これまではエンターテインメント向け液晶ディスプレイならではの部分にフォーカスしてきたが、ディスプレイである以上、基本となる表示スペックの確認もしておきたい。
まず気を付けたいのは、画面サイズと解像度だ。FX2301TV、FS2331、T2351W-Lはアスペクト比16:9の23型ワイド画面で1920×1080ドットのフルHD表示、FX2431TVのみアスペクト比16:10の24.1型ワイド画面で1920×1200ドットのWUXGAとなっている。つまり、FX2431TVは画面サイズが一回り大きいだけでなく、縦の解像度が1200ドットでほかより高い(フルHD表示では上下に黒帯が入る)。
たかが120ドットの違いと思うかもしれないが、高解像度表示に対応したPCゲームをはじめ、Webブラウズや文書作成、クリエイティブワークなどPC用途では縦解像度が高いほど使いやすいものだ。そのため、WUXGAのモデルを好んで選ぶユーザーも少なくない。もちろん、画面サイズが大きければ、それだけ映像の迫力アップに貢献する。
表示性能のスペックでは、輝度やコントラストが高いほど、映像コンテンツを明るくクッキリと表示できる。FX2431TVは輝度が360カンデラ/平方メートルと高く、家電の液晶テレビに近い非常に明るいイメージだ。FX2301TVとFS2331も300カンデラ/平方メートルと、液晶ディスプレイにしては明るい。T2351W-Lはタッチパネルを装着している影響もあり、265カンデラ/平方メートルと少し輝度が下がるが、一般家庭の蛍光灯下で使って十分な明るさだった。反対に電子書籍などでは輝度を下げられるほうが見やすいものだが、前述のPaperモードを持つFS2331とT2351W-Lは当然として、FX2431TVとFX2301TVも輝度はかなり下げることが可能だ。
コントラスト比はいずれも高いが、FX2431TV、FX2301TV、FS2331は表示する動画に応じて動的にバックライト制御を行うコントラスト拡張技術により、動画コンテンツの視聴などではコントラスト感を高めることができる。特にFS2331はコントラスト拡張技術で1万:1もの高コントラスト比を実現しており、グッと黒が引き締まった表示で映画などを味わえる。液晶の弱点の1つが黒浮きなので、黒を濃いグレーではなく、本当に黒く表示できるのは映画やゲームなどでは大事だ。T2351W-Lはコントラスト拡張技術こそないが、基本のコントラスト比がFS2331と並んで3000:1と最も高い。
こうした傾向はT2351W-Lがタッチ面に採用する表面光沢仕様の強化ガラスが関係している。光沢仕様であるグレアパネルは表面に光や周囲の風景が映り込みやすいが、内部からの光が拡散しないため、発色やコントラストで有利だ。一方、ほかの3機種が採用するノングレアパネルは、映り込みがほとんどない半面、内部からの光も少し拡散してしまうため、発色やコントラスト感が少し下がる。それだけに、コントラスト拡張技術が重要になってくるわけだ。
最大表示色はいずれも約1677万色のRGB 8ビット表示だ。しかも、10ビットのルックアップテーブル(LUT)を備えており、内部ガンマ補正機能に対応しているのは見逃せない。8ビットの映像入力信号をいったん10ビットに多階調化したうえで、約10億6433万色中から最適な約1677万色を選び出して表示するため、階調再現力が高いのだ(グラデーションがガクガクと崩れることなく、きれいに描ける)。
実際、4機種ともコントラストが高く黒が締まる一方で、黒に近い暗部の階調まで描き分けられるため、例えば、映画の暗いシーンが真っ暗闇で何をしているのか分からないといったことがない。ここは低価格のフルHD液晶ディスプレイと差が出る部分だ。
4機種の表示傾向で違いが大きいのは、色域と視野角だろう。FX2431TVのみAdobe RGBカバー率96%、NTSC比92%の広色域をサポートしており、家電の液晶テレビのようなグラマラスな発色で映像を楽しめる。ほかの3機種は、液晶ディスプレイとして標準的なsRGB/NTSC比72%程度の色域となっているが、カラーモードなどの工夫でテレビライクな画調を演出できているのがポイントだ。
視野角の差は、液晶パネルの駆動方式によるところが大きい。FX2301TVのみ視野角が狭いものの、応答速度は高めやすいTN方式、ほかの3機種は広視野角かつコントラストが高いVA方式を採用している。FX2301TVがTN方式を用いているのは、ゲーム向けに応答速度が優秀で、120Hz駆動にも対応した液晶パネルをチョイスしたからだ。画質にこだわるFORISであえてTN方式を使ったのは、ほかの部分で十分高品位に仕上げられるとナナオが判断したため。実際のところ、正面近くから映像コンテンツを見ているぶんには視野角の狭さは気にならない。
問題はイスにもたれたり寝ころんだりして画面を少し下から見る場合だが、FX2301TVには画面を少し上や下から見ても正面から見たときと近い状態になるように、5段階の視野角補正が行える「リラックスモード」が備わっている。
以下は、4機種に同じ画像データを表示して正面、横、上から撮影した写真だが、さすがにVA方式の3機種は表示が安定している。FX2301TVは上下の視野角がやや狭いが、リラックスモードで補正できているのも分かるだろう。
参考までに4機種に加えて、最近店頭でよく見かける低価格の23型フルHD液晶ディスプレイ(TN方式/他社製)の写真も掲載しているが、視野角は同じTN方式のFX2301TVより少し狭く、正面からよく見ると階調性も崩れがちだった。FX2301TVはゲーム特化型の製品とはいえ、静止画の表示も手堅くまとめているところに、EIZOディスプレイの品質の高さが感じられる。
そのほかの表示スペックの比較 | |||||
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製品名 | FORIS FX2431TV | FORIS FX2301TV | FORIS FS2331 | FlexScan T2351W-L | |
液晶パネル(表面処理) | VA(ノングレア) | TN(ノングレア) | VA(ノングレア) | VA(グレア) | |
画面サイズ(アスペクト比) | 24.1型ワイド(16:10) | 23型ワイド(16:9) | 23型ワイド(16:9) | 23型ワイド(16:9) | |
推奨最大解像度 | 1920×1200ドット(WUXGA) | 1920×1080ドット(フルHD) | 1920×1080ドット(フルHD) | 1920×1080ドット(フルHD) | |
標準表示面積 (横×縦) | 518.4×324.0ミリ | 509.76×286.74ミリ | 509.76×286.74ミリ | 509.76×286.74ミリ | |
画素ピッチ | 0.270×0.270ミリ | 0.266×0.266ミリ | 0.266×0.266ミリ | 0.266×0.266ミリ | |
最大輝度 | 360カンデラ/平方メートル | 300カンデラ/平方メートル | 300カンデラ/平方メートル | 265カンデラ/平方メートル | |
コントラスト比 | 1000:1(コントラスト拡張有効時2000:1) | 1000:1(コントラスト拡張有効時2000:1) | 3000:1(コントラスト拡張有効時1万:1) | 3000:1 | |
視野角 | 上下/左右とも178度 | 上下/左右とも160度(リラックスモード搭載) | 上下/左右とも178度 | 上下/左右とも178度 | |
最大表示色 | 約1677万色(8ビット対応/10ビットLUT) | 約1677万色(8ビット対応/10ビットLUT) | 約1677万色(8ビット対応/10ビットLUT) | 約1677万色(8ビット対応/10ビットLUT) | |
広色域表示 | Adobe RGBカバー率96%、NTSC比92% | − | − | − | |
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日