「libretto W100」誕生秘話――なぜ2画面タッチパネルのミニノートPCなのか?完全分解&ロングインタビュー(1/6 ページ)

» 2010年10月12日 16時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]
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25周年モデルの一角を担う個性派ミニノートPCが生まれるまで

 国内外のメーカーが多種多様なミニノートPCを投入している中にあって、とりわけ異彩を放っているのが「libretto W100」だ。ハードウェアのキーボードを思い切って省き、2画面タッチパネル液晶を搭載するという、東芝のノートPC事業25周年記念モデルならではの挑戦的なミニノートPCに仕上がっている。

 今回はこのユニークな2画面タッチパネル搭載ミニノートPCがどのように生まれたのか、また内部構造がどのようになっているのか、libretto W100の開発チームに実機の分解モデルを用意してもらい、じっくり話を聞いた。インタビューに応じてくれたのは、商品企画を取りまとめた三好健太郎氏、青梅事業所でハードウェアの開発を行った高橋登志夫氏、マーケティングを担当した上條秀雄氏だ。3人ともlibrettoの開発に携わるのは今回が初めてという。

インタビューに応じてくれた「libretto W100」の開発陣。東芝 デジタルプロダクツ&ネットワーク社 商品統括部 コンシューマPC第二担当 新規事業担当 主務 三好健太郎氏(左)。東芝 PC&ネットワーク社 PC開発センター PCシステム設計部 第五担当 参事 高橋登志夫氏(中央)。東芝 デジタルプロダクツ&ネットワーク社 PC第一事業部 PCマーケティング部 プロダクトマーケティング担当 主務 上條秀雄氏(右)


 なお、東芝は2010年10月5日、個人向けPCの2010年秋冬モデルを発表したが、libretto W100に後継モデルは登場せず、継続販売となっている。

東芝のノートPC開発における原点を追求したら、こうなった?

2画面タッチパネル搭載のlibretto W100

―― 約5年ぶり(2005年4月発売の「libretto U100」以来)にlibrettoが復活したわけですが、これまでとまったく違うスタイルに変化したのには驚きました。まずは商品企画がいつからスタートしたのかを聞かせてください。

三好 商品企画の立場から、常にノートPCをどこまで小型化できるのか、そのためにはどのようなスタイルがあり得るのか、といろいろ試行錯誤していました。その1つの結果が今回のモデルですが、実はlibrettoの新機種を作るということが最初に決まっていたわけではありません。

 もちろん、librettoの新機種が欲しいという要望は社内外に根強くありました。そして追い打ちをかけるように、上層部からはノートPC事業25周年目を飾るにあたり、「他社が作れない、東芝ならではの製品を出せないか」、正確には「出せ」といわれました(笑)。1年半くらい前のことですね。そこで、他社にはなく東芝でしか作れないような“とがった”ミニノートPCを本格的に考え抜いて製品化したら、最終的にlibrettoに収まったという流れになります。

上條 実はNetbook(現在のdynabook UX)をリリースしたときに「librettoブランドで出してはどうか」という意見が社内で出ました。しかし、librettoは社内でもかなりこだわる人が多いブランドです。そのときは相当もめにもめた結果、librettoではない製品としてリリースした経緯があります。今回はようやくlibrettoという名を冠した新機種を出すことができました。

三好 あのときNetbookをlibrettoブランドで発売していたら、きっとlibretto W100は生まれなかったでしょう。そういう意味で、ほかとはまったく違う製品をlibrettoとして世に出せて本当によかったです。既存のミニノートPCとはまったく違うものを考え出さなければ、今回のlibretto復活はなかったと思います。

ハードウェアキーボードがなく、2画面タッチパネルという個性的なスタイル

―― 確かにキーボードレスで2画面タッチパネルというスタイルは、ほかとはまったく違いますね。展示会の参考出展では見たことがありますが、東芝がlibrettoとしてこうした新機種を出してくるとは予想外でした。このスタイルはどのように決まっていったのでしょうか?

三好 まずは東芝のノートPC開発の原点である「持ち運べるフルスペックのマシン」をどう追求するか考えました。既にNetbookなどの低価格ミニノートPCが市場に多数出回っていて、それを単に小さく軽くしただけでは、通常のノートPCラインアップの範囲内にとどまって、きっと埋もれてしまうだろうとの予感がありました。

 そこで、小さい面積、小さい体積のボディを有効に活用できるほかの手だてはないものかと思い、いっそキーボードの呪縛(じゅばく)を解き放って、キーボード代わりになる新しい入力方法を採り入れられないかと、発想を大きく変換しました。具体的には、人間の指で押しやすいハードウェアキーボードを想定すると、ボディの横幅はほとんど決まってしまうため、この制限を外してソフトウェアキーボードで代替すれば、もっと可能性が広がるのではないかというアイデアです。

 その一方で、持ち運びのしやすさや、これまでノートPCを愛用してきたユーザーの印象などを考えると、2つ折りのクラムシェル型ボディがやはり使いやすいでしょう。こうして、2009年の終わりくらいに2画面タッチパネルのスタイルがいいのではないか、という話で固まってきました。

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