位置のズレが発生せず、高い安定性と長寿命が得られる。

 短所では、超音波表面弾性波を吸収できる指や柔らかいもの(手袋など)でなければ、タッチ操作が行えない点が挙げられる。基本的にペンは専用のものしか使えず、パネル上に付いた水滴や小さな虫などの異物にも反応してしまう。

 昨今では製造技術の向上などにより、コストパフォーマンスも高まっており、デメリットが少ない方式といえる。

光学方式(赤外線光学イメージング方式)

 「光学方式」のタッチパネルには複数の検出方法があるが、最近では赤外線イメージセンサーを利用し、三角測量により位置を検出する「赤外線光学イメージング方式」の製品が大型パネルを中心に増えつつある。

 構造としては、パネル上辺の左右端に赤外線LEDを1つずつと、イメージセンサー(カメラ)を配置し、残る左辺、右辺、下辺には入射した光を入射方向に反射させる再帰反射テープを張り付けている。指などで画面に触れると、赤外光が遮光された影をイメージセンサーがとらえ、三角測量によって座標が求められる仕組みだ。


 長所としては、超音波表面弾性波方式と同様に透過率が高いほか、指や手袋をしたままの状態、通常のペンを使って入力ができ、マルチタッチ操作もサポートする点が挙げられる。また、構造上パネルの大型化が容易で、センサー部に直接触れないため耐久性が高いといった特徴も備えている。

 短所は、イメージセンサーを表示領域の外側に設けることからフレーム部分が分厚くなる点、検出精度が外光の影響を受けやすい点だ。例えば、照明が画面に強く反射したり、光沢素材などでタッチ操作した場合に誤検出が発生しやすい。

 Windows 7のリリース以降、同OSのマルチタッチ機能に対応した液晶ディスプレイや液晶一体型PCでは、この検出方式を採用した製品が多数発売されており、今後はさらなる普及が見込まれる。

電磁誘導方式

 上記のタッチパネルとは少し毛色が異なるが、「電磁誘導方式」にも触れておこう。液晶ペンタブレットやタブレットPC、プリクラ端末などに採用されている方式だ。

 そもそもディスプレイを搭載しないペンタブレットの入力方式だが、センサー部を液晶パネルに統合し、高精度のタッチパネルを実現している。磁界を発生する専用ペンで画面をタッチすることで、パネル側のセンサーが電磁エネルギーを受け取り、位置を検出する仕組みだ。

 入力には専用ペンを使うため、指や汎用のペンで入力できず、用途は限られるが、周辺環境の影響や不意に画面を触ってしまうことでの誤動作はないため、一長一短ではある。ペンタブレット向けの技術なので、ペンの筆圧(静電容量)を細かく検知して線の太さを滑らかに変えるなど、検出精度は優秀だ。画面の透過率や耐久性も高い。

タッチパネル検出方式の傾向をまとめる

 これまで取り上げたタッチパネルの特徴を下表にまとめた。同じ検出方式でも実際のタッチパネル搭載製品では、性能や機能は大きく変わってくるため、一般的な製品の特徴として参照してほしい。また、タッチパネルの技術革新や低コスト化は日々進んでいるため、あくまで2010年9月現在の傾向として見てほしい。

主なタッチパネル検出方法の違いと特徴
検出方式 抵抗膜 静電容量 超音波表面弾性波 赤外線光学イメージング 電磁誘導
光透過率
指でのタッチ ×
手袋でのタッチ × ×
ペンでのタッチ △(専用ペン) ○(素材による) ○(素材による) ◎(専用ペン)
耐久性
耐水滴
コスト

 このように、タッチパネルの各方式には長所と短所が存在し、現状ではすべての面において勝っている検出方式はない。そのため、用途や環境に応じて最適な製品を選ぶことが重要になってくる。

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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日