こうして作り上げた、元データと同じ色のプリント。これがWebに掲載されたとたん、別の色になってしまったら、元も子もない。世界中の人が見ることができるWebページに変なモノは載せられないだろう。
では、実際にどの程度の差が出てしまうのだろうか。
そもそもEIZO EasyPIXの設定から違う。「キャリブレーションモード(上級者向け)」の中の「写真を見る/調節する」と「Webをみる」の設定を比べてみる。写真を調整する場合のデフォルトの色温度は5500K。これに対して「Webをみる」設定のデフォルトは6500K。つまり、Web用の設定ではかなり青っぽくなる。
しかも、多くのデジカメ愛好家が撮影時に選択していると思われる色域のAdobe RGBは、現状においてWebコンテンツの標準ではない。基本はAdobe RGBより色域が狭いsRGBであり、見た目ではっきりと差が出る。写真や印刷業界ではAdobe RGB、PCやWebコンテンツではsRGBが標準的な色域なのだ。この辺りの詳しい説明は、以下の記事を参照してほしい。
実際にFlexScan SX2762W-HXを「写真を見る/調整する」でキャリブレーションした環境で写真を映し出してみる。Adobe RGBの色域を97%カバーするFlexScan SX2762W-HXの液晶パネルなら、かなり深みのある色を表現できるのだが、この環境はむしろ少数派の恵まれたものだ。
多くのユーザーはsRGBに近い色域のディスプレイを利用しており、ノートPCに内蔵している液晶ディスプレイはsRGBより色域がかなり狭いようなものすら存在する。つまり、不特定多数の、すべてのディスプレイでそれなりの色味を表現させるためには、送り手側の加工、つまりsRGB色域での閲覧を想定した環境作りが必要になってくる。それこそがEIZO EasyPIXの「Webをみる」設定で実現できる色環境だ。
「Webをみる」の状態で、さきほど色が完全に一致していたプリントと画面に映した写真データを比べてみると、明らかに色味が違う。先ほどのホルベインの絵の具でいえば「カドミウムイエロー ペール」が「レモンイエロー」に変わってしまったぐらいの差がある(筆者にとっては致命的な差だ!)。
ここはカラーマッチング後に出力したプリントを参考にしながら(あくまで環境光は昼白色で)、フォトレタッチソフトなどソフトウェア側で写真の色を微調整していくのがよいだろう。プリントが第一と考えている人には戸惑う作業かもしれないが、これも現在の写真環境には必要なことだと割り切るしかない。そして、画像をsRGBプロファイルで保存すれば、元のイメージを保ったWeb用の写真作品は完成だ。
こうして、色を再現するメディアや表現できる色域の違いがあるものの、実物の電車、電車の模型、液晶ディスプレイの色、プリント、そしてWeb公開用の画像データまで、かなり思い通りに色合わせができた。始める前は非常に面倒な作業になるのではないかと思ったが、カラーキャリブレーションツールとしてEIZO EasyPIXを利用できたおかげで、ストレスなく作業が行えたのはよい意味で誤算だ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日