なぜ薄型軽量ノートPC+ドックなのか?――新生「VAIO Z」を丸裸にする完全分解×開発秘話(4/6 ページ)

» 2011年07月05日 13時15分 公開

本体とPower Media Dockをつなぐものの正体

Power Media Dock専用インタフェースのコントローラが実装された基板を取り外す。光ファイバーケーブルで接続された側面の端子と、その基板も外していく

 SSDを外した後は、新型VAIO Zならではのパーツである、Power Media Dock専用インタフェースのコントローラが実装された小さな基板を取り外す。只野氏は「本当にギリギリの設計の中で、この基板は意外とスペースを取り、レイアウトに苦労した」という。

 基板にはLight Peakのコントローラチップと、光信号と電気信号の変換を行うトランシーバーが実装され、トランシーバーから伸びた細い2本の光ファイバーケーブルがUSB 3.0としても使えるPower Media Dock接続端子につながれている。PCI Expressの信号をパケット化して電気信号から光信号へ変換し、送受信とも最大10Gbpsの高速データ伝送を実現する仕組みだ。PC上からはPCI Expressのブリッジとして認識される。

 Power Media Dock接続端子は一見、USB 3.0コネクタだが、よく見ると非常に小さな端子が2つ追加されており、これがドック用のデータ伝送に使われる。コネクタのサイズを小さくできるのは、光ファイバーの利点だ。ちなみに、この端子は通常のUSB 3.0ポートとしても利用でき、各種USB 3.0機器も接続できるが、別の端子を内部に増設しているので、規格上USB 3.0とは呼べないという(そのため、カタログではドッキングステーション/USBコネクタと表記されている)。

 この端子を実装した基板には、Mini PCI Expressカードスロットや、USB 2.0、HDMI出力、有線LAN、ヘッドフォン出力といった接続端子も設けられている。これらの端子は実装面積をギリギリまで削減するため、基板にじか付けしてあり、端子自体も余計な部分を省いて小型化・薄型化したものばかりだ。Power Media Dock接続端子は光ファイバーケーブルを接続する関係で、基板にじか付けせず、フレキシブルケーブルを使って狭いスペースにうまく潜り込ませた。そのほか、ボディにはACアダプタ接続用のDC入力と、アナログRGB出力を備えているが、これらもすべて実装面積を小さくした別注の端子となる。

 具体的には、Power Media Dock接続端子をはじめ、DC入力、HDMI出力、ヘッドフォン出力が今回新たに設計され、余白のないアナログRGB出力や開閉式の有線LAN端子、小型のUSB 2.0は、VAIO Xで初めて採用した特注の端子だ。こうした過去の開発資産が、新型モバイルノートPCの開発に生きているのが見て取れる。

 なお、本体とPower Media Dockの接続は、送受信とも最大10Gbpsのデータ伝送を実現しているが、当然ながらGPUを使うことでかなり帯域を使う。作業内容によっては、PCとドック間の帯域がボトルネックになり、パフォーマンスに影響が出るようなことも考えられる。

Power Media Dock接続端子となるUSBコネクタの内部には、2つの小さな端子があり、2本の光ファイバーで受信最大10Gbps/送信最大10Gbpsのデータ伝送速度を実現する(写真=左)。Light Peakのコントローラチップと光信号/電気信号の変換を行うトランシーバーが実装された基板(写真=中央)。2本の非常に細い光ファイバーケーブルはPower Media Dock接続端子につながっており、同じ基板にMini PCI Expressカードスロット(写真ではワイヤレスWANモジュール装着済み)、USB 2.0、HDMI出力、有線LAN、ヘッドフォン出力が搭載されている(写真=右)。USBコネクタ内に光ファイバーを配線したPower Media Dock接続端子は、基板にじか付けではなく、フレキシブルケーブルに端子を直接実装して、狭いスペースにして押し込んでいる。USB 2.0、HDMI出力、有線LAN、ヘッドフォン出力の端子は基板にじか付けだ

薄さを追求するための片面実装マザーボードは8層構造

 次はいよいよマザーボードを取り外す。新型VAIO Zはボディの薄さを最優先するため、VAIO Xと同じように片面実装の8層マザーボードを新開発し、ボディの薄型化に努めた。片面実装基板の開発では、電源のインピーダンスコントロールや基板の反りなどが問題になるが、VAIO Xで得られたノウハウを役立てて開発したという。

 マザーボードは多数のネジで固定されているが、只野氏は「基板へのストレスやチップにかかる力を評価し、ネジで固定するポイントを決めた。片面実装でこのサイズなので、最適なポイントでネジを多点で止める必要があった」と語る。

 マザーボードは、ヒートシンク付きのデュアルファン、2枚のメモリモジュール、ハーフサイズのMini PCI Expressカード(無線LAN/WiMAXモジュール搭載)が装着された状態で分離できる。非常に薄い片面実装のマザーボードは、一般的なモバイルノートPCの基板とは大きく異なり、開発陣の技術が結集されたパーツといえるだろう。

デュアルファン、2枚のメモリモジュール、ハーフサイズのMini PCI Expressカード(無線LAN/WiMAXモジュール搭載)を装着した状態のマザーボード。片面実装なので、裏面はスッキリしており、ヒートシンクを固定する三角形のパーツが個性的だ

 マザーボードからデュアルファンを取り外すと、第2世代Core iシリーズとIntel HM67 Expressチップセットが露出する。CPUは標準仕様モデルがCore i5-2410M(2.3GHz/最大2.9GHz、3次キャッシュ3Mバイト)を搭載、VAIOオーナーメードモデルではCore i7-2620M(2.7GHz/最大3.4GHz、3次キャッシュ4Mバイト)やCore i5-2540M(2.6GHz/最大3.3GHz、3Mバイト)、Core i5-2520M(2.5GHz/最大3.2GHz、3Mバイト)、Core i3-2310M(2.1GHz、3Mバイト)も選択可能だ。

 これらはいずれもTDP(熱設計電力)が35ワットの通常電圧版CPUで、「通常電圧版のCPUで高い基本スペックを確保する」というVAIO Z誕生からのオキテは守られている。

各パーツを取り外した状態のマザーボード。CPUやチップセットが露出している。メモリモジュールの装着場所は空いているが、それ以外には所狭しとチップやコンデンサが並ぶ

横から見てみると、マザーボードの薄さが目立つ

メモリも専用の薄型モジュールを採用

独自の薄型メモリモジュールを採用。写真は2Gバイト×2のモジュールだ

 新型VAIO Zで目を引くのは、これまで汎用のモジュールを使っていたメモリまで専用品としたことだ。その理由について井口氏は「開発初期から、通常のSO-DIMMスロットは厚みがありすぎて、新型VAIO Zの薄型ボディには入らないことが分かっていた。かといって、マザーボードにオンボードで搭載するには、基板上のスペースがとても足りず、実装のハードルも高い。そこで、新たに両面実装ながら薄型で、マザーボードに装着しても高さを抑えられる専用メモリモジュールを開発した」と語る。

 メモリ容量は標準仕様モデルが4Gバイト(2Gバイト×2)に固定され、VAIOオーナーメードモデルでは6Gバイト(4Gバイト+2Gバイト)や8Gバイト(4Gバイト×2)の構成も選択可能だ。いずれもDDR3 1333MHzに対応し、デュアルチャンネル転送も行える。

 金森氏は「汎用のSO-DIMMではないので、購入後に増設したり、交換したりといったことはできないが、標準仕様モデルで4Gバイト、VAIOオーナーメードモデルでは8Gバイトの構成で購入できるため、最初から実用上十分な容量が得られるはず。現状ではVAIO Z専用のメモリモジュールだが、今後VAIO内で使える機種があれば展開したい」という。

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