「クラウド」と「農業」、Kinect採用の「NUI」──“日本”マイクロソフトが注目・推進する技術

» 2011年01月17日 21時00分 公開
[ITmedia]

「クラウドに全力投球」するマイクロソフト 日本とともに、日本向けに、日本発のソフトウェア開発を行う

photo マイクロソフト業務執行役員 CTO(最高技術責任者)兼マイクロソフトディベロップメント社長の加治佐俊一氏

 マイクロソフトは1月17日、「これまでの25年と今後の注目テクノロジ」と題した記者説明会を実施。これまでMS-DOS、OS/2、Windows NT 3.1、Windows 98、Windows Vistaといった主力ソフトウェアの開発に関わったマイクロソフト業務執行役員 CTO(最高技術責任者)兼マイクロソフトディベロップメント社長の加治佐俊一氏が、設立25年のマイクロソフト日本法人(2011年2月1日より日本マイクロソフトに社名変更)とそれに関わるコンピューティングモデルが変遷していった歴史を紹介。同時に同社が今後注目し、開発を推進するテクノロジおよび研究開発テーマを解説した。

 加治佐CTOによると、マイクロソフト日本法人における技術的な転換点は、

  • 1993年 日本でのプラットフォームを統一
  • 1995年 インターネットへの強力シフト
  • 2002年 開発モデルを「信頼できるコンピューティング」に見直し

 の3点だったという。


photophotophoto MS日本法人において、3回の技術的な大きな変換があったという

 1993年以前は、メーカーそれぞれが独自開発し、各社のブランドでOS製品を投入していた(例:NEC PC-98版MS-DOSなど)が、1つのアプリケーションが複数・他社のPCでは動作しないデメリットがあった。IBM PC/AT互換機の普及とともに、1993年5月のWindows 3.1日本語版/1994年1月のWindows NT 3.1日本語版でOEMブランドからマイクロソフトブランドによるOS製品としてリリースすることにより、現在のようにどのメーカーのWindows PCでもWindows対応アプリケーションは動作する──ようになった。また、1995年12月にビル・ゲイツ会長(当時)が「マイクロソフトはインターネットにシフトする」と宣言し、方針を急転。Windows 95には標準添付されなかったInternet Explorerの徹底プッシュとともに、急速にブラウザシェアを伸ばしたのは記憶に新しい。

 信頼できるコンピューティング(Trustworthy Conputing)という概念の導入も、「これまでの開発のやり方をガラリと変えた」(加治佐CTO)。これまでは登場した製品のバグをいかに直すか(人に例えると、人間はケガをする生き物という前提に、いかにケガを治すか)を考慮して開発を行っていたのに対し、「設計当初から、それがないように開発する。開発のライフサイクルすべてにセキュリティを付け加えるようにする」(ケガをしない人間にする、根本から強くなる)という概念で開発するようになった。その直前、2001年にまん延したNimdaやCoderedといったワームの登場が、(一般ユーザーにとっても)これまで以上にセキュリティの重要性が叫ばれるきっかけになった──ことにも通じている。

photophotophoto 昨今、コンピュータに関連するビジネスモデルの変遷も進んでおり、さまざまなスクリーン(PCやスマートフォン、タブレット機器など、サイズや利用シーンが異なる機器全般)に適合し、だれもが自然に扱えるようにするUI=NUIの開発にも注力する

 マイクロソフトは、全社方針として「クラウドビジネスに注力」を掲げている。OSとアプリケーションに対する永続的なライセンスで展開するビジネスモデルから、標準化されたハードウェアやさまざまなデバイスにおいて支払った分のみ支払うスタイルへ、コンピューティングモデルがもうすでに変化してきているためだ。

 これにともない、ユーザーインタフェースもCUI→GUI→インターネット(ブラウザベース)より「クラウド」、そして「NUI」(Natural User Interface)に変遷していく。どんなデバイスでも、いかなる場所・利用環境においても、だれでも自然に扱えるUIの開発とその環境の構築は今後の大きなテーマとする。家庭用ゲーム機Xbox 360用モーションコントローラ「Kinect」はNUIの一例。「Kinectに関しては、まずはネットワークをうまく利用しながらKinectのユーザー同士をちゃんとつなげていくことを主眼に当面は開発していく。KinectをPCへ──について、マイクロソフトとして今言えることはない。ただ、ちまたではいろいろKinectとPCをうまく活用した興味深い研究・実験が行われているようで、これは認知している(笑)」(加治佐CTO)

 クラウドに移行期において、マイクロソフトは現在Windows Asureをプラットフォームに展開している。いろいろな開発者・パートナーととともに、標準化と相互運用性を確保したよりたくさんのクラウドサービスを作っていく。これが当面の具体的な取り組みだ。「現在、たくさんオープンソースのソフトウェアがあるが、実はその8割がWindowsで動く。オープンソースとマイクロソフトというと敵対するイメージがあるが決してそうではなく、お互いにメリットを得ている状況。そういった世界を今後もクラウドでも実現したい」(加治佐CTO)

 そのクラウドにより広がる分野として、同社は教育、行政、医療、スマートグリッド、農業・漁業に着目し、アプローチを図る考えとする。日本が他国に対して遅れているとされる分野、昨今のIT技術できちんと運用されて起こらなかった問題の解消(行政分野における年金問題など)、そして日本が強い分野をさらに伸ばす意味を含め、クラウドを軸に強化できると想定される分野だ。「農業・漁業分野はITとはあまり関係ないと思うかもしれないが、センサー技術とネットワーク技術をうまく組み合わせることで、そもそも生産性が非常に高い日本の農業分野をより強められるようになると思う。そういった考え方とともに、日本マイクロソフトは日本に根ざした企業として、これら分野に注目している」(加治佐CTO)

photophotophoto マイクロソフトの研究部門が推進する研究分野。同社はR&Dに年間90億ドル(今後、年間95億ドルに増加)を費やし、全社員の3分の1を占める研究・開発者が在籍する。クラウドコンピューティングプラットフォーム「Windows Arure」を軸に、クラウドでも幅広い開発者と連携して標準化・相互運用性の実現を目指す

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