10月8日から上野の東京国立博物館(平成館)で公開される特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」に先立ち、報道関係者向けの内覧会が実施された。同展覧会では、8世紀半ばに造立された東大寺盧舎那仏(とうだいじるしゃなぶつ)にかかわる国宝や重要文化財が多数展示される。中でも、2度の戦火(平安時代と室町時代に多くの建物が焼失した)を経てなお、奈良時代からほぼ現存する形で受け継がれてきた高さ約4.6メートルの「八角燈籠」が寺外で初めて公開されるほか、古代に制作された誕生仏(誕生時の釈迦像、右手で天を、左手で地を指している)としては日本最大の「誕生釈迦仏立像」など、まさに“天平の至宝”というべき国宝が並ぶ。
開催期間は10月8日から12月12日まで。また、11月2日から11月21日までの期間限定で、東大寺大仏殿の北西にある正倉院の宝物も特別出品される予定だ。
数々の寺宝が並ぶ同展だが、正式名称は「東大寺大仏―天平の至宝―」、もちろんあの大仏も“展示”されていた。とはいっても、約14.7メートルの高さがある大仏を奈良から移動するのは現実的ではないため、最新のテクノロジーを駆使したバーチャルリアリティー(VR)映像で紹介されている。長辺8メートルを超える大画面スクリーンに、創建時の大仏が映し出される様子は圧巻だ。
映像制作を手がけたのは凸版印刷。同社は10年ほど前から文化財のバーチャルリアリティー映像制作に取り組んでおり、今回で27作品目になるという。これまで、奈良文化財研究所の監修で平城京の町並みを再現したVR映像なども残している。同社文化事業推進本部デジタルコンテンツ部の三枝太氏は「たんなる解説映像ではなく、VRを駆使することで文化財の保存にもなりうるコンテンツを作りたい」とその狙いを語る。
実際、フルHD(1920×1080ドット)の約4倍以上の解像度を持つソニーの「4K SXRD」を搭載したプロジェクターから投影される映像は非常に高精細で、手のアップや光輪を取り去った背中など、通常は見ることができない細部までリアルに再現されている。また、初めての取り組みとして、天井投影用にも4台のプロジェクターを用意し、より没入感を高める工夫も凝らした。
しかもこの映像、上映されているのは約12分のコンテンツだが、ただのムービーではなく、各プロジェクター用に8台、制御コンソール用に1台、計9台の日本HP製PCを使ってリアルタイムにレンダリングしているというから驚きだ。通常の上映ではあらかじめ決められたシナリオで映像を流すだけだが、実際は展示室の中にある制御コンソールから視点(カメラ)の位置を移動し、大仏殿の中を自由に歩き回ることもできるという。「何か特別な講演ではインタラクティブな表現も可能です。今回特に注力したのは顔や手の質感ですね。是非体感してください」(三枝氏)。
会期 2010年10月8日(金)〜12月12日(日)
会場 東京国立博物館 平成館
所在地 東京都台東区上野公園13-9
開館時間 9時30分〜17時(土・日・祝日は18時まで、毎週金曜日は20時まで開館)
休館日 月曜日(ただし10月11日、11月8日、11月15日は開館し、10月12日は休館)
観覧料 当日1500円(一般)/1200円(大学生)/900円(高校生)
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