QNAPのNASキット「TurboNAS」シリーズは、多くのラインアップが、発売当初のARM系CPUからAtomやCore 2 Duoのx86系CPUにシフトしたほか、メモリの増強、ベイ数の増加など、スペック面の増強が図られている。その一方で、ホットスワップ対応トレイにも進化が見られる。ベゼルを跳ね上げるように開くと、てこによって軽い力でHDDの取り出しが可能なカギ付きのトレイは、ラックマウントサーバやディスクアレイでもよく見られる形状だ。
トレイへの取り付けはねじ止めだが、ねじ穴に工夫があり、3.5型だけでなく2.5型のHDDも利用可能になっている。2.5型を利用すればHDD自体の発熱量が少なくなるだけでなく、ケース内のスペースが多くなるためにエアフローが改善され、システムが発する熱を抑えられる。また、消費電力が小さいこと、動作音が小さいこともメリットだ。特に多ベイ型のモデルでは、ディスクスピンアップの音はかなり大きくなるため、起動時や省電力モードに移行してから復帰する際の静音化の効果は大きい。容量単価やパフォーマンスなどでは3.5型に及ばない2.5型だが、用途によっては2.5型専用の「SS-439 Pro」や「SS-839Pro」でなくとも十分選択肢となりうる。
この2.5型の優位性をさらに追求したのが今回取り上げるSSDだ。SSDは駆動部品がなく、無音で動作する。特にファンレスの「TS-119」と組み合わせた場合には“完全無音NAS”が実現する。
もっとも、SSDはインタフェースこそHDD互換とはいえ、フラグメンテーションやウェアレベリング、トリムコマンドなど、HDDとは異なる“作法”も少なくない。HDDが使える機器すべてにSSDが使用できるわけではないということに注意が必要だ。そして、TurboNASシリーズでメーカーが動作保証しているSSDが、ユニスターの販売する「SEKITOBA」である。
NASを完全無音にするメリットは大きい。一般にPCはユーザーが使用しているときに起動させるが、NASなどのサーバは24時間稼働が前提だ。ワンルーム環境では「動作音が気になって眠れない」という理由で導入をためらっていた人もいるだろう。TurboNASシリーズでは電源オン/オフをスケジューリングできるため、夜間は電源オフにする、という使い方もできる。しかしその一方で、TurboNASシリーズは多機能かつ拡張可能なNASであり、PCレスでさまざまな機能を利用できるという強みもある。
それでは、人がいないときや使っていないときに、どのようなTurboNASの活用方法があるだろうか。その代表となるのがダウンロードだ。TurboNASシリーズには当初から「ダウンロードステーション」という機能が搭載されている。これはWebサイトなどで一般的に利用されているダウンロードプロトコルのHTTP/FTP、P2PのBitTorrentをサポートしており、ダウンロードステーションにURLやトレントファイルを登録しておくことにより、PCレスでダウンロードを行ってくれるというものだ。
ダウンロードステーションに登録する際は直接ダウンロードステーション管理画面から行うほか、Windows/Macとの連携ソフト「QGet」にドラッグ&ドロップしたり、直接開くことでもできる。ほかにも複数のURLをまとめて登録し、Rapidshareからのダウンロードにも対応した「RapidGet」「JGet」などもある。さらに、iPhone/iPad用の「QGet Remote」「QGetMobile」「QGetMpbile HD」もリリースされている。
また、TurboNASの拡張機構であるQPKGを導入すれば、さらに機能を拡張可能だ。「MLDonkey」はeDonkey/eMuleをサポートしており、管理画面を使ってファイルの検索からダウンロードまで一括して行うことができる。「GetNZB+」や「SABnzbdplus」はニュースグループを用いてサイズの大きなバイナリファイルを配布するNZBをサポートする。現在、ニュースグループをサポートするISPは激減しているが、その代わりニュースグループの配送にフォーカスした有料サービスは健在だ。アーティクルの保管時間もどんどん長くなる傾向にあり、目的がはっきりしていればこうしたサービスを利用するのも手だ。
TurboNASは、TS-x10/TS-x19のARM系とそれ以外のx86系に大別できる。当然ながらバイナリレベルでの互換性がないため、QPKGもそれぞれのものが用意されている。ARM系にないものもあり、その代表がJavaの実行環境であるJREだ。
ところが、実はARM系TurboNASにもJREをインストールできる。ARM用バイナリのJREは再配布が許可されていないため、QPKGとしては用意されていないものの、導入用のQPKGとバイナリを別々にダウンロードすればインストールは簡単だ。JREを必要とするアプリケーションとしては、PS3向けDLNAサーバソフト「PS3 Media Server」がある。DLNAサーバとしては標準でTwonky Mediaが搭載されているものの、トランスコードが無効化されている。一方、PS3 Media Serverはトランスコード、ISOファイルをサポートしており、PS3を所有しているのであれば別途導入する価値はあるだろう。
また、QPKGだけでなく組み込み機器向けパッケージ「Optware IPKG」も利用できる。Optware IPKG自体はQPKGからインストールできるが、パッケージ導入はコマンドラインで行う必要があるため、SSHかtelnetを有効にしてTeraTermなどから操作する。基本的なオプションは次のとおりだ。
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