エンターテインメント向け液晶ディスプレイを選ぶうえで、やはり気になるのは動画の画質だろう。特にゲームや映画など、動画コンテンツを液晶ディスプレイに表示する場合、「動画ブレ」はよく問題として挙げられる。動画ブレが発生すると、ゲームの視認性が落ちてミスの原因にもなりかねないし、何よりノイズとなって映像に没頭しにくくなってしまう。逆に動画のブレが少ないということは、思う存分、ゲームや映画に集中できるということだ。
基本的には、応答速度の数字が小さいほど動画の残像感は少なくなり、動画をスムーズに再生できるようになる。4機種はいずれも、中間階調の応答速度を高速化するオーバードライブ回路を搭載することで、階調による応答速度のバラつきを抑え、動画の表示品質を高めており、何も対策をしていない同種の液晶パネルより動画ブレは少ない。
4機種の応答速度(実際の映像でよく使われる中間階調域)を見比べると、FX2301TVが3msと他を圧倒しており、次にFX2431TVが6msで続き、FS2331とT2351W-Lは7msと横並びになっている。FX2301TVを除く3機種はほぼ同レベルといっていいだろう。細かいところでは、FS2331とT2351W-Lがオーバードライブの強度を調整する機能も持つ(オーバードライブを強くかけすぎると、映像によっては偽色などが発生する場合もあるため)。
もっとも、応答速度をいくら高めたところで、動画ブレは完全には解消されない。液晶ディスプレイは映像の内容が切り替わるまで同じ表示が続く「ホールド型」発光のデバイスなので、表示内容にかかわらず電子ビームが一瞬だけ光ってすぐに消える「インパルス型」発光のCRTディスプレイに比べて、動画ブレとして知覚されやすいからだ。
そこでFX2301TVは、FORISシリーズとして初めて、120Hzの倍速駆動に対応した液晶パネルを採用。ゲームやテレビ放送で使われる毎秒60フレームの映像に対し、EIZO独自の画像処理によって前後フレームの差分から元映像にない中間フレームを生成して間に挟み込み、毎秒120フレームの映像を再生する。
単純に動きのあるフレーム数が2倍になって画面の書き替え回数が2倍に増えれば、動画ブレが抑えられるというわけだ。こうした倍速補間技術の有無は、動画の滑らかさに大きな影響を与えてくるので、FX2301TVのアドバンテージは大きい。詳細は以下の記事を参照してほしい。
さて、実際にこちらの記事で掲載した動画ブレの確認パターン(文字列のスクロール)を4機種で再生して見比べてみた。以下の写真は、モノクロとカラーのパターンを再生している様子(低速で左から右にスクロールする文字列)をデジカメで撮影したものだ。
結果としては、FX2301TVで倍速補間を利用した場合、明らかに他機種とは違う滑らかさでヌルヌルと動画が再生できた。この違いは液晶ディスプレイに詳しくない人が見ても分かるレベルで、倍速補間の恩恵は確かにある。サッカー中継や映画のエンドロールなど、ブレが目立ちやすい映像でもその効果は実感できた。試しに倍速補間をオフにすると、見え方はほかの3機種に近くなるが、もともとの中間階調の応答速度が速いため、動画にはなかなかキレがある。液晶の動画ブレに敏感なユーザーも、これなら満足できるのではないだろうか。
一方、残る3機種はほぼ同じような見え方だった。スペック上はFX2431TVの応答速度が少し速いため、モノクロのパターンではブレが少し抑えられている印象だが、横に並べて見比べても差は小さい。ちなみに、実際の動画コンテンツでは少しくらいのブレに人間の目が慣れてしまうこともあり、これら3機種でも十分観賞できた。
動画ブレに関係したスペックの比較 | |||||
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製品名 | FORIS FX2431TV | FORIS FX2301TV | FORIS FS2331 | FlexScan T2351W-L | |
応答速度(黒→白→黒) | 16ms | 非公開 | 25ms | 25ms | |
応答速度(中間階調域) | 6ms | 3ms | 7ms | 7ms | |
オーバードライブの強度設定 | − | − | ○(強、普通、オフ) | ○(強、普通、オフ) | |
倍速表示(中間フレーム生成) | − | ○ | − | − | |
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日