「スレート、Netbook、ノートPCは共存共栄する」――ASUS、ジョニー・シー会長が語るアップルをモデルに世界3位へ(1/2 ページ)

» 2010年10月19日 17時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

2011年までに世界3位、日本では外資系で1位のシェアを目指す

ASUS台湾本社のジョニー・シー(Jonney Shih)会長

 自作派のPCユーザーにとっては、ASUSTeK Computer(ASUS)と聞くと、マザーボードが思い浮かぶかもしれないが、グローバルではPC本体や周辺機器、さらにスマートフォンなど、多数の製品ジャンルを展開するメーカーとして知られている。日本においても、Netbookの先駆けとなったEee PCシリーズを2008年に投入して以来、PCメーカーとしての存在感を大きく高めたといえるだろう。

 そんなASUSが10月14日、個人向けPCの2010年冬モデルを発表した。これまでは不定期に単発で製品発表を行うことが多かったASUSだが、今回は9機種16モデルを一斉に投入している。しかも、台湾本社からジョニー・シー(Jonney Shih)会長が来日し、国内の製品発表会に初めて登壇する力の入れようだ。


ASUSの日本市場での歩み

 シー氏はPC系メディア向けのグループインタビューにおいて、「日本は特別に優先順位が高い市場であり、日本のユーザーが求める世界的に高い品質とデザインを提供することで、ASUSのポジションを上げていく」と述べ、今後は日本市場によりコミットしていくことを明らかにした。ASUSの日本法人によると、2011年までに日本の外資系PCメーカーでトップシェアを獲得し、さらには国内メーカーも含めて5位以内のシェアを目指すという。

 現状で国内の外資系PCメーカーとしては、デル、日本HP、日本エイサー、レノボ・ジャパンといった顔ぶれがシェア上位に並び、特に台湾PCメーカーの双壁(そうへき)である日本エイサーも「2011年までに日本市場でトップ5のメーカーに成長する」と明言している。こうした状況から、ASUSにとって非常にアグレッシブな目標といえる。

 一方、ワールドワイドでの目標については「IDCやGartnerによる直近の四半期の調査結果では、コンシューマ向けPCの市場シェアで東芝を抜いて世界5位に入った。既にEUの多くの国や中東の国々では2位または3位のシェアを得ている。2011年までにPC全体で3位以内に入ることが目標で、ノートPCのシェアは10%を14%に伸ばしたい」と語った。

 2009年にはシェア拡大の施策として、東芝のノートPC部門の買収を計画中と台湾紙に報じられたASUSだが、「我々は買収でのシェア拡大より、自社が有機的に成長していくことを望んでいる。研究開発の強化や品質の向上、革新的なデザインの追求を行うことで、競合より高いパフォーマンスが引き出せると確認しており、実際ワールドワイドではよい結果を残している」と、ASUS自身の成長に注力する姿勢を強調している。これは積極的な買収で事業規模を広げてきたライバルのエイサーへのけん制かもしれない。

 ちなみに、シー氏が気になる日本のPCメーカーは、デザインとブランド力の高いソニー、国内外のシェアが高い東芝の2社とのこと。また、ワールドワイドではHPがすべてのデジタル分野に強いソリューションを提供しているとしながらも、高いデザイン性、ユーザフレンドリーなインタフェース、そして技術力からアップルは最も尊敬しており、さまざまな面でASUSのモデルとしているという。

デザイン力が成長のカギ

 シー氏は、ASUSの成長戦略を「巨大なライオン」と呼ぶ。これは百獣の王のごとく、あらゆる面、特に品質とデザインの2つにおいて競合メーカーと差別化し、ブランドポジションを確立するというものだ。シー氏自身はエンジニア出身であり、「ASUSはエンジニアリング志向のメーカーであり、3000人のエンジニアを抱えている。マーケティングやセールスも確かに重要だが、ユーザーの体験や満足度向上のため、自社の技術力を品質とデザインに注いでいる」と語る。

 その中でもASUSがとりわけ重視しているのがデザインの向上だ。現在、ASUSはアメリカ、中国、フランス、イタリア、日本、台湾などワールドワイドで約150人のデザイナーを抱えており、自由な環境でデザインに取り組めるよう特別な就業規則を設けている。例えば、就業時間内に水泳やハンググライダーでリフレッシュするのも自由で、このようなデザイナーにとって適切な環境がよいデザインを生む土壌になっているとのことだ。

 シー氏はよりよいデザインのためには、「(芸術的思考を担うという)右脳と(論理的思考を担うという)左脳の両方を同時に使うことが重要であり、中国語でいうところの『同理心』、つまりユーザーのさまざまな立場に立って考えることで、デザインとエンジニアリングの両面に優れるような製品が作り出せる」と述べている。

 また、デビッド・ルイス(David Lewis)氏カリム・ラシッド(Karim Rahid)氏のような著名なプロダクトデザイナー、あるいはBang & Olufsen ICEpowerといったブランドとのコラボレーションも行っているが、「NX90Jq」では「ゴールデンイヤー」と呼ばれる社内のオーディオ開発チームが音響開発の7割近くを担うなど、社内の技術力蓄積とそれによる自社製品の競争力強化を重視しているとした。

フラッグシップモデルの「NX90Jq」は特別な開発予算とプロジェクトチームを組み、約1年の歳月をかけて開発された(写真=左/中央)。ASUSのノートPCの開発期間は、最も短期間で3カ月、通常は6〜9カ月かかるという。カリム・ラシッド氏が手がけたデザイナーズモデルの「Eee PC 1008KR」(写真=右)

 製造体制については、2008年に製造部門を100%出資の子会社であるPegatronとして独立させたが、現在は出資比率が下がりオープンな状態になっているという。現状では製造の70%程度をPegatronが受け持っているが、将来的には50%程度までこの比率を下げ、外部のOEMを活用することで、より最適なタイミングで新製品を投入できるよう体制を整えていく計画だ。

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