ベンチマークテストの結果はいずれの場合でも「100MHzのクロックアップ」というPhenom II X6 1100T Black Editionの特徴を示している。Phenom II X6 1090T Black Editionからの向上は“きっちり”100MHz分にとどまる。それゆえ、200MHz刻みで動作クロックが上がっているPhenom II X6 1055Tから同 1075T、そして、同 1090T Black Editionで示されたスコアの伸びと比較するとPhenom II X6 1100T Black Editionへのステップアップはインパクトが弱い。
PCMark05およびPCMark Vantageは、PCMarksとCPUテストでPhenom II X6 1100T Black Editionが最も高いスコアを示す。ただし、PCMark Vantageのようにバラつきがみられる傾向も確認された。これは、Turbo CORE Technogyの影響があると思われる。インテルのTurbo Boost Technologyと同じく、CPUの冷却を十分に考慮するのがパフォーマンスを引き出すコツと言えそうだ。
Sandra 2011も、CPU関連とメモリ関連、そしてSandra 2011で追加されたMedia Transcodeの各テストでPhenom II X6 1100T Black EditionがPhenom II X6 1090T Black Edirionを上回る。ここでも、Phenom II X6 1090T Black Editionから同 1100T Black Editionへの伸びがほかのPhenom II X6より少ないのがグラフから分かる。
TMPGEnc Xpressのトランスコード処理も、動作クロックが上がった分だけのスコアアップと時間短縮が確認できた。CPU負荷が高く、マルチスレッドに対応したアプリケーションなら、100MHzのクロックアップでも効果はあるということだ。トランスコードのベンチマークテストでは数分の動画ファイルを用いているが、これが1時間の映像ならば10分以上の差になることも考えられる。
グラフィックス関連のベンチマークテストでは、3DMark Vantageで明確な値の違いが確認できたほか、The Last Remnantでも低解像度条件、高解像度条件のいずれで平均して2fps程度の向上を示している。一方で、Street Fighter IVベンチマークテストでは、1920×1200ドットの条件でPhenom II X6 1090T Black Editionに逆転されている。1090T Black Editionと1075T、1075Tと1055Tのスコアでは、こうした逆転は見られない。動作クロックの100MHz差というのが、アプリケーションによって誤差に埋もれてしまう可能性があることを示しているといえるだろう。
消費電力は、Phenom II X6 1090T Black Editionとほぼ変わらないという結果だった。一方で、Phenom II X6 1075Tの消費電力がやや多めで、また、Phenom II X6 1055Tのアイドル時もやや多い。これは何度計測しても同じ傾向だった。もっとも、システム全体を測定した“参考記録”であって、CPU以外の消費電力が影響する可能性もある。CPUそのものの消費電力としては、そこまで大きく変わらないと考えていいだろう。
3.3GHzという、AMDの6コアCPUでは最高の動作クロックとなるPhenom II X6 1100T Black Editionだが、従来モデルからの性能向上という視点のインパクトはそれほど大きくはない。200MHz刻みではなく100MHz刻みになってしまった疑問は誰しもが思うところだろうし、同じリビジョンでBlack Editionというオーバークロック前提のモデルなら「1090Tでも十分」という考えも成り立つ。
しかし、定格で用いることを前提として、より高いパフォーマンスを求めるならば、Phenom II X6 1100T Black Editionの最高クロックは意味があるだろう。年末に限られた予算内で自作PCを作ろうというユーザーにとって、低価格で6コアCPUを搭載した“1100T Black Edition”は十分に検討できる製品だ。実売予想価格は2万4980円とされている。最上位クラスのPhenom II X6の価格がよりお得になったという意味でも評価できるモデルだろう。
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