皆河さんのデータベースに対する考え方も深い。驚いたのは、これだけさまざまなものをデジタル化してきたにも関わらず、アナログの紙を捨てていないということだ。
「スキャンして取り込んだとしても、絶対にオリジナルは捨てません。データベースはいわば整理をしてくれる人であって、執筆の作業などはPCで完結できるわけではないんです」
事実、皆河さんの仕事場は書棚だらけで、書籍やパンフレット、新聞のコピーなど紙の資料であふれている。
「例えば、100件もある項目から引用したい文章を探すのって、PC上でやるのは面倒じゃないですか。それだったらデータベースに入ってる関連ファイルを全部プリントアウトして、必要な資料だけ選んでマーカーを引いていったほうが手っ取り早い。これって全然、エコじゃないんですけどね」(笑)
もちろん、GUNDAM OFFICIALSのときにサンライズでコピーした紙の資料もすべて残しているという。
「GUNDAM OFFICIALSのときに作ったアタリ用画像のデータベースって、実はHDDが飛んでなくなってしまったんです。でもオリジナルは手元にあります。リビングルームにちょっと盛り上がっているところがありますよね? あの下には横倒しにした本棚があって、当時集めたガンダム関連の資料が収まっています。いつもその上に座っているので、よく『お前はガンダムの上にあぐらをかいている』なんて言われてます(笑)」
膨大にあるアナログの資料を効率よく活用するために、データベースを構築する。その視点のゆらがなさには、頭が下がる思いだ。昨今の「自炊」ブームでいろいろなものをデジタル化したはいいものの、微妙にHDDの肥やしになっているという筆者にとって、目からウロコな話だった。ただ、1つ気になったのは、どうやって膨大な紙の資料をデジタル化しているのかということ。データベースを作ればあとあと便利だということは分かっているが、根性なしな筆者は紙の山を見つめるとどうしても途中で気持ちがなえてしまう。
「それは修行ですよね。テレビでも見ながらひたすらがんばるんです(笑)」
記憶と記録を集約し、いつでも引き出し可能な状態にしておくというやり方は、出版業だけでなくあらゆるビジネスで生きてくるはず。みなさんもぜひ皆河さんの事例を参考に、FileMakerでデータベースの構築を始めてみてはいかがだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.