アンテナ配線でLAN!──Entropic Communicationsが日本始動

» 2011年02月17日 13時11分 公開
[長浜和也,ITmedia]

MoCAとPLCは“補完関係”

 Entropic Communicationsは、個人の住居でテレビのアンテナ配線として利用されている同軸ケーブルをネットワークケーブルとして使う規格「Multimedia over Coax Alliance」(MoCA)に準拠したコントローラやソフトウェアの開発と販売を行う米国のメーカーだ。

 米国では、個人向けの住居のアンテナ配線として同軸ケーブルが各部屋に用意されている。その同軸ケーブルを使って宅内ネットワークを構築するのがMoCAだ。同様に住居内に敷設された配線を利用してネットワークを構築する技術として「PLC」(電力線通信)が実用化されているが、同社米国本社 CEOのパトリック・ヘンリー氏は、「MoCAとPLCは競合ではなく補完関係だ。MoCAはPLCより速いデータ転送レートで、高画質動画コンテンツの転送などが求められるネットワークをカバーし、PLCはアンテナ同軸ケーブルが配線されていない部屋でネットワーク配線として利用できる」と説明する。

現在のマルチメディアホームネットワークの要素。「Over the top」と示されるインターネット配信の動画コンテンツがこれから主流になってくる(写真=左)。それぞれの部屋にあるプレーヤーやDVR、PCをアンテナ配線の同軸ケーブルで接続してコンテンツの共有を可能にするのがMoCAの目的だ(写真=右)

 MoCAでは、現行のMoCA 1.1で最大175Mbps、2011年1月に発表されたMoCA 2.0で400Mbpsという高速の転送レートを実現する。これは、同軸ケーブルと分配器の組み合わせで各部屋ごとに独立したデータの流れが構築できることと、それぞれのデータ転送で干渉が発生しないことで可能になるという。

 ヘンリー氏は、個人の住居におけるこれからのネットワークインフラ技術としてMoCAが期待される理由として、フルHDなどの高解像度動画コンテンツが利用できる高速なネットワークが、すでに各部屋に用意されている同軸ケーブルを利用して低コスト、かつ、短時間で対応できることを挙げている。

テレビアンテナ配線として設置された同軸ケーブルと分配器を利用する「MoCA」では、現行の1.1で175Mbps、最新の2.0で400Mbps、そのターボモードで500Mbpsという高速転送が可能になる(写真=左)。各部屋に配線された同軸ケーブルにMoCAアダプタを介してプレーヤーやDVR、PCを接続する(写真=右)

 同社は、MoCAを応用した技術として、「Direct Broadcast Satellite」(DBS)とその屋外装置も扱っている。これは、1本の同軸ケーブルで複数の衛星放送対応チューナーに信号を配信する仕組みだ。現在、チューナー1台ごとに1本のケーブルが必要な衛星放送受信システムでは、各部屋で受信するのに多くのケーブルが必要になるが、DBSの導入でケーブルの本数が削減でき、導入コストと施工コストを抑えることが可能になるという。米国ではDiret TVが標準の工法として採用している。

 日本支社の設立は、Entropic Commmunicationsが進めているアジア太平洋地域の拡大戦略の一環。日本支社代表取締役の八巻明氏は、日本における展開について、まずは、個人ユーザーよりもマンションなどのデベロッパーに向けて提案し、新築マンションや集合住宅の付加価値として購入者に訴求する戦略を示している。また、DBSについても、衛星放送事業者が1本のケーブルで各部屋に配信できる側面に興味を示していると語った。

同社では、衛星放送も1本のケーブルで配信できる「DBS」も提供している(写真=左)。米国のDirect TVでは、宅配配線の標準としてMoCAを採用している(写真=右)

“米国では”MoCA対応機器は70以上のモデルが登場している(写真=左)。MoCA Allianceに参加する企業には日本のメーカーも(写真=右)

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