AMDは、1月26日にアジア太平洋州の関係者を対象にした、「AMD Asia Pacific Fusion Tech Day」をシンガポールで行った。イベントでは、2011年第1四半期に登場する予定のデュアルGPU構成「Radeon HD 6990」搭載グラフィックスカードのサンプルが公開されたほか、AMDが投入した最新プラットフォーム「Fusion」の特徴や、将来予定されているアーキテクチャの進化などが解説された。
米国AMD ワールドワイドプロダクツマーケティング担当上級副社長のレスリー・ソバン氏は、Fusionの特徴を紹介。Fusionの低消費電力モデルとなるTDP9ワットのCシリーズやTDP18ワットのEシリーズは、現代のコンシューマー向けPCで求められる、HDコンテンツや3D Blu-ray HDコンテンツの利用や8時間以上のバッテリー駆動をわずか“100円硬貨”と同じ面積のAPUとチップセットの2チップで実現し、そのコストは“競合する組み込み向けCPU”と同じながら、x86系CPU、そして、GPUと同じ性能を発揮するとアピール。あわせて、EシリーズとCシリーズを搭載する300〜399ドル、400〜499ドル、200〜299ドルの価格帯にあるノートPCが、今後急速に成長して2015年には売り上げのトップ3になるとした。
また、2011年上半期に登場してメインストリーム/パフォーマンス向けPCでの採用が予定されている開発コード名“Llano”ことAシリーズは、32ナノプロセスルールを導入したクアッドコアとして投入され、500GFLOPSを発揮して、8時間以上のバッテリー駆動時間を実現すると説明している。
米国AMD クライアント担当CTOのジョー・マクリ氏は、Fusionアーキテクチャ、特にグラフィックスとメディアプロセッシングについて解説した。従来の外付けGPUを利用するプラットフォームと、FusionシリーズのLlanoを比べると、GPUとグラフィックスメモリのメモリ帯域は3倍に向上し、同じサイズのGPUなら、より効果的な構成が可能になるという。また、1つのチップにCPUとGPUが完結しているので、レイテンシの削減や電源管理でも有効で、必要なチップサイズも減少することが、有利な点として挙げられた。
マクリ氏は、APUにおけるメモリ帯域幅の拡張は、単にグラフィックス性能を改善するだけでなく、並行処理といったパラレルコンピューティングにおいても効果的と説明する。また、CPUに統合されたグラフィックスコアと外付けGPUによるHybrid Crossfireの対応や、Open GLとDirectComputeによるGPUコンピューティングがAPUと外付けGPUで可能になるとした上で、AMDはソフトウェア開発者で構成するコミュニティにおけるFusionサポートを充実させると述べた。
また、これからFusionがどのように進化するかについてもマクリ氏は言及した。それによると、現在のFusionはCPUとGPUの物理的な融合を実現し、システムプラットフォームの最適化を可能にした段階で、その先には、汎用的なメモリアドレス管理をCPUとGPUで統一し、GPUでもシステムメモリのページアクセスや命令フローにおけるハードウェアスケジュールが利用でき、APU内部におけるCPUとGPUのメモリ整合性を実現するといった、アーキテクチャ的な統合を進め、次の段階では、OSとの統合によって、CPUコンピューティングにおけるコンテキストスイッチやランタイムルーチンのパラレルタスクの統合を考えているという。
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