2011年のAMDは“APU”で総攻撃元麻布春男のWatchTower(1/3 ページ)

» 2010年11月15日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

和解で“足かせ”が外れたAMDは総攻撃を決意

 2010年11月9日(現地時間)、AMDは2010年のFinancial Analyst Dayを開催した。例年、秋に金融関係のアナリスト向けに開かれているイベントで、Webキャストで全世界に配信される。

 冒頭のあいさつに立ったCEOのダーク・マイヤー氏は、2010年をリストラ完了の年と位置づけるとともに、2011年を“APU”による攻勢の年とした。AMDは2008年に製造部門の分離を伴うリストラを発表し、2009年にはGLOBALFOUNDRIESとして分社化した。さらにAMDは、最大のライバルであるインテルとの長年にわたる独禁法訴訟を2009年11月に和解し、和解の一部として12億5000万ドルを受け取っている。そのインテルは、2010年8月にFTCとの係争でも和解しており、これにはx86互換CPU設計会社が、製造委託先(ファウンダリ)を自由に選択できる条項が含まれている。これにより、AMDを含む正当なライセンシー(インテルとの間に有効な特許ライセンスを持つ会社)は、自由に委託先を決めることが保証された。

 AMDは、インテルとの和解で受け取った12億5000万ドルをリストラ費用に充当した。さらに、和解で得られた条件によって、GLOBALFOUNDRIESへの出資比率を大幅に引き下げることも可能になった。製造委託先を自由に選択できるということは、GLOBALFOUNDRIESを子会社にしておく必要がないことを意味するからだ。分社しても、GLOBALFOUNDRIES以外に製品の製造を委託できなければ、結局、設計会社と製造会社は運命共同体の関係になってしまう。

 このように、一連の独禁法訴訟の和解により、AMDは純粋なファブレス半導体会社に近づき、GLOBALFOUNDRIESに加えてTSMCでもx86互換CPUを製造することが公式に可能になった。2011年は、この2つの製造委託先を使って、新規開発された製品を投入する年となる。

APU攻勢の第一波を担う「Ontario」「Zacate」

 その最初の一手が、TSMCの40ナノメートルバルクCMOSプロセスルールで量産される「Ontario」と「Zacate」といった2つのAPUだ。マイヤー氏は、これらのAPUが顧客(OEM)向けに11月第2週から出荷を開始したことを明らかにした。APUとは“Accelerated Processing Unit”の略で、CPUとGPUを統合したAMD Fusion製品を指す。

 OntarioとZacateは、共通の「Brazos」プラットフォームを構成する低消費電力のAPUだ。ともに「Bobcat」コアを採用し、OntarioのTDP(熱設計電力)は9ワット(1.2GHz動作時)、Zacateでは18ワット(1.6GHz動作時)といわれている。Bobcatは、AMDがインテルのAtom対抗として開発を進めてきた低価格で低消費電力のラインアップだ。Out of order実行をサポートするなど、In Order実行のAtomとは異なる挙動を示すという。

Bobcatコアを採用する最初の製品となるZacateとOntario(写真=左)。Bobcatのブロックダイアグラム(写真=右)

 OntarioとZacateは、DirectX 11互換のGPU機能を内蔵し、Ontarioが1〜2コア、Zacateが2コアを搭載する。Ontarioが従来のNetbookのうち上位モデルから(俗にいう)CULVノートPCクラスの性能と価格帯をターゲットにするのに対し、Zacateは、さらにその上のベーシックノートPC(インテルでいうところのCore i3、低価格のCore i5搭載ノートPC)と省スペース型デスクトップPC、液晶一体型PCをターゲットにしている。

ノートPCとデスクトップPCのCPUとAPUのロードマップ。次世代のハイエンドデスクトップPC向けの「Komodo」は、あくまでもCPUであり、DirectX 11互換のGPUがダイ上に取り込まれるわけではない

 2009年のFinancial Analyst Dayでプロセスルールが明らかにされていなかったが、結局、最も実績のある(GPUなどで採用例が多い)TSMCの40ナノメートルバルクCMOSプロセスルールとなった。このことが、ほぼスケジュール通りの出荷を実現したという。AMDは2011年1月に開催される2011 Internarional CESにおいて、Brazosプラットフォームを採用したPCが多数展示されるであろうと述べている。

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